虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自閉症の子 と 感覚にある論理性 と 感覚に内在する知性 1

2017-02-06 21:25:48 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

数日前に、

『野生の思考』を読みました 1 

という記事を書きました。

『野生の思考』を書いたレヴィ=ストロースは、とても鋭敏な感覚を持った人で、感覚というものには論理性があり、そこには知性が内在していることを認識していたそうです。

レヴィ=ストロースは、感覚に与えられる感性的な素材を用いて論理を働かせ用とする、感覚的なものと知的なものが結合した論理のことを、「具体の論理」と呼んでいます。

「具体の論理」とは、抽象概念で物事を理解するのではなく、この世界に満ち溢れている自然界と人間界の具体物を用いて、感覚的な能力をつかって世界を認識していく考え方です。

 

次回に続きます。

(今日 7日中に次の記事をアップしますね)


レンズーリの拡充学習について 12

2017-02-06 13:02:04 | 日々思うこと 雑感

レンズーリ拡充学習について、

Follow your bliss というブログをしているtamakiさんが、わかりやすくまとめてくださっています。

世界にたった1人のこどもの個性や特徴に向き合う子育て

「あたし研究」→レンズーリの全才能ポートフォリオ

レンズーリの「個性と才能をみつける総合学習モデル」を読みました

個性才能の芽の見つけ方

家庭でする拡充学習のかたち

 

 Follow  your  bliss のブログでは、家庭で才能教育をしてみたいという方との交流を呼びかけています。

きょうみのある方は、ぜひtamakiさんと連絡を取ってみてくださいね。

 

寺院でおまいり? の真似をしているところ。(民博にて)


レンズーリの拡充学習について 11

2017-02-05 19:13:01 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

レンズーリの拡充学習は、一般的な習い事や講座のように前もって決まったカリキュラムや内容があるわけではなく、参加するメンバーや担当者の興味によって進行するとあります。

興味は、学習を高めるための効果的な方法のひとつで、興味と学習の間の強い正の関係は、著名な哲学者や心理学者によって認められています。

拡充クラスター(レンズーリが提案している自分の興味を探求する異年齢の子どものグループ)は、子どもが選んだテーマについて、子どもたちが何を知っているのか、何を学びたがっているのかを知ることから出発しています。

拡充クラスターは、子どもの集団全体の興味を刺激して、潜在的な才能を伸ばす手助けをし、高次のスキルの発達やそのスキルを創造的で生産的な状況へ本物のように適用されることが重んじられています。

虹色教室での活動も、7割方、このレンズーリの拡充学習のスタイルを取っています。

残りの3割は、そうした興味を探求していく活動の土台となる算数の力が身に着くよう支援しています。

算数学習については、拡充学習とは少し異なるのですが、

「複雑な文章題も、絵図にしたり、整理したりして解ききる力をつけること」

「逆思考が得意になること」

「長さ、重さ、面積や体積などの単位の変換ができるようになること」

「めもりが読めるようになること」

「四則計算がスムーズにでき、工夫して計算することができること」

「コンパスや分度器などの道具の扱いうまくでき、展開図や見取り図が書けること、補助線がイメージできること」

などを重視して教えています。

 

先の文で、拡充クラスターは、子どもが選んだテーマについて、子どもたちが何を知っているのか、何を学びたがっているのかを知ることからはじまることを書きました。

それについて、昨日の国立民族学博物館への遠足の様子から、どのような場面から、子どもが知っていることや学びたがっていることを汲み取っていくのか書いていくことにします。

 

 

たいていの大人は、「子どもはこういうものが好きにちがいない」というイメージを持っています。

世の中にある子ども向けの商品も、そうしたイメージのもと作られています。

でも、実際に子どもたちを連れて博物館めぐりをすると、子どもの興味関心は大人のイメージするそれとはずいぶんちがい独自のそこ子らしさに彩られていることに気づきます。

上の写真は、年長のAちゃんが展示品の舟を覗いているところです。

最初、Aちゃんはその舟の一方に飛び出ている下の写真のような道具に関心を寄せていました。

 

これは何なのか、何をする道具なのか、何か食べ物を入れておくのか、魚をとる時の道具なのか、この上に乗って何かするのかと考え続けていました。

いろいろな方角からこれを眺めた挙句、舟の中を覗きに行ったり、わたしを質問攻めにしたりしてなかなかそこを離れようとしませんでした。

 

博物館の中には、モアイ像や大きな石のお金やまるで小人の家のような宝物をしまう倉庫やクマを捕獲する罠など子どもたちの目を引くものがたくさんあります。

もちろん、そうしたものは多くの子たちの目に留まるのですが、ひとりひとりの子に注目していると、「どうしてこんなものが?」と首をかしげたくなるようなものが、

子どもの興味を掻き立てている場合もよくあるのです。

そうした「どうしてこんなものが?」と思うような対象への興味は、その子その子で、独特の個性的なテーマのようなものがあって、それは教室内での活動や普段の言動や思考のプロセスともつながっています。

Aちゃんの場合、美しかったり派手だったりして目を引くものより、木でできた素朴な民具や楽器を、いろいろな方向から熱心に眺める姿が、入館直後から3時間後の博物館を出る直後までずっと続いていました。

他の子らが素通りしてしまうような同じような打楽器や弦楽器が並んでいるところも、

「どうして、ここはへこんでいるのか」とか「こんなに長い太鼓はどうやって叩くのか、これを立てるんだろうか、

上に乗って叩くんだろうか」といつまでも考えこんでいました。

 

Aちゃんは工作が大好きな子です。

「こういうものが作りたい」という完成イメージをはっきり持っているものの、作品の仕上がり自体よりも、作業工程に含まれている意味に一番興味を寄せているように見えます。

 

以前、折り紙で紙のかばんを作った時、内側がどちらも裏面になるようにしてから袋の形になるように周りに糊をつける ということを面白がり、

切り込みを入れた紙を何枚か重ねたものを2種類作って、それらを内側が裏になるように合わせて魅力的なカバンを作っていました。

カバンという用途を果たす作品にするには、折り紙を裏にするか表にするかが、重要な意味を持つことや切り込みを入れた紙の後ろに折り紙を敷くと下地の色が見えることは、Aちゃんの心を強く揺さぶるようでした。

 

みんなで獅子や竜の舞を演じて遊びました。


『野生の思考』を読みました 1

2017-02-03 10:32:46 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

明日は、子どもたちと『国立民族学博物館』に行ってきます。トーテムポールの写真を撮ってきます。

 

年末にたまたま手に取った100分で名著(Eテレの番組です)の冊子がきっかけで、

年明けから、レウ¨ィ=ストロースの『野生の思考』やその関連本にどっぷりはまっていました。

 神経線維(ニューロン)の中でおこっている情報処理のしくみと、脳をつうじて人間の

おこなっている情報処理のしくみとの間に、きわめてよく似た様式が使われているという話題は、

普段、子供たちを観察していて感じていることと合致していて、深い感動がありました。

 

『野生の思考』は、未開社会について書かれた本ですが、

人類は人類になったときの脳の構造を今もなお使って思考している

という人の心の普遍性についても語られています。

 また、レウ¨ィ=ストロースは、「どの子供も生まれながら粗削りな知的構造の形で、

人類が太古から『世界』との関係および『他人』

との関係を規定するに用いる手段の総体を有する」とし、

子供の思考は一種の「普遍的基層を形成している」とも述べています。

 普遍的基層とは、「世界を分類する知性」

と、「分類したものを組み合わせ、変換しながら体系を作っていく能力」のことです。


 『野生の思考』の関連本に目を通すうち、中沢新一先生の『ポケモン神話学』という

「野生の思考」が電子ゲームの世界に息づいているとする面白いゲーム批評を読みました。

ポケモンというキャラクターが、「自然を人間化する」というテーマに取り組み、

自然を含む間の領域に満ちている力をモンスターとして分類化し、戦わせて

自然力の間に交換現象をなりたたせている、と説明されていました。

 

野生の思考について知るうちに、いつも読ませていただいているブログ『マイコー雑記』のマイコーさんが

文化人類学を専攻しておられたのを思い出し、

『野生の思考』を読んでわくわくしていることや、

「教室でしている取り組みというのは、ここにあるブリコラージュだな~と思ったり、

子どもたちも分類と変換による「構造」の思考(縄文人の思考)によって知識の体系を作っていくな~と感じたりしながら読んでいます」

とコメントしたところ、

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『野生の思考』、日本からアラスカ、そして米国横断しここ東海岸へと持ってきています。

最近「虹色教室通信」でも取りあげられていたシーモア・パパート(Seymour Papert)氏は、

「挑み(try)、試し(test)、遊びまわる(play around)ことを通して学んだり問題解決したりする方法」を

「ブリコラージュ」と言ってるんですよ。あれやこれやと目の前にあるものをいじくり回し遊ぶことが、

学習・問題解決に繋がると。

まさしく「虹色教室」ではありませんか!

新しいものーと外へ目を向けずとも、既にあるものをこねくりまわし組み合わせていくことで

とてつもなく新しいものができることがある。驚くような可能性の芽は実は

身近な周りにもう既に転がっているのかもしれない、そう考えるとドキドキしてきます。

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という返事をいただきました。

もっとも、わたしはいつもどこか抜けているので、(おまけに目が悪いので)

ブリコラージュのことをプリコラージュと読み間違えていたのですが。

教室のレッスン記事をそんな風に捉えていただいていてうれしかったです。

 

100分名著 のテキストにこんなことが書かれています。

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子供たちが好きなミニカーや軍艦模型、あるいは人形などを通じて、物事を小さくすることで

知的理解の中に取り込むことの快感の本質は、このように元来知的なものです。

対象を理解するために縮減できたときの驚きは知の喜びですが、

模型を楽しんでいた人が実物の戦艦大和の甲板に立ったときに

感じるであろう、巨大すぎるものへの驚きは、

むしろ宗教に近いのかもしれません。

この世界認識としての縮減は、ヤコブソンの構造言語学の中にすでに登場していた、

連続的な自然を縮減して、文化的な構造単位をつくるところにあらわれていました。

            (100分de名著 野生の思考 中沢新一 NHK出版より引用)

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縮減しながらサイズを縮めて、世界を知的に把握しようとする姿は、

教室でジオラマづくりを楽しむ子らや工作に夢中になる子らに

色濃く見られます。


カテゴリー化、階層化、分類化の能力が伸びる年中、年長さんの時期

 

 ゴミ処理場が作りたい♪

 

 猛烈に工作しまくる1年生3人組

 

年中のAちゃんは2歳の頃からもりもりと物を作りまくる工作が大好きな女の子です。

 

少し前のレッスンでは、ストローと画用紙で↑の写真のような

馬小屋を作っていてびっくりしました。

 

 

先日、みんなでポップアップ絵本の作り方を学んだ時、

Aちゃんは、ポップアップで飛び出す馬小屋を作ろうとしていました。

さすがに折りたたまれた馬が立ち上がる仕組みを作るのは不可能なんじゃないかと思ったのですが、

なぜか大成功。

 

 

 

 きれいにたたんだ状態から、本を開くと、2匹の馬が立ち上がっていました。

 

Aちゃんは、目にした好きなものを片っ端から

作ってみようとする子です。

最近になって、工作するだけでなく、作りたいと思ったものについて、

どんな難しい知識でも取り込んでいこうとする知識に対する貪欲さが目立ってきました。

また、一生懸命、考えたことを、言葉にしようとするようになりました。

魔法学校のゲームをしていた時、ユニコーンの涙を集める方法を耳にすると、

「どうやってユニコーンのところまで行ったらいいんだろう?」と他の子らと話すうちに、

Aちゃんが真剣な顔で、「馬に乗って行ったらいいんじゃない?

ユニコーンと馬は仲間だから、馬はユニコーンのところまで行けると思う」と

言っていました。

 


3,4歳の子たちの楽しい算数の時間

2017-02-02 19:24:15 | 算数

3、4歳の子たちの算数の時間の様子です。

テーマは、「数を数えること」と「増えたり減ったりすること」と「1対1対応」です。

 

それぞれの子がペットのハムスターを何匹か飼うことになった設定で、問題を考えています。

「5匹飼っていたのに、1匹逃げ出しちゃった」といったストーリーで、何匹ハムスター小屋(子どもたちの手で覆いを作って小屋にしています)に残っているのかあてる問題も考えました。

どの子も自分の番になると、7匹とか、11匹なんて呆れるような数のハムスターをペットにする話題に目を輝かせています。

ちゃんと必要な数のハムスターを集められるでしょうか?

ハムスターの数を数え終えたら、それぞれのハムスターのためにひとつずつ食べ物があげられるようにカードを数えます。

 

こうした算数遊びの際に、「ハムスターのえさの数が足りないかもしれない」とか、「100匹飼いたい!」なんて無茶を言う子がいたりするハプニングが起こります。

息もできないような真剣な表情で見守る子どもたち。

そうした時に、ちょっとした知恵を絞って解決すると、子どもたちの顔にパーッと笑顔が広がります。


「子どもがやりたがらない遊びに誘うべきかどうか?」という質問 

2017-02-02 08:20:24 | 日々思うこと 雑感

「子どもがやりたがらない時も、工作に誘うべきでしょうか?」

「ブロック遊びは好きじゃないようなので、子どもの好きな遊びを優先させた方がいいでしょうか?」

という質問をいただくことがあります。

 

言葉上の質問だけを目にすると、「遊びというのは自由なものだし、無理矢理、大人の意向に従わせなくてもいいのでは……。」と思いもします。

でも、実際、そうした質問をくださった親御さんとその子どもに会っていっしょに過ごしてみると、そうした質問の背後にはさまざまな親子関係の問題や子育て上の迷いが隠れていて、

安易な答えはかえってそれらをこじらせてしまうかもしれない、と感じることが多いです。

よくあるのは、親子関係が希薄で、親から子へ子から親へと気持ちが通いあうような時間が短かったり、遊び中、親子の会話がほとんどなかったりするケースです。

また、子どもに年齢相応の遊びを組み立てる力が育っていない場合もあります。

遊んでいるようで、ただおもちゃを出して触っているだけだったり、目新しいおもちゃを広げるやいなや、次のおもちゃを探しに行くことの繰り返しだったりするのです。

そうした状態を打開しようと、工作やブロック遊びなどに誘ってみるものの、子どもが乗ってこない……。

そこで、「子どものやりたがらない遊びに誘うべきかどうか?」と迷っている方が結構いらっしゃるのです。

 

お家での様子をうかがうと、「日中は保育園で過ごしており、帰宅後、ついテレビでおとなしくさせてしまう」とか、

「毎日、習いごとで忙しいので、もし工作やブロック遊びをさせるとすると早朝にさせることになるが、それでもやらせるべきでしょうか?」といった返事をいただきます。

幼い子が、何でも真似したがり、誘われなくても無理矢理、遊びに割りこもうとする相手は、その子の幼い兄や姉です。

少し年上のきょうだいは、弟や妹を遊びに誘うべきかどうか迷うこともなく、「何して遊びたい?」とたずねることもありません。

ただ楽しそうに遊び、自分ができないことを上手にやってのけるだけです。

時には、弟や妹が近づくたびに泣き叫んだり邪険に追い払ったりすることもあります。

でもそんな存在が、他の誰よりも幼い子たちの好奇心を刺激し、遊びの世界に引きこむのです。

 

「子どもがやりたがらない時も、工作に誘うべきでしょうか?」

「ブロック遊びは好きじゃないようなので、子どもの好きな遊びを優先させた方がいいでしょうか?」

という質問をいただいたとき、

子どもに親の行動を模倣しようという気持ちが薄かったり、親子の間に自然な遊びや気楽な会話のやり取りが生じにくかったりする場合、

「誘う」という大人の態度のあり方に問題を感じることがよくあります。

ただ普通に「誘う」こと自体、何の問題もないのですが、相手が1歳や2歳の子にも関わらず、「○○する?」「○○してみたい?」と、子どもの気持ちをたずねてから遊びに入ろうろする親御さんの子は、

「ままごと」のような好きな言葉だけに反応して、同じ遊びだけ繰り返したかと思うと、大人の声を邪慳に振り払い無視することが遊びのメインになっていることがあります。

また、子どもが大人の遊びに乗ってきた時に、工作なら

「喜んで楽しそうにやってほしい」

「食いついてほしい」

「最後までやりとげてほしい」

という大人の思いがあるために、「途中で飽きた」「途中から親にやらせていた」「あまり楽しそうにしてくれない」といった判断を大人の側が早々と下してしまうこともよく起こるようです。

遊びって、もう少し自然に生じ、育ち、発展していく面があるんじゃないかな、と考えています。

それは工作やブロック遊びのような創作活動にしてもそうです。

それを遊びと呼んでいいのか、何をしているのかわからないような行為や活動が重なりあううちに、子どもにとって意味や価値のあることが熟していく過程が遊びなのではないでしょうか。

子どもがパーキングに車を入れる遊びをしている時、「駐車券をお取りください」と言いながら、小さな紙切れが出てくるところを作ると遊びが盛り上がります。

そんな時、いらない紙のはじっこをハサミで切って、「券もどき」を作ってあげると、子どもにとってハサミはあこがれのアイテムになります。

無理矢理「やってごらん」と誘うまでもなく、ちょっと面倒でも、何度か大人が楽しいことにハサミを使う姿を見せれば、子どもは自分もやってみたいと思うはずです。

ただ、そうした自然な遊びが成り立ちにくい場合、親が性急な結果を出そうと無意識に余計なサインをたくさん出している場合や愛着の問題、

子どもの対人関係の作りにくさなどが背後に隠れていることがよくあります。

そんな風に別の問題が隠れている場合、「やりたがらない遊びに誘うべきかどうか?」という問いへの答えをもらって、それを実行していれば安心だと思うことは、

子どもの問題を感じ取る親の勘を鈍らせることになるかもしれません。

 

写真は年長のAくんのカブトムシ型乗り物。

コストコの巨大な袋に何を入れてきたのかと思いきや、お家で紙箱を貼り合わせて作ったこの乗り物が入っていました。

「虹色教室で改造してすごい乗り物にしたい」と言って、教室のある日を心待ちにしていたそうです。

 

この乗り物、持ってきた時は、ざっと紙箱を貼り合わせただけだったのですが、

「全部、黒くして、カブトムシの乗り物ってわかるようにしたい」

「合体もして、武器もついてて、この丸いやつ(メロンアイスのふた)が回転しながら飛んでいくようにしたい。それから、前やったみたいに、せんたくばさみを開いたら、ゴムがビュって飛んでいくようにしたい」

「はねが開いたり、閉じたりするようにしたらどう?ねぇ、先生?」

「つののところにアイスのカップつけて、つのが出たり入ったりして、片付ける時に小さくなるようにするよ。だって、これ、大きすぎるから」

「合体する方のやつにも、はねをつけたらどうかな?そうしたら、空を飛んでいて、下りてきて、合体して、潜水艦みたいに海に沈んでいくことができるよね。」

と舌も手も忙しいAくんに材料を用意したり、しかけのアドバイスをしたりするうちに、Aくん大満足の出来に仕上がった模様です。

誇らしさと達成感で、表情が輝いていました。

 

 

工作の後で、Aくんはかなり難しい算数パズルを解いていたのですが、抽象的な概念もしっかり理解して、的確に解いていました。

解いている最中、「ぼくは、こういうの大好きだ。もっともっと解きたい!」と自信に満ちた声で言っていました。

創作活動がAくんを意欲でみなぎらせ、自分への深い信頼感につながっているのを感じます。

 

ミヒャエル・エンデのこんな言葉があります。

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創造的な力は最高の人間の力である。それは決して基礎づけられたり、習得されたりしないが、私はどんな人間もそれを身につけており、

神との真の類似性 ―あるいは神との同一性でさえ― がその中に含まれていると確信している。 

『Das Phantasien-Lexikon』(遺稿より)

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わたしはどの子にも自分の創造力を発揮する機会を持たせてあげたいと思っています。

お母さんに「○○作って!」「○○はこういう風にして!」と作らせてばかりいる子も創造力を発揮しています。

カブトムシ型の乗り物を作ったAくんが、「こういう風にしたい」「こんなのを作りたい」とイメージを膨らませて、あれやこれやおしゃべりを続けているのにしても創造のたまものなのです。

Aくんは大雑把にテープで貼り合わせていくという技で手を使って創造することもしています。

でも、手を使って作ることだけが創造力を発揮することではないし、手も頭もどちらも使わないと創造力を使ったことにならないわけでもありません。

頭の中で創造するのも、手で創造するのもどちらも大事だと思って、創造の楽しさを親子で味わうようにすると、「誘ってもやりたがらない」という状態が、「子どもが遊びの中で

創造力を発揮できるように自然な手助けをする」という状態に変わっていくかもしれません。

 

写真は自閉っ子のAくんのブロック遊びの様子です。

クレーンのおもちゃを取りつけるために、ブロックで枠を作ったり、クレーンにひもを取りつけたりしました。

わたしといっしょに、ブロックの棒を引き抜くとビー玉が落ちてくるしかけも作りました。

年長になった今、お友だちと協力しあってブロック作品を作りあげていくことを心から楽しんでいますが、1年半ほど前は、誘われたことは何であっても(工作もですが、それ以外何でも)

頑なに拒絶するか、ひとつの作業にだけこだわるかのどちらかでした。

でも、今のAくんは自信を持って、主体的に動きます。

 

可動式のゴムでっぽう。


レンズーリの拡充学習について 10

2017-02-01 12:40:10 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

レンズーリは、子どもの潜在能力を伸ばすために「拡充の三つ組モデル」と呼ばれる組織化のモデルを用いています。

 

<拡充の三つ組モデル>

タイプ1 一般的探索の活動

全生徒が対象。一般的探索の活動からなり、普通カリキュラムではあまり取り上げられないような、新しくておもしろいトピックや考え方、学問分野に子どもが触れられるように計画されている。

その活動は、さまざまな種類やレベルの継続学習への「招待」だと子どもが自覚している。

多様な種類の継続学習のために、種々の機会や物的資料、奨励がある。

 

タイプ2 集団訓練の活動

広範囲の「処理技能」を発達させるように計画されている。

①認知的訓練(分析、組織化、批判的思考、創造性)

②感情的訓練(内省的、対人的、人生の危機への対処)

③学習の仕方の学習(聴く、認識する、ノートをとる、要約する、面談・調査する、データーを分析する、まとめる)

④研究と参照の技法

文章や口頭、視覚的手段による発表技法。

 

タイプ3 個人、小集団による現実の問題の探求

子ども個人や小集団の興味にもとづく必要がある。

子どもは自分が探求しようとする現実の問題を「抱え」なければならない。

発表相手に糸した結果をもたらすような、本物の成果を発展させる。

種々の学習スキルを自分で使えるように向上させる。

課題への傾倒、自信、達成感、人とのやりとりなどの感情面のスキルを発達させる。

 

三つ組モデルの特徴

<一つ目> 自然なやり方で学習する

「外的な刺激」「内的な好奇心」「要求」、あるいはこれら三つの出発点となるものの組み合わせによって、あるトピックや問題、研究分野への興味を伸ばす。

 

<二つ目> 部分の合計より多い

三つのタイプの拡充間の「相互作用」が、それぞれのタイプの拡充やそれらの合計全体と同じように重要であること。

 

<三つ目> 個人的知識

子どもが自分自身の能力、興味および学習スタイルについて「個人的知識」を得るように計画されている。

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 虹色教室では、小さな教室でできる範囲なのですが、このレンズーリの拡充の三つ組モデルを参考に主な活動(算数レッスンの時間以外の活動)を行っています。

そうすることで、最初に子どもとする活動が、簡単な影絵遊びのようなものでも、その活動に触発されて興味を深めていく子らによって、大きなスクリーンで映画を映す活動になり、

手作りのプロジェクトマッピングとなり、月の満ち欠けを影絵を使って発表する機会となり、深海の世界を影絵で表現する取り組みにもなりました。

また虫眼鏡を覗く遊びも、生き物の目の仕組みへに関心やレンズや望遠鏡作りや地下の生き物への興味などにつながりました。

形を楽しむ工作も、歴史的建造物への興味や図形の探求、コンパスを使ったさまざまな工作や手作りコンパス、折りたたむしかけ、形を利用したからくりへの興味へと発展しました。

大阪城へみんなで出かた後には、女の子も男の子も戦国武将や忍者などに夢中になる子が増えました。

ほんの一部ですが、日々の活動が、どのように個々の継続的な探求へとつながっているのか、過去記事を、紹介しますね。

 

<形の発見>

 形は面白い!

 

半分の半分の半分の半分

 

基礎的な発見 <三角形の不思議>

 

基礎的な発見 <90度を作りだす>

 

基礎的な発見 14 <正方形の対角線は長い>

 

 

<回転への興味>

基礎的な発見 <回転>

 

基礎的な発見 12 <丸い形>

 

基礎的な発見 9 <回すのは楽しい 回転はすごい>

 

 <重さの利用>

基礎的な発見 1  <重い>

 

基礎的な発見 <自動的にエレベーターを上げる方法> 

 

基礎的な発見 11 <一方が下がるともう一方が上がる>

 

基礎的な発見 3 <位置をずらす>

<「処理技能」を発達させる>

 

基礎的な発見 16 <すでに身につけている技術を別の場面で利用する>

 

基礎的な発見 15 <自分が発見したことを報告する>

 

<アイデアを練り、実現する>

 

基礎的な発見 13 <貨車に荷物を積み込む方法>

 

<磁石の不思議>

基礎的な発見 10 <磁石で浮かべる>

 

基礎的な発見 4 <磁石の働き>

 

<ビー玉コースター(ピタゴラスイッチ)遊びでの発見>

基礎的な発見 7 <長くしてみる 高くしてみる>

 

基礎的な発見 8 <傾き と 出口の高さ>

 

基礎的な発見 6 <引っかける> と 「基礎的な発見」のカテゴリーについて

 

2階建てのビー玉コースター

 

<光と影>

基礎的な発見 5 <光を通す 通さない>

 

 

年中グループ 影絵のポップアップ絵本作り と 算数学習

 

<折りたたむ>

基礎的な発見 2 <折りたたむ>

 

新選組の池田屋事件のポップアップ絵本

 

<電流の流れ 電気の基本>

ポケモンゴーのゲーム作りが流行中 (音がでます♪)

 

「もう1回!」と「もっと!」の気持ちがはじける瞬間

 

<大きな数>

100円のひゃくってどれくらい? と 無限大数