会話が途切れたところで、バンノトリはゆっくりと体を起こすと、ドアの方に向かいました。そろそろ帰る時間のようです。外はますます暗くなり、ゴロゴロという不気味な音が大きくなってきたような気がします。いつのまにかオオカミの姿も見えなくなっていました。
「コブタネエサン、待ってるよ!」
外に出て、バンノトリの背に乗るコブタネエサンにコブタクンはそう言いました。改めてコブタクンの目を見ると、やっぱりコブタクンの目は今まで見たことがないくらいきらきらと輝いていました。コブタママの笑顔もやさしくて温かでした。
「わたしたちは元気で楽しくやってると、みなさんに伝えてね」
バンノトリはふわりと空に舞い上がりました。下の方でコブタクンとコブタママが大きく手を振っていました。コブタクンとコブタママの姿が見えなくなるころ、コブタネエサンの頬にぽつりと何かが当たりました。
「水。…これが、アメ…」
「おやおや降ってきてしまいましたねぇ」
バンノトリは少しスピードを上げたようでした。雲の上の町に帰るまで、コブタネエサンは一言も話しませんでした。雲のトンネルを抜けて雲の上に戻ると、出発した時と同じように魔女が立っていました。コブタネエサンはバンノトリから降りると、小さく
「ありがとう」
と言いました。魔女はゆっくりと魔女の木を見上げました。
「コブタクンのところに行きたくなったら、いつでもおいで」
「え?」
コブタネエサンはおどろいて魔女の方を見ました。
「誰かがこの実を食べたいと強く望めば、この木は実をつけてくれる。だれもがこの木を必要としなくなれば、この木は枯れる」
コブタネエサンは葉っぱ一枚ついていない魔女の木を見上げ、魔女を見つめ、そして足元を見つめました。コブタネエサンはコブタクンとコブタママの楽しそうな姿を思い出しました。同時に、恐ろしいオオカミの姿も思い出していました。
「魔女さん、ありがとう」
コブタネエサンは何とかそれだけ言うと、魔女の庭を後にしました。
安全で安心で、何も怖いもののない町に帰っていくコブタネエサンを見送ると、バンノトリは魔女の木の上で大きなあくびをしました。
「ご苦労だったねぇ」
魔女はやさしくそう言いました。
「コブタネエサンはどうするんでしょうかねぇ」
コブタネエサンが見えなくなった魔女の庭の入口をながめながら、眠そうな声でバンノトリが言いました。
「さぁねぇ…」
魔女はそういうと魔女の木にそっと手を添えました。風もないのに魔女の木の枝が少し揺れました。
おわり
「コブタネエサン、待ってるよ!」
外に出て、バンノトリの背に乗るコブタネエサンにコブタクンはそう言いました。改めてコブタクンの目を見ると、やっぱりコブタクンの目は今まで見たことがないくらいきらきらと輝いていました。コブタママの笑顔もやさしくて温かでした。
「わたしたちは元気で楽しくやってると、みなさんに伝えてね」
バンノトリはふわりと空に舞い上がりました。下の方でコブタクンとコブタママが大きく手を振っていました。コブタクンとコブタママの姿が見えなくなるころ、コブタネエサンの頬にぽつりと何かが当たりました。
「水。…これが、アメ…」
「おやおや降ってきてしまいましたねぇ」
バンノトリは少しスピードを上げたようでした。雲の上の町に帰るまで、コブタネエサンは一言も話しませんでした。雲のトンネルを抜けて雲の上に戻ると、出発した時と同じように魔女が立っていました。コブタネエサンはバンノトリから降りると、小さく
「ありがとう」
と言いました。魔女はゆっくりと魔女の木を見上げました。
「コブタクンのところに行きたくなったら、いつでもおいで」
「え?」
コブタネエサンはおどろいて魔女の方を見ました。
「誰かがこの実を食べたいと強く望めば、この木は実をつけてくれる。だれもがこの木を必要としなくなれば、この木は枯れる」
コブタネエサンは葉っぱ一枚ついていない魔女の木を見上げ、魔女を見つめ、そして足元を見つめました。コブタネエサンはコブタクンとコブタママの楽しそうな姿を思い出しました。同時に、恐ろしいオオカミの姿も思い出していました。
「魔女さん、ありがとう」
コブタネエサンは何とかそれだけ言うと、魔女の庭を後にしました。
安全で安心で、何も怖いもののない町に帰っていくコブタネエサンを見送ると、バンノトリは魔女の木の上で大きなあくびをしました。
「ご苦労だったねぇ」
魔女はやさしくそう言いました。
「コブタネエサンはどうするんでしょうかねぇ」
コブタネエサンが見えなくなった魔女の庭の入口をながめながら、眠そうな声でバンノトリが言いました。
「さぁねぇ…」
魔女はそういうと魔女の木にそっと手を添えました。風もないのに魔女の木の枝が少し揺れました。
おわり