飛ぶように日々が過ぎ もう半月前の事だが
夕方 友人と待ち合わせ コンサートに行った
場所は 上野公園の中にある「 奏楽堂 」
東京芸大の前身 東京音楽学校のホールとして 明治23年に建てられた歴史的な建造物
現在は大学の傍に移築され 耐震工事が行われ 演奏会などが行われている
東京文化会館のレストランで 軽く食事を済ませ 奏楽堂に向かって歩き出した
「 都美術館をぐるっとまわって行かない? 私 あの道が好きなの 」
と 友人が言う
「 いいわよ! 」
まだ 時間はたっぷりある
宵闇が降りて 人通りがなくても 美術館を浮かび上がらせるライトが安心感を与えてくれる 静かな道は まるでヨーロッパの街のよう・・・
突然 闇を切り裂く様に 動物の鳴き声
友人は驚いて「 あれは何? ハクビシンかしら? 」
思わず苦笑した 私
美術館と反対側の門扉と ぐるりと続くコンクリートの壁と うっそうと茂った樹木に目を遣りながら
「 違うわよ ほら こっち側は なんだと思う? 」
「 ああ そうか・・ 動物園? だとすると 今のは動物の声? 」
「 ええ そうよ 私が生まれ育ったのは このすぐ傍だったから 動物園のライオンやトラの吠え声は 当たり前のように聴いていたわね 」
「 そして この道は 犬の散歩で 毎朝 家族と一緒に歩いた道なのよ! 」
今のように整備されていたわけではないけれど この辺りの建物の配置は昔とほとんど変わっていない
芸大の向こう側に家があって 子どもの頃に通った幼稚園も まだある筈だ
友人と話していて 父 母 兄 そして 犬達が 当時のままに蘇ってきた
まだ小さな私も一緒の 朝の道を散歩するその一団と すれ違った気がした
今はもう 一番上の兄と私以外は 亡くなってしまったものたち・・
美術館の建物が途切れると 左側は 芸大 右側は 目的地の奏楽堂だ
ライトアップされた奏楽堂 (画像)
記憶にある建物は こんなに立派ではなかったけれど 私にとって懐かしい建物