その日の午後、私は、
ランニング(ほとんどウォーキング)をしていた。
腹の調子を、整える為である。
フルコースを食べるのに、
トレーニングをする奴なんて、他にいるだろうか。
しかし、早食い、少食の私は、お腹を空かせておかないと、
マジ、食べられないかもしれんのだ。
どっちが田舎だ
バス停に降りると、辺りは、真っ暗だった。
電話で、場所を確認してから、カーブを歩いて行くと、
向かい側にある、ホテルの急な坂道から、
スタッフが、降りて来るのが見えた。
迎えに来たというより、探しに来たという感じ。(笑)
こっちが、田舎者なんじゃない!!
ホテルのある場所が、田舎なんだ!!
お互いを認識したものの、ガードレールに隙間が無く、
渡る事ができない為、又、元の道を戻るというマヌケさ。
着いてから、レストランに入るまで、時間くってしまった。
イルミネーションをくぐり、
クラシカルなロビーを過ぎると、
思っていたより、
レストランのフロア、狭っ!!
テーブル、近っ!!
客、いなっシー!!
今日は、貸し切りか?
パンフに、「夜は潮騒の音に耳を傾けながら…。」とあるが、
確かに、BGMも無っシー!
静か過ぎて、波の音も聞こえねーよ。(笑)
窓際にしてくれたのはいいが、真っ暗で何も見えん。
せっかくの、オーシャンビューも、イミ無っシー!
フルコースに緊張するんじゃなくて、
黙って突っ立ってる、スタッフの視線に緊張する。
この状態は、しばらく続いた。
オードブルは、フォアグラをチョイス。
料理に不釣合いな、丸顔の給仕に、
「~のポワレでございます。」と説明されても、
頭に入ってこない。(笑)
「フォアグラって、美味しいんだね。ブリの煮付けみたい。」と、連れが言う。
ブリの脂の、プニプニした部分の事だろう。
鳥を魚で、表現すんなよ。
表面を、少しこがしてあり、ソースも美味しい。
スープは、温度が良かった。
熱いのだが、トロミがあるので、キツくない。
静けさにも慣れてきたので、丸顔に話しかけた。
「M・Jが来たって言うけど、どこに座ったんですか?」
「今、お座りになっている、こちらのお席です。」
ポーッ!!
驚いた。
気づかなかった。
予約時に、「とにかく、いい席に座りたいんです!」と頼んだので、
この席になったわけか。
サインを型押ししたプレートが、
背もたれに、貼り付けてあった。
M・Jは、ランチで海を見たのか、
それとも、私と同じように、
真っ暗な静けさを、楽しんだのか。
違うイミで、「いい席」になり、テンション上がった。
私は、料金アップして、メインを牛に替えた。
ところが、この〇〇牛、肉の味が、よく分からん。
ソースに負けている。
しかも、フォアグラにかかっていたソースと、同じ気がする。
むしろ、添えてある温野菜の方が良い。
何だか、ガッカリ。
最近、舌が肥えてきたせいか、
素材の味が、分かってしまうのだ。
このぐらい、美味しくて当たり前と思い、
ちょっとやそっとでは、感動しない。
これは、全ての事に言えていて、
ユーミンのライブの時も、そうだった。
あるいは、年のせいで、脳に異常があり、
何を食べても、美味しくないと、感じてしまうのだろうか。
おひとり様の中年女性が、料理が来るたびに、
バシャッとフラッシュをたいている。
その後、2組のカップルが、時間差でやって来た。
メインの後に、丸顔が、
「消化に良いので、チーズはいかがですか?」と、
何種類か、持ってきた。
聞けば、1種600円だと言う。
腹一杯だというのに、
連れが、頼むと言うので、2種選んだ。
プーッ!!
出て来たのは、鼻息で飛びそうな、
ペラペラの、小さなスライスが2枚と、
子供が、つまみ食いで、引きちぎったような、ひとかけら。
もうしわけ程度に、ドライフルーツが散らばっている。
あきれて、笑いそうになった。
別料金かと聞いた、私がケチなんじゃない!!
これっぽっちしか出さない、店がケチなんだ!!
最近は、何事も、
適正価格でない事が、腹立たしい。
振り返れば客がいる
後ろのテーブルにいたカップルが、
私のイスを見ながら、M・Jの話をし始めた。
私は、思わず振り返って、
「さっき聞いたら、この席だって言われて、それまで、気づかなかったんですよ。」と、
話しかけてしまった。
そのぐらい、テーブル、近っ!!(笑)
メッセージと花とオルゴール
デザートと一緒に、
ミニ花束とオルゴールの音を、サービスしてくれた。
頼んでおいたメッセージを見ると、
思っていたより、文字がデカかった。
チョコレートのプレートに、書くのかと思ったら、
プレート=皿の事だったのか。
腹空かしのトレーニングの成果はともかく、
どうにか、全て食べ終えた。
ゲプ。
うーん。
フレンチの方が、和食より、
パンチがあると思っていたんだが、
そうでもなかったか。
それに、このレストランは、
昼間のランチで来た方が、
景色も料金も、お得だろう。
おお、千鳥足
駅のホームで、酔っ払ったオッサンを、2人も見た。
千鳥足なんて、コントでしか見た事がない。
「本当に、千鳥足の人っているんだねぇ。」
この日、一番の感心事かも。
人身事故の約60%が、千鳥足だと言う。
どっちかと言うと、料理以外の事で、
盛り上がったディナーであった。(笑)
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