飼い主を助けた犬・・・

　今朝は少し曇りがち。山の端に雲を押し上げるかのように太陽が頭を出している。


　少し前の話である。英国在住のキンバリーさんは当時、片方の耳にヘッドホンをつけて音楽を聴きながら愛犬オーラを散歩させていた。だが突然、黒のトラックが歩道に乗り上げて猛スピードで迫って来た。その瞬間、オーラはとっさに繋がれているリードを引っ張り、キンバリーさんを歩道の奥の安全な方向へと誘導したという。
　トラックは時速112キロで走り去り、サイドミラーがキンバリーさんのお尻をかすめていったそうだ。一瞬の出来事だったが、キンバリーさんはオーラのおかげでトラックに撥ねられずに済んだのである。実はオーラはキンバリーさん飼われてからまだ数か月しか経っていないという。こんな犬がいつも一緒だったら、心強いだろうネ。

　わがマンションは「ペット可」なので、犬を飼っている人が多い。ネコは見たことがないが飼っている人はいるのかなあ？
　家の中で飼うからどこの犬も小さくて可愛い。お出かけグッズや、ヘアーのお手入れなど、ずいぶんとお金が要るらしい。それに毎日の散歩が大変、私にはとうていペットは飼えないわ。
　うちの隣の住人は他県在住、ここはセカンドハウスだからめったに来ない。来るときはいつも、立てば私の背丈くらいはありそうな大型犬を連れてくる。品種は分からないが、ずいぶん高そうに見えた。
　11年前、引っ越してまだ２日目か３日目のことである。うちの寝室と隣の寝室は隣り合わせで、ベランダは「緊急時に破る」薄いパーティションで仕切られている。夜中の２時ごろだったと記憶しているが、ゴソゴソ、ガリガリと変な音が聞こえて目が覚めた。耳をすますとベランダの方から聞こえる。
　私はチョー怖がりで、お化け、幽霊という言葉を聞くだけでもダメ。テレビ画面にお化け屋敷が映ったら目をつむるか、すぐにチャンネルを変えてしまう。その夜も住み慣れていない部屋と静まり返った時間帯のせいで、いい年をしてバカみたいに「お化け？」…。確かめにベランダに出るのも怖くて、夜が明けるのが待ち遠しかった。
　翌朝、ベランダのパーティション越しに隣を覗いてみると、すぐそばに大きな犬小屋が置いてある。その中で犬が爪を立ててガリガリ、ゴソゴソやっていたのだ。原因が分かってホッとしたが、ベランダに犬小屋を置くなどとんでもない、と腹を立てたものだ。あの犬はどうしたかしら、見なくなって久しい。

　他の階に住む30代の独身男性は犬を２匹飼っている。早朝に散歩させているのを時々見かけるが、できない時は近くに住んでいる祖母に頼んでいるらしい。
　祖母は腰が曲がっていてシルバーカーがなければ歩けないらしい。ハンドルにリードをくくり付けて連れて出ているが、２匹の犬は勝手にあっちこっちき動き回るので大変みたい。
　先日も雨が降っているのに、いつものように２匹の犬を連れ、傘を差して出て行った。シルバーカーを押して傘を差すと両手はふさがってしまう。２匹の犬は雨でもおかまいなし、ちっともじっとしていない。見ていて気の毒やらおかしいやら…。でも、よくやるわ！　私にはとても真似できないわ。