私のことを知っている人が、このタイトルを見たら、なんと図々しいと感じると思います。そう、まことに図々しいのですが、審査員をしてきました。全日本学生音楽コンクール中学生ヴァイオリンの決勝大会の市民賞の審査員です。正規の審査による賞とは別に、このコンクールには会場のある横浜市の市民による、市民賞というのがあるのです。審査員は横浜市民ならだれでもいいそうです。それは非常にありがたく貴重な話だと思い、申し込みました。
曲目リストを渡されましたが、ヴァイオリン協奏曲や知らない曲がずらりと並んでいて曲目だけで圧倒。中学生のヴァイオリンの上手な子って、どんなにすごいのだろう、と思いながら聴き始めましたが、いきなりノックアウトされました。堂々たる態度、美しい音色、抜群のリズム感、見事な手さばき、豊かな表情、壮大な世界の構築、すべてにおいてみなさん、さすが決勝に残られた方たちという感じでした。ほとんどプロ、という感じ。一生懸命演奏しているから伝わってくる熱さにもあふれていてぞくぞくしっぱなしでした。
しかし審査をしないといけないんですよね。市民賞なので、印象に残った演奏を選ぶのが一番だとは分かっていたものの。たとえば音色という基準でいくとします。いわゆる「美しい音色」とか「響く音」というようなひとくくりではすまないものを感じました。例えばチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲で求められる音色とラヴェルのツィガーヌ(恥ずかしながらこの曲は本コンクールで初めて知りました)で求められる音色はまったく違います。音程という基準も曖昧だと思いました。素早いボウイングでものすごく速く動くところは、どうしても多少の音程の狂いが見られたもののそれでまったく悪くないような気がしたし、そのようなところで音程をかちっとはめることにこだわる必要があるかどうか、という気もしました(専門家の方のお考えはどうなのかわかりませんが)。また、ゆっくりしたところも、どういう音程が求められているのだろうか、とふと感じました。平均律のピアノと純正律のヴァイオリンは音程の取り方が違うのですが、やっぱりバランスがとれたほうがいいのだろうか、など。合わせからソロへ、または反対への移行も難しいだろう、と感じました。ヴァイオリンがすばらしいのは言うまでもないのですが、伴奏(相手、と言ったほうがいいのだろうか)のピアノの方たちの責任も重大。ヴァイオリンの方たちが引き立つように演奏されていてすばらしかったです。中には無伴奏で弾かれた方もいらっしゃっいましたが。。。おそらく「超絶技巧」と呼ばれる技が無数に出てきたと思います。しかし技だけでなく芸術的にもすばらしかったと思います。プロの演奏会だといっても遜色がないように感じました。
そして正規の審査結果は以下の通りでした。
1位 K田さん(チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35第1楽章)
2位 I塚さん (イザイ 無伴奏ヴァイオリンソナタニ短調 作品27 第3番バラード)
3位 G司さん (シベリウス ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47第1楽章)
すばらしいです、本当に。1位のK田さんはなんと私の地元の広島の方でした!
そして私が参加させていただいた一般市民の投票による横浜市民賞は
K野さん (ヴィエニァフスキ 「ファウスト」の主題による華麗なる幻想曲 作品20(一部省略))
ヴァイオリンのことも曲のことも予備知識がないまま投票させていただきました。ちなみに私は誰に投票したかって?それは秘密です。
貴重な演奏が聴けて本当によかったです。