いろはにぴあの(Ver.3)

ピアノを趣味で弾いています。なかなか進歩しませんが少しでもうまくなりたいと思っています。ときどき小さな絵を描きます。

世界報道写真展

2012年06月17日 | 日記

 この記事、書こうかどうか迷っていたのだが、書くことにする。乏しい知識であるのは分かっているが、書かないでいたら、本当に書かないで風化させてしまいそうな気がしたので、やっぱり書くことにした。幸い出展作品リストもあったので、助けを借りながら書くことにする。

 昨日は「世界報道写真展」を観に行った。会場は恵比寿ガーデンプレイス内の東京都写真美術館地下一階だ。展示会自体知らなかったのだが主人が関心を持っており、それならと思って出かけた。東日本大震災の爪痕を撮影した7名の写真家による作品も含め、124の国と地域、5247人の応募の中から厳選された報道写真、約170点が紹介されていた。世界の報道写真となれば最近の荒れた世界情勢を反映した生々しい写真が多そうな予感がしたので、それなりの覚悟をもってでかけた。海外の雑誌、少し読んでいたことがあったが、日本のメディアでは写さないと思われるような生々しい写真もそれなりに載っていたので、おそらくそれぐらいインパクトの強いものが多いだろうとも。

 しかも今日本は岐路に立っていると思う。このような写真を観ることによって、世界のことを自分のこととしてとらえられるようになるかもしれないという思いもあった。

 入口に入るなり、ほぼ裸でやせこけた息子を抱きかかえる母親の写真が目に入ってきた。大賞を受賞したイエメンのサヌアでサレフ大統領に対する抗議の最中に負傷した息子を抱きかかえる女性の写真だった。このような写真を観ると言葉を失う。

 エジプトのムバラク大統領が講演をしたあとに、カイロのタハリール広場で叫び声、聖歌、悲鳴をあげる群集を撮影したデモ参加者たちの表情をうつした写真からは人々の激しい怒りが伝わってきた。

 リビアの独裁者だったカダフィ大佐関係の写真もあった。独裁的なカダフィ体制に対する体をはった市民の抗議運動、カダフィ軍の攻防、そしてカダフィ大佐の遺体もあった。独裁体制をなくすためにここまでの戦いを経なければならなかったことに衝撃を受けた。

 抗議運動が暴動へと発展した写真が数多くみられ、心が痛くなった。撮影した人たちも命がけだったにちがいない。実際受賞者のなかにはその後巻き込まれ命を落とした方もいたとのこと。

 日本の東日本大震災の写真もあった。津波によって壊滅状態になった名取市の様子、墓の上に載ってようやくバランスを取り戻した電車、がれきの前で涙する女性、娘の卒業証書を持って笑顔を見せる母親の写真、福島第一原発の写真、避難区域内で飢え死にした牛の写真、福島第一原発から500m圏内を歩く動物保護運動家の写真があって、あのおそるべき日のことがたちまちよみがえってきた。政治家の方たちはこれらの写真を見るべきなのではないかと思った。

 中国の毛沢東崇拝を表した写真、北朝鮮の金正日崇拝を表した写真も生々しかった。

 児童結婚の写真もあった。女性は16歳以下で、なんと一桁の女性もいた。非常に美しい衣装で着飾られていたがそれだからこそかえっておそろしい気がした。国、地域、社会階級を問わず行われているのだという。

 他にもある意味これが世界の現実なのだろうか、と思えるような写真がたくさんあり、あまりの衝撃に言葉を失いそうだった。

 しかし、おそらく写っている本人は厳しい現実を過ごしていると思われながらも、人間のたくましさや希望を感じさせるような写真もたくさんあった。ウクライナの抗議運動の毅然とした女性リーダーの写真、コンゴ川の急流で伝統的な漁法で捕った魚を口にくわえる漁をしていた少女の写真、ラジオが主なメディアであるハイチのラジオ局で人生相談番組に出演している女性、HIV陽性で娘を育てる女性、ロシアの黒海東岸リゾート、ソチのレストランで歌う多くのアーティストたち、アイルランドのラグビーで泥まみれの試合をしている選手たち、男子200メートルバタフライ決勝で競い合う選手たちの写真からは、懸命に生きる人たちのたくましさを感じさせられた。他にも人々の日常を感じさせられるような写真も見られた。

 予想通り、いや、予想以上にインパクトの強い写真ばかりだった。風景から、人々の表情から、背景の人たちの切実な状況が大きく伝わってくる内容だった。人間の弱さ、強さ、醜さ、尊さを丁寧に伝えていたと思った。写真による視覚面の伝える力の大きさを感じた。日本のメディアではおそらく出さないだろうと思える写真も多かったからこそ、観に行ってよかった。心臓にはあまりよろしくないかもしれないけれども、世界情勢を知り自分のこととしてとらえるためにも、足を運ぶ価値があったと思った。

 ちなみに会期は6月9日~8月5日 (月 )とのことだ。まだ始まったばかりである。