先日は練習会がありました。7月はじめの相模湖以来2か月ぶり。本番後しばらく気が抜けていたのですが、そろそろ気を引き締めたいと思った矢先でした。
時間はたっぷりありました。メンバーの方たち、いつもながら見事な選曲と曲の仕上がり。前回の7月から1年近く経過したのでは、と私には思えるような状態。本当にピアノが好きなのと同時に、長い蓄積と努力があるのだろうと感じました。難曲のショパンソナタの2楽章分を続けて見事に弾かれたメンバーさんもいらっしゃいました。過去そのような曲を弾かれたことがあるにせよ立派です。新境地を開いた人もいました。リスト演奏の代名詞のようだったメンバーさんがヘンデルの組曲やスカルラッティのソナタやベートーヴェンのソナタのカノンのような楽章を弾かれていたのにも勇気づけられました。旋律部だけが書かれている楽譜をもとにその場で伴奏アレンジを加えて演奏されていた方もいました。とにかくみなさん、よく練習されています。そしてレパートリーも多いし上手です。いったいいつ練習されているのでしょう、毎回感じる疑問点です。
そいう状態の中私は気が抜けたままではまずいと思い、ハイドンのジプシートリオの第2楽章を音を聴きながら弾きました。音の数は少なく演奏自体は全く難しくないのですが、自然なフレーズに聴かせるためにはごまかしがまったくきかないという、隠れたむずかしさを持った曲です。フォームから直さなければならない状態だということが分かり、気を付けてひいたつもりですが、おそらく不自然なところがあったと思います。それからラヴェルのクープランの墓フォルラーヌ。先日書いた通り、ネットラジオ番組ottava armosoで流れてきて一聴惚れした結果弾くことにした曲。ドビュッシーほどではないと思うのですが、今までの私なら選びそうになかったタイプの曲で、幅を広げたいという思いがありました。独特の古風でのどかな、それでありながらちょっぴり小悪魔的な雰囲気を持った音型と和音に強く惹かれたので投げ出さずに練習できそうな気がしました。この曲を弾くうえで私が特に意識したいと思ったことは、独特の和音の響きを味わいながらセピア色の舞踏の雰囲気をだすということ。反復も多いので表情に変化をつけ飽きないような演奏にする、ということでした。それから近くの友人と連弾を考えていた仮面舞踏会の片方のパートも弾きました。
どちらもなんとか弾いた、という感覚でした。音楽にはなっていないと思います。しかしひそかに録音した演奏を後で聴いてみたら、思ったほどはひどくはなかったようです。ラヴェルのフォルラーヌは似合っているという感想もいただきうれしかったです。しかし、音に張りがない感じ。もっと引き出そうと思ったら引き出せそうな奥行きのある音が出せるようになりたい、と思った次第です。
最後のローテーションではかつて習ったベートーヴェンのソナタ第5番第1楽章とシューマンの夕べにを弾きました。大好きな二曲でしたが、いつの間にか弾けなくなっていて残念だったので、練習会前一週間ぐらいから気晴らしがてらに弾き始めたのですが、特にベートーヴェンは弾けなくなっていてショックでした。こんなこともできなくなっていたのと愕然。いや、ベートーヴェンだけではなく、メカ的に動きのある曲自体が弾けなくなっているような気がしました。今年になってゆったりした曲ばかり練習していたからかもしれません。ピアノの技術には、音色やフレーズ感をとらえた演奏をするというテクニックの面と、手を広げたり高速の動きが続いたりするというメカの面があるという話をききました。そして年齢とともにメカは衰えるけれどもテクニックは衰えない、という話もきいています。なので私は自分の実力に合わせメカ面では多くを望まずに音色などの基礎を身に着けテクニック面を磨き、音楽性のある演奏をすることを第一にめざそうとしてきたのですが、本当にメカ的な動きのある曲が弾けなくなってしまうとそれはそれでさみしい。音楽性を求めるのは非常に大切だと思うのですが、それでなくても衰えの激しいメカ面を衰えるままにしておくのはつまらないなあ、と思い、少しずつ練習に採り入れるようにしてきました。しかし、この「練習」、練習というようなちゃんとしたものではなく、ガーツと弾いてスカッとするという、ストレス発散的な要素もありましたね。数日間続けて弾いていたら、弾けなくなっていたところは弾けるようになってきたので、練習会で披露しよう、と思い、披露したのですが。。。。なんとか通して弾きましたが、あやしいところはあやしいまま、こっそり録った録音を聴いたら、なんだこりゃというひどいものでした(汗)やっぱり今主に練習している曲というのと、地道な(そう、地道だと思います!)レッスンの力というのは、私にとっては大きな要素だと思いました。でも、やっぱりメカ的に厳しい曲もまだがんばってみたい。バランスをうまくとることが大切ですね。
その後楽しい話で盛り上がりました。きらきら星をいろいろな作曲家の曲にアレンジしたらどのようになるか試しに作ってみたという楽譜にはびっくり。バッハ、古典派、ロマン派、近現代、だけでも笑えたのですが、十二音技法や日本の俳句になぞらえたアレンジもあって楽しませていただだきました。世の中には面白いことを考える人がいるものですね。
世の中には面白いこと、ということで思ったのですが、みなさんがよく知っている作曲家でも、意外な側面を感じさせる曲を作ったりしています。次回はその話で。