先日あるところで無料の講演を聴きに行きました。その講演の会場に置いてあった本に、「人生を変える読書」武田修志著php新書 というのがあり、気になり手に取ったところ真っ先に目に入った本が、リルケ著の「若き詩人への手紙・若き女性への手紙」リルケ著・高安国世訳でした。著者の武田氏はこの本を何度も読み心の糧にしてきた、ということでした。私はすでに若いとは言えないのですが、この本から力づけられることが多そうな予感がしたので読むことにしました。
武田氏の感想と私の感想、まさにほとんど一緒でした。本文から抜粋します。
「あなたは御自分の詩がいいかどうかをお尋ねになる。ほかの詩と比べてごらんになる、そしてどこかの編集部があなたの御詩作を返してきたからといって、自信 をぐらつかせる。それは(私に忠言をお許し下さったわけですから)私がお願いしましょう、そんなことは一切おやめなさい。あなたは外へ眼を向けていらっしゃる、だが何よりも今、あなたのなさってはいけないことがそれなのです。誰もあなたに助言したり手助けしたりすることはできません、誰も。ただ一つの手段があるかぎりです。自らの内へおはいりなさい。あなたが書かずにいられない根拠を深くさぐって下さい。もしもあなたが書くことを止められたら、死ななければならないかどうか、自分自身に告白して下さい。」
この文章に出会っただけで、リルケ氏、そして武田氏に出会えてよかったと思いました。ここでは詩ですが、たとえば演奏や文章や他のものにもあてはまるでしょう。プロとしてやっていく場合はとくにそうかもしれませんが、そうではなくても、本質的にこの助言はなにかを作ろうとする者にとってはあてはまるような気がします。
他にも心に残った言葉。
「もしあなたの日常があなたに貧しく思われるならば、その日常を非難してはなりません、あなた御自身をこそ非難しなさい。」
「必然から生まれるときに、芸術作品はよいのです。こういう起源のあり方の中にこそ、芸術作品に対する判断はあるのであって、それ以外の判断は存在しないのです。だから私があなたにお勧めできることはこれだけです。自らの内におはいりなさい。そしてあなたの生命が湧き出てくるところの深い底をおさぐりなさい。」
「あまり自分自身を見つめすぎてはいけません。」
厳しい言葉といえば厳しいのですが、深い愛情が感じられます。とても力強く勇気づけられる言葉。何度も読み返しそうです。講演もよかったのですが、講演を聴きに行ったおかげでこの本に出逢えて本当によかったです。
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