ノイバラ山荘

花・猫・短歌・美術な日日

霙の裏庭

2012-02-16 20:51:06 | 日常
お寒いですね。
霙がふっています。

お夕食の鍋のために、
裏庭に埋めてある葱を掘り出しに行きました。

裏庭に足を踏み入れると、
ぱっと鳥が飛び立ちました。

お尻の朱と羽の黒、白が
印象的です。

左手に猫を抱き、
右手に泥葱をぶら下げて
しばし何という鳥か考えました。

アカハラにしては小さいし、
羽の色が違う気がします。

図鑑で調べるとジョウビタキらしい。

ジョウビタキは冬になると
よく見ているはずなのに、
忘れるものです。

よく考えると背面を見たのは
初めてかもしれません。

裏庭で何をしていたのでしょう。
土をついばんで、
虫でもいたのかしら。

調べたら、小さな木の実や
ミミズも食べるらしいです。
庭にリンゴなどの果実を
用意している方もいます。

なんでしょう、
しばらくがさがさと萎縮していた心が
やわらかく潤ってきました。




国会議事堂の歌

2012-02-16 20:13:21 | 短歌
別の人の歌を探していたら、
「帝国新議事堂」の歌を見つけました。

国会議事堂は秋に見学して、
そのあまりの立派さに仰天したものですが、
建設された当時は
もっともっと感激されたに違いありません。

岡山巌『思想と感情』(昭和11)という歌集です。
新議事堂の竣工式が11月7日で、
歌集の自序が11月21日に書かれています。
逆編年体なので、新議事堂の一連がトップに来ています。

岡山巌(明治27―昭和44年)は「水甕」所属。
広島生まれのお医者さんのようです。
この歌集を編まれた時は42歳、
鉄道病院理学治療科医長の職につかれていました。

「帝国新議事堂」12首。
少しおいて「特別議会」20首。
続いて二・二六事件に取材した
「動乱」の19首もあります。

日本史にはなはだ疎いノイバラではありますが、
昭和11年、新議事堂が出来上がった年の
太平洋戦争へとなだれていく
ただならぬ気配を感じます。

二・二六事件が身近で起きたにもかかわらず
言論統制で情報が得られず、
5月の議会を大変な数の群衆に混じって
傍聴しに行ったにもかかわらず、
やはり肝心なことは聴けなかったようです。

自分と対象の距離がきちんと取れていて
信頼できる感じがしました。


   「帝国新議事堂」

・玲瓏たる堂塔生(あ)れて喧(かしま)しき帝都の空はうち静もりぬ
・十八年の歳月(としつき)足りて生れ出でし大(おほ)き御城(みしろ)は白玉のごと
・あかねさす紫の石うす雲のいろにほふ石よりて城なす
・国こぞり堀りいだしたる大理石(なめらいし)四方(よも)にぞ輝(て)りぬみ城なしつつ
・国ぶりの象徴(しるし)とあふぎみらめども呆(ほ)けたるごとく堂をめぐりぬ
・ほのぐらき議場は覗(のぞ)きのみ見れど既にものものし並み立つ名札(めいさつ)

   「特別議会」※

・にほやかにけさ諸新聞かかぐるは決意ただならぬ陸相の面※※
・既にしてただならぬ気配みなぎらふ内幸町に自動車とめらる
・かしこみてひたかみころす憤り生きの身仔細にしらべられつつ
・粒汗(つぶらあせ)垂りに垂りつつ人垣に伸されし手はもすべなくてをり
・あせづきて服もしとどにわがをれど待ちまけしこと遂にきかせたまはず
・真相を語れと満場わきたてばいや面(おも)てらし黙(もだ)す陸相
・柵の上に立ちあふれたる人垣の股間くぐるも今日ぞ初めて


※「特別議会」は二・二六事件の後始末のため開かれた会議。
※※ここでの陸相とは寺内壽一(ひさいち)のことと思われます。

   「動乱」

・何事か既になされたる帝都の空朝くらうして雪しきり降る
・ぼつぼつと患者は来たる午後よりぞ聴きあつむればただならぬ事件(こと)
・兵乱はまさにまぢかに起りをれど伝へ来たらむ物音もなし
・号外はあかつき出でしが巷にぞ取り押へられ後(あと)ひそけしと
・民をして知らしむ勿れといふ如くにも静けきなかに雪ふりてをり