【土佐~修行の道場】
2006年5月13日(土)
朝からシトシトという感じで雨が降っていて出発をグズグズと引き延ばしていたが、ようやく立ち上がり8時ちょうどに出走。
走っているだけならさして鬱陶しいことはないのだが、雨具を脱いだり着たり、お参り用具一式の出し入れが憂鬱そのものだ。
朝イチの別格四番 鯖大師でもかなり降られたがようやく発心の道場~阿波の国(徳島)をクリアして修行の道場である土佐の国(高知県)入りする。
いよいよ室戸に向かうのだが、雨はこの時がピークだ。
途中のローソンで「準本格讃岐饂飩」で朝食をとる間だけが小降りだったが、その前後は本格的に雨が降り続く(なんてこったい…)。
こんな雨の日は歩き遍路達すらパスしていく室戸岬の御厨人窟で独りご真言を唱え、遠く弘法大師に思いを馳せてみたものの、明星が飛び込むどころか悪天候で空と海の区別もつかない(この辺りはマニアックなので詳しく知りたい方は空海伝説などをご参照ください)。
納経所に詰めているご婦人に色々と話を伺ったりジュースを飲んだり、何のかんので小一時間滞在した室戸岬はずっと本降りの雨だったのだ。
降り止まぬ雨の中を24番 最御崎寺へ向かい、どうにかこうにかお参りを済ませ、室戸岬の展望台にも登らずに再びバイクにまたがる。
海沿いの25番 津照寺に着く頃にはようやく雨も小降りになって、クルマ遍路の人達と話をする余裕も出てくる。
きつい坂の上にある26番 金剛頂寺を打ち終わり「下山」という感じで国道に出て、ドライブイン「浦島」でオムライスの遅い昼食を取る。
ここは民宿も併設なのでよほど泊まってしまおうかと思ったが、気を取り直して高知のビジネスホテルを予約する。
昨日までは評判の高い高知ユースに泊まろうと思っていたのだが、雨に降られまくった後は気安く泊まれるビジネスホテルが楽だ。
しみじみと洗濯したいのと、高知は町中に行きたいお店も多いので予定を変更する。 その後にまわった27番 神峯寺は我が伊式でもローで登るのがやっとの急坂に加え、駐車場から境内までも結構歩くので、この日のエネルギーを使い切ってしまった。
疲れていたこともあり少々弱気になり、高知に向かう道中で少しばかり悩んで明日は同じホテルに連泊して空身で近辺を打ち回ることにした。
28番を横目に素通りして、早々に本日の宿(ビジネスホテル)に到着。
多分、今回の最高額となるだろうシングル素泊まり5000円の宿だ。
夜は高知に来るたびに寄る居酒屋「タマテ」で地魚各種、謎の店「とんちゃん」であやしいジンギスカン、おまけに屋台ラーメンまでハシゴして、雨に降られたストレスを発散する。
2006年5月14日(日)
前日とはうって変わってこの日は終日好天に恵まれ、荷物もないので久しぶりにのびのびと走行&お参りが進んで行く。
28番 大日寺、29番 国分寺、30番 善楽寺、31番 竹林寺、32番 と快適に進み、まあ流行っているうどん屋を発見したので、またもうどんを食べる。
讃岐うどんの関東進出は撤退するケースも多いようで「花まる」以外は大きな成功は収めていないようだが、四国内では以前より明らかにうどん屋の数が増えており、着実に地盤を広げているようにみえる。
しかし、今回の昼飯におけるうどん比率というのはおそろしく高くなっているなあ。
別格が挟まらなければクルマ遍路の人とはペースはほぼ同じはずだが、会う人と会わない人が結構分かれる。
勿論、クルマ遍路でもお参りもそこそこに納経所に駆け込み、そそくさと次のお寺に向かう人達とは当然ながら何回も会うことはない。
ところが、昨日よく会ったミニに乗って回る女性3人にアッシー君らしい男の組み合わせはペースも似たり寄ったりで今日も同じように回っているはずなのに一回も遭遇しないようなこともある。
特に話しをすることがなくても、なんとなく「同士」的な雰囲気を感じて「また会いましたね!」と会釈しあうのは嬉しいものだ。
32番 禅師峰寺を打つと、浦戸大橋を渡り33番 雪蹊寺をお参りする。
桂浜は近くだし天気も良いのだが何回か来ているのとバイクで走るのが楽しくてついつい先を急いでしまい34番 種間寺へ向かう。
予想外の急坂に驚きはしたものの35番 清滝寺もあっさりとクリアして、予定より大幅に早く36番 青龍寺まで打ち抜ける。
青龍寺というのは空海入唐の際に恵果和上から勧請を受けたお寺の名前をいただいたのだろうが、ワシは1ヶ月後に中国・西安の青龍寺に行くことが決まっているので特別な寺という感じがする。
この日は順調に進んだので、午後4時にはお遍路さんからライダーに職種変更して、横波黒潮ラインという素晴らしい海岸沿いの道で、久々の全開走行を交えた走りを楽しむことにした。
日曜とあって本気で走る地元ライダーの何人かと遭遇するが流石に相手にしてもらえない。
しかし、こちらは背中に「南無大師遍照金剛」と入ったベストに山野袋(白くて小さな学生カバンみたいなお参りグッズ入れ)を背負ったままなので、抜く時にどうみられたのか想像すると面白い。
その後、須崎にて名物・鍋焼きラーメンを食べてみたが、これで町おこしを狙うのは無理があるぞ。
夜は高知に戻り再び居酒屋ナイトのはずだったが、ラーメンが胃に残っていてあまり酒も入らず早々にホテルに退散する。
2006年5月15日(月)
今日で四国入りしてからちょうど一週間目になる。
雨がちの日々ではあるが、不思議と予定ともいえない予定通りに順調に進んでいる。
寝る前に翌日のルートを考えるのだが、専用地図やツーリング用のルートガイドもあまり役に立たないので悩みはするものの、結局は「この辺りまで行けるかな~?」という程度のプランづくりで終えてしまう。
いざ走り出すとあまり地図も見ないし時間配分も考えないのだが、ここまでどうにかなっているのでこの先も何とかなるだろう。
朝イチで高知を出て須崎の町中にあるこぢんまりとした別格5番 大善寺をお参りする。
37番 岩本寺に向かう途中で中土佐の「黒潮本陣」でカツオのタタキ定食を食べたり、土佐清水の道の駅で昼寝したりとのんびりと走る。
天気もよく、寺と寺の間も長いので昨日に引き続きすっかりツーリング気分だ。
足摺岬の38番 金剛福寺は去年の秋に訪れた際に今回の遍路旅のきっかけを作ってくれた場所なので少し感慨深い。
普段のツーリングでもそうなのだが、岬とか尖ったところに行くと中継ポイントを通過したような感じを受けて少しばかりの達成感がある。
往復に使った足摺スカイラインも適度なカーブが続くワインディングで快適に走ることができるので、楽しいのだがどうにも遍路というよりツーリングライダーだ。
宿は大月の「幡多郷(はたご)」と決めたが、まだ時間があったので一足のばして39番 延光寺に向かうことにする。
途中で地元のノロノロ車に行く手を阻まれていると、対向車からパッシングがあり「こんな道でネズミ取り?」と警戒しつつノロノロ車についていく。
かなり長いこと走ってようやく取り締まり現場に遭遇。
さらに道も分かりづらかったこともありお参りに予想外に時間がかかり、宿に戻る暗くなってしまった上に、宿へ向かう途中で雨にまで降られてしまう。
幡多郷は一泊2500円で居酒屋の2階に遍路やツーリングライダーを泊めるスタイルの北海道によくあるライダーハウスをすこしばかり上等にしたような宿だ。
夕食で特注の2500円定食を頼むとウツボのタタキなどなど地魚主体の美味しいものが盛りだくさんですっかり満足した。
土佐の国(高知県)も無事にお参りを終えて、明日からいよいよ伊予の国に入ることになる区切りなので酔いも心地よい。
この店は名物女将がいるらしいが、本日不在とのことでご亭主と焼酎を飲みながらしばし話を弾ませる。
ところで泊まり客はワシ一人だし、居酒屋の客も来なかったが商売は大丈夫なのだろうか?
住まいは別なので起きたら鍵もかけなくてよいので適当に出発してくださいとご亭主が言い残して帰り、テレビもないので早めに休むことにする。
(つづく…)
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