ビワマス賛歌 P.12

2011年11月07日 | びわます賛歌

【食文化とビワマス】

 

琵琶湖にはサクラマスやサツキマスとも異なるサケ科の
魚が太古から生息してきた。琵琶湖を代表する魚ビワマ
スと人間の関わりは、人々が琵琶湖の周辺で生活を始め
た約2万年前の旧石器時代にまで遡るという。産卵のた
め琵琶湖から河川に遡上するビワマスは、間近に冬を迎
える人々にとって格好の獲物。特に卵をもった雌は、栄
養満点な食糧であった。内陸の食文化にとって、東北地
方以北ではサケが、西日本ではアユが重要な役割を果た
していたと指摘されている。琵琶湖周辺では春から初夏
にフナやコイが、夏にはアユが、さらに秋にはビワマス
が加わり食事を豊かなものにしたと思われる。6月頃の
梅雨の大雨に刺激されて川に上ることはあるものの、産
卵期以外の時期にビワマスが川に遡上することはまれで、
古代の人々が琵琶湖の沖合で回遊するビワマスを捕獲す
ることはほとんどできず、産卵のため川を上ってくるビ
ワマスを獲るため河川には簗(やな)が設置され、その
利権は地域の権力者と強く結びついたものであり、現在
では、その名残が神社の神事として認められる。例えば、
毎年10月1日に京都の上賀茂神社には安曇川で捕獲され
たビワマスが現在でも献上されて、10月に開催される大
津の天孫神社の大津祭は、「あめのうお祭り」とも呼ば
れている。また、平安時代の「延喜式」には、近江の産
物として醤鮒や煮塩年魚に混じって阿米魚鮨があげられ
ていることから、古代からビワマスは量的に重要な水産
物であった。ただ、この阿米魚鮨がビワマスのどのよう
な加工品であったのかわかっていないという。現代の「
ふなずし」のように、塩漬けにした魚をご飯に付け直し
て醗酵したものとは異なっている。新巻ザケのように単
に塩に漬け込んだものでもない。や煮塩年魚に混じって
回米魚鮨があげられていることから、古代からビワマス
は量的にも重要な水産物であった。


【食べ方】

現代に伝わるビワマスの伝統的な食べ方は、「あめのう
おごはん」と言われている。『聞き書 滋賀の食事』に
よれば、野洲川周辺の地域では産卵のため川を遡上して
きたアメノウヲを使って、鰹と内臓を取り除き卵は出さ
ないで研いだ米の上にのせて醤油と酒、ゴボウやネギな
どの野菜を加えて炊き込むものである。炊き上がった後、
アメノウヲの頭や皮、骨を取り除き身をほぐしてご飯と
混ぜ合わせてできあがりである。



また、姉川周辺の地域では、「ますずし」がつくられて
いる。塩をして保存しておいた産卵期のアメノウヲを洗
って薄く切り、甘酢に漬けておく。これを白いご飯に混
ぜて黒ゴマや塩ゆでしたえんどう豆、甘酢に漬けた生姜
の千切りをのせて食べる。

ビワマスの食べ方として、5月から7月の時期の刺身と
焼き物は一押しとされる。ビワマスそのものの昧を堪能
できる点でこれに勝るものはない。春から初夏には琵琶
湖に多く生息するアユが彼らの主な餌となっており、ア
ユの脂を体いっぱい蓄積している。最近、このビワマス
を一年中昧わえるようにするため、醒井養鱒場の池で人
工的に飼育して2年で1㎏以上になる品種をつくり出す
ことに成功した。さすがにアユを腹いっぱいに食べて育
った天然のビワマスにはまだ及ばないというが乗り越え
も間近と楽観している。


【エピソード】

 

あんまり美味しいものばかり食べるのは気が引けるが、
ここは滋賀の自然の賜と素直に感謝したい。これから冬
に入っていくが、子持ち寒諸子の季節。たまりませんね。

 

【脚注及びリンク】
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1.「
淡水魚辞典 サケ科
2.「
WEB魚図鑑 硬骨漁網 サケ科
3.「
イワナ(サケ科魚類)の生活史二型と個体群過程
4.「
日本魚類学会
5.「魚類学(Ichthyology」Mojie
6.「成
長のメカニズムからサケ科魚類の生活史多型と
 資源管理を考える
」清水宗敬
7.「
田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山
 梨県西湖での発見
」2011年2月22日
8.「
醒ヶ井養鱒場
9.「
ビワマスにおける早期遡上群の存在」2006.2.7
10.「
ビワマス-湖に生けるサケ-」藤岡康弘
11.「
ビワマス」国立環境研究所
12.「
北湖深底部における底生動物の変化
13.「
琵琶湖の固有種
14.「
滋賀県漁業協同組合連合会
15.「
川と湖の回遊魚ビワマスの謎を探る」藤岡康弘

16.「豊かな自然環境を次世代に引き継ぐために

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