地域循環共生圏概論㊼

2022年04月22日 | 防災と琵琶湖


作成日:2022.4.21|更新日:2022.4.22

地域循環共生圏概論 ㊼

□ 地盤強化と地震防災 ⑫
備計画書の「事前評価調書」の比較事例研究
「軟弱地盤対策」の考察の前に北九州市の「事業事前評
価」の事例を比較考察し。「地盤改良体系」の考察に移
る。なお、軟弱地盤改良(=防災・耐震構造)に関して
は、北九州市の事例(=土木建築計画)には詳しく触れ
おらず、その代わりに「高島市新ごみ処理施設設備基本
計画書(案)」
2020年2月版を参考にしました。




彦根愛知犬上広域ごみ処理場基本計画(案)
 彦根愛知犬上広域行政組合が荒神山(彦根市)の麓を
建設候補地としている広域ごみ処理施設で、地盤の軟弱
さなどを指摘する意見書を組合に出していた元日本環境
学会長の畑明郎さん(竜王町)が4月19日、組合からの回
答内容が不十分だとして、反論書を提出した。意見書は
一月に提出し、候補地の地盤が軟弱などとして、整備計
画の撤回を訴えた。組合からの回答が二月十八日付であ
り、「排水孔を設置し、腐植土層などにたまった水分を
強制的に排水する手法で検討している」などとした。彦
根市役所で会見した畑さんは「(軟弱地盤対策として)
くい打ちをするかなどについて、全く回答できていない」
と話し、再度の説明を求めた。⮚2022.4.20 中日新聞Web

【理念5】災害に強い施設
  東日本大震災の経験を踏まえ、今後、鈴鹿西縁断層帯
を震源とする地震等、震災をはじめとする災害に対する
対応策を予め準備しておく必要がある。以上を踏まえ、
新施設は災害時にもできる限り安定運転が可能とし、災
害廃棄物処理および災害時のエネルギー供給等の拠点と
成り得る、必要な設備を備える施設とする。
<基本方針>
・大規模な災害が発生した際に一定の期間で災害廃棄物
の処理ができるよう、余力のある処理能力を備えた設備
を導入する。
・平常時に排出されるごみとは性状が異なる災害廃棄物
への対応が可能な処理技術を備える。 
・地震や水害により稼働不能とならぬよう、耐震化や燃
料・資機材等の備蓄を考慮した災害に強い施設とすると
ともに、平時より災害時の廃棄物処理に係る訓練を行う。

❏ 滋賀県既存建築物耐震改修促進計画


 高島市新ごみ処理施設設備基本計画書(案)
2020年2月
9-4 土木建築計画
新ごみ処理施設は、施設整備基本方針に示す「安全・安
心かつ安定的に処理が可能な施設」を目指し、耐震性に
優れた強じんな施設であるとともに、災害時発生時も安
全に処理することができる施設となるよう、土木建築計
画を次のように設定します。
1)耐震性 エネルギー回収型廃棄物処理施設整備マニュ
アル(2019年5月 環境省)では、災害廃棄物対策指針を
踏まえ、災害廃棄物の受け入れに必要な設備・機能を定
める(1. 耐震・耐水・耐浪性、2.始動用電源、燃料
保管設備、3.薬剤等の備蓄倉庫)としています。なお、
上記全ての設備・機能を一律に整備する必要はなく、地
域の実情に応じ、災害廃棄物処理計画において必要とさ
れた設備・機能を整備することとしています。新ごみ処
理施設は、下記、基準に準じた設計・施工を行うものと
します。建築基準法(1950年法律第201号)官庁施設の総
合耐震・対津波計画基準(2013年3月改定)官庁施設の総
合耐震計画基準及び同解説(社団法人 公共建築協会1996
年発行)火力発電所の耐震設計規程 JEAC 3605-2014(一
般社団法人 日本電気協会:2013年発行)建築設備耐震
設計・施工指針 2014年度版(一般財団法人 日本建築セ
ンター:2014年発行)現行の建築基準法では、「中規模
の地震(震度5強程度)に対しては、ほとんど損傷を生じ
ず、極めて稀にしか発生しない大規模の地震(震度6強か
ら震度7程度)に対し ても、人命に危害を及ぼすような
倒壊等の被害を生じない」ことを目標としており、上記
基準に則って耐震設計すれば、震度6弱までの地震には耐
えられると考えられます。(出典:ごみ焼却施設に係る
大震災対策について:2013年7月、公益財団法人 廃棄物・
3R 研究財団、廃棄物対応技術検討懇話会)



2)主要構造種別
新ごみ処理施設のうち、臭気対策及び騒音・振動対策が
必要な設備(部屋)については、鉄筋コンクリート造あ
るいは鉄骨コンクリート造とし、必要な設備・機器を収
納します。その他の部屋については、鉄骨造とします。
(1)耐震性能の目標 官庁施設として必要な耐震性能に
ついては、「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準(20
13年版)」(以下、「計画基準」という。)及び「国家
機関の建築物及びその附帯施設の位置、規模及び構造に
関する基準」(1994年12月15日建設省告示第2379号)
以下「位置規模構造基準」という。)等において官庁施
設の種類ごとに耐震性能の目標や耐震安全性の目標値が
示されています。これにより、構造体、建築比構造部材
及び建築設備について、官庁施設が有する機能、地震に
より被害を受けた場合の社会的影響及び立地する地域的
条件を考慮した官庁施設の重要度に応じて、大地震に対
する耐震性能の目標の達成を図ることとされています。
耐震性能の目標を、表9-4に示します。

また、官庁施設の種類別に位置規模構造基準における耐
震機能について、計画基準の耐震安全性の分類を組み合
わせて示すと、原則、表 9-5のようになります。新ごみ
処理施設では、石油類を貯蔵及び使用(助燃バーナ、再
燃バーナ等で使用)することがあるため、表 9-5のうち
〔11〕に該当することが考えられます。よって、新ごみ
処理施設は、表9-5 のうち〔11〕に示す耐震安全性の分
類で計画するものとします。


新ごみ処理施設の耐震性能の目標を整理して表9-6に示す。


3)造成計画
昨今の災害(水害)を考慮し、滋賀県が示す最大の想定
浸水深である1/200年確率に対応できる施設を建設するこ
とを考慮した造成計画とします。建設予定地の想定浸水
深は、表9-7 に示す通りです。

再現確率によっては高確率で浸水する可能性があり、施
設において作業を行う作業員や、地域住民の方の安心・
安全を考慮し、さらに施設整備基本方針で掲げた(安全・
安心かつ安定的な処理、環境に配慮、地域に貢献及び親
しまれる、経済性)を遵守するために、十分な浸水対策
を講じる必要があります。また、建設予定地は遊水機能
を有しており、遊水機能の維持や景観上の観点を鑑み、
造成計画を検討しました。なお、ごみ処理施設の浸水対
策として、環境省などにより 表9-8に示す事項が挙げら
れています。 

以上より、表9-7に示す想定浸水深を考慮し、表9-9に示
す造成案 A~Eの造成の考えかた及び浸水対策を比較し、
表9-12において検討します。


⮚表 9-10 造成案(1/10 年確率の想定浸水時


※造成案 Eについては、施設下部をピロティ構造とする
案であるため、造成案 A~D と比較し、焼却施設の建設
費が約4億2千万円、リサイクル施設の建設費が約5億4千
万円高くなる可能性がある。なお、建設費については、
第11章に記載する。造成案に関しては表9-12に示したと
おり、造成案 Eには、懸念事項があり、造成案 C、D に
は課題事項がそれぞれ3つあります。それに比べて、造
成案 A、または造成案 Bは、懸念材料が少ない案である
ことや、施設内で業務を行う従業員や施設の見学者等の
安全性や災害時における施設の強靭性等といった観点か
ら、既往災害(特に水害)に対応することができるため、
優れているという結果となりました。なお、造成案 A、
または造成案 Bを採用した場合には、盛土造成に伴う遊
水機能の低下がもたらす建設予定地の対岸や下流に対す
る影響を懸念するご意見をいただいたので、盛土造成に
伴う遊水機能の低下の影響を検証するために、「ごみ処
理施設建設影響調査業務」において、本計画にて算出を
行った盛土量を考慮し、雨量データ(2013年 9月雨量、
200年確率)から氾濫解析を実施し、浸水範囲、浸水深、
河道水位等を検証しました。「ごみ処理施設建設影響調
査業務」によると、「多くの範囲で浸水深の増加は1㎝
以下であり、盛土時と現況において大きな違いはない」
との検証結果となっていることから、施設建設による建
設予定地の対岸や下流に対する影響はないと判断しまし
た。したがって、本市では、総合的に判断すると、造成
案 A、または造成案 B が最適な造成案であると判断し、
今後、工事費等を考慮した上で決定していくものとしま
す。「ごみ処理施設建設影響調査業務」における主な解
析結果を図 9-4~9-11に示します。(ごみ処理施設建設
影響調査業務の報告書より引用。





□ 軟弱地盤改良環境保全工学概論①

廃棄物埋立地すなわち廃棄物地盤の安全性・安定性に関
する地盤材料及び地盤工学的考察が必要であり、地盤改
良等を踏まえ処分場の工学的管理が求められている。こ
こでは、廃棄物の処分による①減容化、②リサイクル等
に有効となる跡地利用を目指した地盤改良技術を俯瞰す
る。

1.廃棄物を処理し処分する
 廃棄物は再生利用されるもの、中間処理されるもの、
埋立処分されものに分類され、さらに中間処理の内最終
的に埋立処分されるものと再生利用されるものおよび減
量化されるものに分別される中間処理の過程では、破砕、
焼却、脱水、乾燥、選別等がその主たる処理方法で、最
終処分されるものは、一般廃棄物は管理型処分場に、産
業廃棄物は安定型・管理型・遮断型の処分場にそれぞれ
処分される。

1.1 廃棄物問題の現状と最終処分場の構造 
 埋立処分場の構造は廃棄物の種類・性状・有害性の有
無等により次の3種類に区分されており、各々の処分場
の構造、維持管理に関する技術上の基準は省令・通知で
定められている。.
(1)安定型処分場:有害物質の溶出や腐敗分解での汚
水浸出のない廃棄物(安定型廃棄物)を対象とするもので、
埋立後の崩壊防止や散乱防止に擁壁を設けたり、上面を
0.5m以上覆土する。安定型廃棄物には、廃プラスチック
類、ゴム屑、金属屑、ガラス屑と陶磁器屑建設廃材の5
品目である。ただし、通常15cm以下に破砕または切断す
ることが要求される。
(2)管理型処分場:有害物質の溶出試験には合格する
が、有害物質を含んでおり不安が残るものや、埋立後、
腐敗分解による汚濁浸出水の危険性の高いものを受け入
れる処分場である。埋立地の底面や側面をゴムやプラス
チック等による遮水工を施すか、不透水性、地盤(粘性
土層厚5㍍以上で透水係数が10-5cm/s以下、岩盤:1ル
ジオン値以下)で構成される必要がある。崩壊防止や覆
土をするとともに浸出水を集めて廃水処理を行う。木造
建築物の解体等で生じる建設混合廃棄物は、この工法で
埋立処分を行う必要がある。この処分場においては、浸
出水の厳正な管理が求められる。しかしながら、浸出水
の遮水工構造は環境地盤工学的な見地からは必ずしも十
分なものとはいえない。また、発生ガスについての対策
にも特別の基準が無い等、遮断工法は多くの問題発生の
危険性を有しているのが現状である。
(3)遮断型処分場:溶出試験で基準に適合しないよう
な有害廃棄物を処分する廃棄物を密閉耐食性の容器に充
填するか、処分地の底面や側面をコンクリート等で不透
水性の遮断構造とし,その上面も完全被覆する。そして
廃棄物を永久に保存し、壊したり掘り起こしたりしては
ならない。

2-2 廃棄物の埋立処分. 
1993年度の産業廃棄物の処理フローを下図1に示す。約
3億9700万tの産業廃棄物総排出量のうち2億5,100万t(64
%)が中間処理され、直接再生利用されるものは 8,900万
t (22%)、
直接最終処理されるものは5700万t (14%)であ
る.最終的には1億5700万t (40%)が減量化され,1億5,600
万t (39%)が再生利用され、残りの8400万t (21%)が最終
処分されている最終処分される。


図1.全国産業廃棄物の処理フロー図(1993年)
「材 料 」 (J. Soc. Mat. Sci., Japan), Vol.49, No.11, pp. 1249-
1254, Nov. 200
廃棄物は1993年度以後ほぼ横ばい傾向にあり、減量化と
生利用量についても同様の傾向がみられる。埋立方法
は陸上埋立と水面(海面)埋立で違いがあり, その概念図
を下図2に示す。陸上埋立では,①サンドイッチ方式、②
セル方式、③投込み方式等が一般的方法である。投込み
方式の場合は不均質で締固めの不十分な廃棄物地盤を形
成しやすい水面埋立では片押し方式や底開バージによる
薄層まきだし方式が一般的である。水面埋立の場合は水
中部の敷きならしや転圧が不十分となり、廃棄物層厚が
厚くなりやすい。最終処分場の施設数は全国で2321箇所
存在(1994年3月末)し、その立地は山間や平地の陸上埋立
地が大部分を占める。それらの処分場を土地として再生
する手段、即ち地盤改良技術が求められている。


図2.埋め立て方式概要

3.廃棄物地盤を早期に跡地利用する
跡地利用を考える際有害物質の漏洩発生ガスに対するリ
スク管理等廃棄物地盤の管理もより重要となってくる処
分場は一般的 に種々雑多な廃棄物が不規則に埋立てられ
ており、ガス発生、水質汚濁、土壌汚染の可能性があり
そのままでは利用しにくい地盤である。山間部での廃棄
物地盤の跡地利用性について検討した。事例や大阪湾フ
ェニックスでの海面埋立地における埋立跡地は有効利用
が容易な地盤であることが明らかにされた。また、廃棄
物の特性と跡地利用の関連性については鉱さい・ガラス
くず類・陸上残土等に比較して、上下水汚泥・無機性汚
泥等の埋立地はやや利用 が難しく,何らかの対策を要す
る場合が多い。

3-1 跡地利用に際しての対策技術

処分場跡地の利用の評価として低度中度、高度利用に分
類される。構造物を建設する場合には、跡地地盤の力学・
化学的特性等についての調査項目として、支持力、圧縮
沈下、圧密沈下、粒径、ガス発生腐植性が列挙される。
低度(公園緑地)利用の対策には盛土・転圧等によって造
成地盤で直接支持できる程度の表層地盤改良が求められ
る中度(倉庫,タンク)利用には地盤の支持力に対する要求
が高くなり、表層から中深度までの地盤改良の必要性が
生じてくる。高度(高層建物、高架道)利用では大きな地
耐力が要求され周辺環境への十分な地盤改良対策を必要
とする。.

3-1-1 沈下対策
跡地に設ける構造物の沈下対策は,地盤(改良工法の採用)
におけ 対策と構造物 (上部工、基礎工等)における対策
の2つに大別される。
(1) 地盤改良による対策:早期利用を目的とし、支持力
が大きく、沈下量の少ない安定化促進のために役立つ改
良工法としては,下表1のような物理的安定処理工法が挙
げられる。これらは沈下対策として代表的なものであり
かつ有効的な工法であると考えられる。
(2) 上部構造における対策 上部躯体構造においては、
建物を軽量化する。建物荷重による地中応力が均一化と
なるようにする構造障害に対する伸縮継手、不同沈下の
修正ジャッキ等を設ける。
(3) 基礎構造における対策 地中ばりの梁せいを大きく
したり、二重スラブとして剛性を高める。地下室を設け
排土重量による荷重の軽減化を図る。
(4) 構造物と周辺地盤の接合部における対策 構造物と
地盤との対策には。,①不同沈下の防止に構造物周辺の
広範囲の地盤改良を行う。②不同沈下を見込んだ階段や
埋設管には伸縮可撓配管材、継手を使用する。③配管を
構造物と一体化する。

表1.地盤改良工法の廃棄物地盤への適用性

3-1-2 ガス・臭気対策
跡地から発生するガスおよび臭気対策は、①地盤におけ
る対策、②構造物における対策に大別される。. 
(1) 地盤における対策は、①施設の建設前および施工後
において地盤改良(改善)工法により地盤内ガスを大気中
に放出するもの、②地表、表層部の臭気対策を行うもの,
に分けられる。
(2) 構造物における対策は、①)床下にガスを充満させな
い、②ガス検知した場合の強制換気、③構造物の下部で
収集しガスの空中放出,等に大別される。. 

3-1-3 雨水・浸出水対策
覆土の施工、シートおよび集排水施設等により、雨水の
埋立地内への流入、浸透を防いで汚水の発生量を減らす。
浸出汚水は、集水施設により集め浸出水処理施設におい
て処理する。

3-1-4 腐食・劣化対策
腐食対策としては、良質土による置換工法を採用する。
また、塗装・被覆や鋼材の電位を変える電気防食法や、
鋼材の肉厚を厚くする。高炉セメントやフライアッシュ
セメントを用いて、コンクリート自体の耐食性を増すコ
ーティングやラニングによる耐食被覆か、かぶりを大き
くとる、等が有効である.

3-1-5 生育阻害対策
植物の生育阻害に関する対策として、客土、有機物の施
用等の土壌改良を行う。さらに、ユ ーカリ、ギンネム、
アカシア等の発生ガスに強い樹種を選定する。最終覆土
厚は芝・低木で0.5m以上, 中・高木で1m以上とすること
等が望まれる。

3-2 処分場の構造種別に対する閉鎖と利用性
廃棄物処分場は、埋立開始から閉鎖後まで、人の健康や
生活環境に悪影響を及ぼすものであってはならない。安
定型処分場の閉鎖は、本来あってはならないはずの有害
物質の浸出やメタンガスの湧出を想定した上で、それら
が皆無であることを検証することが基本となる管理型処
分場においては、埋立中から埋立終了後まで、遮水施設・
処理施設等の継続運用とそれらの機能管理を行なう、ま
た、開口部と処理施設等を区別し、埋立地表部の土地利
用だけに限定して、埋立終了に伴う”開口部の部分的な
閉鎖 ”を行なうことが可能となる。遮断型処分場は,生
活環境から有害物質の隔離機能を有するものであり、永
続的に管理が継続されるしたがって、閉鎖は否定的であ
り土地利用は原則として考慮されない。処分場は、廃棄
物が分解し無害化・安定化して環境への影響が皆無になっ
た時点で法的な廃止措置である閉鎖許可がなされるべき
である。 

3-3 跡地の管理技術
処分場が閉鎖の手続きを経ると通常の土地として扱われ
ることとなるが、その利用方法については何らの制限が
なく、廃棄物跡地における予測できない事態に備える管
理体制は整っていない埋立跡地の利用の際の障害を最小
限に留め、廃棄物処分場の確保を容易にするような跡地
管理技術の整備が必要である跡地利用を前提とした場合
の廃棄物地盤に対しては、地盤材料・地盤工学に携わる
技術者 が積極的に管理する必要があろう。
 埋立の終了した跡地の安定化は、主に(1)埋立地盤の沈
下速度、(2)浸出水の水質、(3)発生ガスの質と量、(4)埋
立地盤内の温度等の指標により判断される。
 埋立中から埋立終了、閉鎖までの期間において継続的
に各指標の経時的推移を動態観測する管理方法が用いら
れている埋立が終了した処分場でも、廃棄物の分解が収
まり、または浸出水の水質や発生ガスの性状が周辺環境
に支障のないレベルに低下するまでの間は管理が必要で
ある。観測結果より浸出水あるいは発生ガス処理施設の
停止時期ならびに跡地利用の開始時期を決定し、さらに
早期閉鎖ができるように安定化促進対策を検討する。
 埋立終了後から閉鎖までの管理について以下に述べる。.
管理は積極的な地盤改良に比べると、消極的ではあるが
重要な対策工法と位置づけられる.

(1) 地盤沈下:測定は、埋立終了した箇所から順次行なう。
測定点としては1ha当り廃棄物層の最深部、中間部、浅部
の3地点が適当と考えられる測定頻度は少なくとも年1
回程度で沈下板や層別沈下計による方法で実施する測定
の停止時期については、(1)建築基準法に準拠すること、
(2)不同沈下 が2~4cm以下になることが判定項目として
参考となる.
(2) 発生ガス: 管理期間の短縮を目的として,(1)覆土
を施工して埋立地に雨水を入れない、(2)埋立地盤内ガス
の強制排出を行なう、等の方法によって埋立地を好気的
雰囲気にすることが効果的である。また、管理の停止時
期は,(1)悪臭防止法を満足すること、(2)メタン濃度が爆
発の下限値(5%)以下になること、等の基準を勘案するも
のとする。
(3) 浸出水:埋立が終了した処分場の浸出水処理の軽減
策としては、(1)処理量を減少させること、(2)埋立地を
好気的状態にして浸出水の水質を早期に放流可能な水質
に近づけること、等があげられる。

4.廃棄物地盤の跡地を地盤改良する
廃棄物地盤の改良対策においては、地盤の固化処理が重
要な位置を占めており、地盤の化学的処理として従来か
ら積極的に研究開発がなされてきた地盤改良(安定処理)
工法がきわめて有効に適用できると考えられる。ここで
は種々の地盤改良工法の概要を示すとともに廃棄物地盤
への適用可能性について述べる。  

4-1 地盤改良工法の概要
 化学的特性や物理化学的特性を利用して、各種の地盤
改良工法が開発されており、通常地盤と同様に廃棄物地
盤を改良する場合にも、基本的に次のような改良原理が
考 えられる。
(1) 良質な土で置き換える
(2) 脱水・圧密を図る
(3) 締め固めて高密度化を図る
(4) 廃棄物を固化する
(5) 他の材料で補強する
 このような改良原理と対応する代表的な改良工法およ
びその適用性をまとめると表1のようになるまた,同表に
は地盤の汚染対策についても併せて示している。このよ
うに廃棄物地盤を固化や圧密によって物性を改善すると
廃棄物地盤の変形を拘束したり支持力を直接高めたりす
ることができる。

4-2 廃棄物埋立地盤への適用性
 最終処分場の跡地を利用する場合に、障害となりやす
い事象は、下記の6項目が挙げられる.
(1) 廃棄物の分解による浸出水の発生
(2) 廃棄物の分解によるガスの発生
(3) 廃棄物による悪臭の発生
(4) 廃棄物の分解・圧縮による沈下の発生
(5) 廃棄物・浸出水による構造物の腐食
(6) 掘削等造成による汚染土壌(廃棄物)の発生
 この6項目のうち,(2)と(3)は一括して取り扱うことが
できる.(6)掘削に伴う廃棄物の発生については、構造物
等の施工方法で対処できるものであり、跡地利用そのも
のを阻害する要因とはならないしたがって、浸出水、ガ
ス、沈下および腐食の問題に集約できる。跡地利用に際
し、埋立地盤の安定処理対策としては土砂系の廃棄物材
料であれば、従来工法がほぼそのまま適用可能であると
考えられる。対象となる廃棄物の物性を慎重に調査した
上で、それぞれ埋立処分地の条件に応じて周辺地盤環境
とも適合する最適な工法を採用する締固めという観点か
らの工法が地盤の空隙を効率よく充填し、かつ分解の促
進を図れ、廃棄物埋立地盤の早期安定化のための有効な
手法と される。特に、騒音・振動があまり問題にならな
い地域では、重錘落下締固め工法が良く用いられている.
この工法は、100~200t吊りの大型クレーンで重量10~60
tのハンマーを10~30mの高さから繰り返し自由落下させ
地表面に加えられる衝撃力によって地盤を締固め強化す
る工法である地表面に直接衝撃力を加えるため、廃棄物
地盤のように種々雑多な物資が混在し,直径1m以上のガ
レキの混入しているような地盤に対しても有効であるま
た。打 撃を繰り返すことにより,廃棄物層内に多量に滞
留している有毒ガスの強制排出が可能であり, 地盤の安
定化による処分場跡地の高度利用に適している. 図3に
は,廃棄物の埋立開始後25年,地盤改良後15年を経過した
地点における実施例を示している。ここでは、改良工事
の施工前後における標準貫入試験結果を示しており、サ
ーチャージ工法の場合と比べて重錘落下締固め工法によ
る改良が深部まで到達し廃棄物層を圧縮強化している事
が見られる。また、改良工事前後のデータと比較した場
合重錘落下締固め工法 による改良で は15年の間に少し
ずつ安定した地盤に向かう様子が認められる。


図3.地盤強度の経時変化 
                    この項つづく

【エピソード】

  
4月7日、彦根城・宇曾川など周辺の桜が満開。夫婦そ
ろって彦根城でお花見にでかけました。

     春爛漫 ゆるりそろりと 船二艘

 彦根城屋形船

【脚注及びリンク】
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