鹿角の暮らしについて古老から聞き書きしたなかの、食生活に関しての報告書を読んでみた。
基本的には明治から昭和戦前あたりまでは、米・雑穀・野菜・海の魚とその加工品が中心、
牛・馬・鶏は、生業や宗教上の理由により食べない人たちもいた。
いまでも自然豊かな鹿角である、
その頃は、山からの恵みは豊かで、さぞ多くの動植物を利用していた気がしていたが・・・、
確かに山菜は、現在より多くの種が利用され、用い方もバリエーションに富んでいる。
ならば食生活の肉の項で登場する動物はどうだったか、
獣は、テン アナグマ ムササビ ノウサギ タヌキ キツネ イタチ
鳥は、ヤマドリ キジ スズメ カモ ヒヨドリ レンジャク 家禽 鶏 アヒル
魚は、ウグイ カジカ ヤマメ マス イワナ ドジョウ ヤツメ アユ ナマズ 鯉 鮒
他に、タニシ類 カラス貝 サワガニ モクズガニ 川エビ イナゴ
である、罠で捕れるものがばかりで、思ったほど多くはない。
山の達人「マタギ」という語は100ページこえる中に2回、クマに至っては1度も登場しない。
これは聞き書きの対象者として集められた人たちが、
旧地主層・大店の末裔や元公務員に偏っていたのかもしれない。
ノウサギはクセもなく柔らかく美味かった、
タヌキ・アナグマの肉は臭かった、キツネ・テン・イタチはもっと臭く、女子どもは嫌った。
大型の獣は、クマ・カモシカ・イノシシ・シカなどであるが、
イノシシとシカは当時分布せず、カモシカは昭和9年に天然記念物に指定されている、
残りはクマだけであるが、食材として扱われていない、
最近のように人間の生活圏の中まで出現してこなかったのだろうか。