自律神経障害の概要
自律神経系は身体の不随意な機能である心拍数、血圧、呼吸、瞳孔の大きさ、消化、体温、性機能などを制御しています。自律神経障害(Dysautonomia ディスオートノミアと読みます)が起こるとこれらの機能で以下のような異常がおきます。
自律神経障害は単独で起こるケース(原発性自律神経障害)と、他の疾患が原因で起こるケースがあります。がん、アルコール依存、糖尿病で自律神経障害が起きることがありますが、基礎疾患の治療により自律神経障害も改善する場合があります。
自律神経障害では複合性局所疼痛症候群(CRPS)のような自律神経系の一部が障害される場合と、自律神経系全般が障害される場合があります。また症状が一時的である場合もありますが、多くは時間とともに悪化します。さらに特に呼吸や心機能に影響している場合は命に関わる恐れがあります。
「自律神経失調症」は一般でも広く使われていますが、曖昧に使用されることが多い診断名です。本来は、自律神経系という内臓を調整する神経系(交感神経系と副交感神経系の2つがあります)が体内でうまくコントロールされていないことによって引き起こされる、数々の症状を指します。例えば、動悸、発汗、めまい、ほてり、頭痛、胃痛、腹痛、下痢、吐き気、ふるえ、筋肉痛、喉のつまり感、息切れ、食欲不振、全身倦怠感などの身体症状(「不定愁訴」という別名もあります)について、特定の器質的疾患(検査により臓器や器官に異常が認められる病気)がない場合に自律神経失調症と診断されることがあります。症状の現れ方は人それぞれに異なり、同時に複数の症状が起こることも、時間経過とともに別の症状に置き換わることもあります。
自律神経失調症に関連して、それぞれの臓器に起こる症状の現れ方によって別の病名がつくことがあります。頭痛の症状であれば「片頭痛」や「緊張性頭痛」、喉がつまるような感覚が起こる「咽喉頭異常感症」、下痢・便秘・腹痛を繰り返す「過敏性腸症候群」、息苦しく感じることによって呼吸数が多くなる「過換気症候群」、全身の痛みが続く「線維筋痛症」などです。
一方、情動(悲しみ、喜び、怒り、恐怖など)と自律神経系は相互に密接に関連しています。外からの刺激によって起こる体内の歪みの状態をストレスといい、過剰になると自律神経失調症と情動ストレス反応が同時に起こることがあります。情動ストレス反応としては、抑うつ気分、不安、解離(自分が自分でない感覚)、過覚醒(常に警戒し、リラックスできない状態)・睡眠障害などが挙げられます。
また精神症状、特に「うつ病」や「不安症(神経症)」の部分症状として、自律神経失調症が現れることがよくあります。そのため、精神症状を有する人に自律神経失調症の病名が使われることがあります。他に、大きなストレスや精神症状がなくても自律神経系の変調をきたしやすい体質である人もいます。
まとめると、自律神経失調症は大きく分けて、自律神経症状が起こりやすい体質によるもの、ストレス反応によるもの、精神症状によるものの3つがあります。しかし、それらを区別することが難しい場合や、混合していることが多いのも事実です。そのため患者さんの診療では、環境・ストレスと症状の関連を探ること、精神状態を評価すること、自律神経失調症を引き起こす別の身体疾患の可能性を念頭に置いて必要な医学的検査を行ないます。
また更新します。
全国2210万人の糖尿病患者さん及びその予備群さん。全国1330万人の慢性腎臓病患者さん。
皆様もご自愛ください。