東近江市の鈴鹿山脈にある「小椋谷」が発祥地とされ、木材をろくろで加工する「木地師(きじし)」。
その流れをくみ、国の伝統的工芸品「宮城伝統こけし」の5系統の一つにあたる「弥治郎こけし」を制作する宮城県白石市の工人らが8日、東近江市蛭谷(ひるたに)町の「筒井神社」で初めてこけしを制作し、奉納した。弥治郎こけし業協同組合の佐藤英雄専務は「本家に来て『初挽(はつひ)き』し、奉納する夢がかなった」と感謝した。
「小椋谷」では、平安時代に「惟喬(これたか)親王」が皇位継承争いを避けて都から移り住んでろくろの技術を考案したという伝説があり、全国各地に散った木地師は親王を祖神と信じた。
谷にある蛭谷町と君ケ畑町には、明治ごろまで全国の木地師を管理する別々の組織が存在した。両町には親王に関係するとされる史跡があり、「筒井神社」では親王を祭っている。
【過去ログ】
【滋賀・近江の先人第258回】木地師の祖・惟喬親王(東近江市)
宮城県白石市では、こけし神社とも呼ばれる惟喬神社が1957年、「筒井神社」からの分祀で建立された。
現地の工人らは惟喬神社で毎年1月2日に安全や商売繁盛などを願い、その年初のこけしを制作して奉納する「初挽き」を行っているが、近年、有志で小椋谷を訪れていた中で筒井神社でも初挽きを行いたいと考え、神社を管理する蛭谷町自治会に連絡を取った。
12月8日は、「弥治郎こけし」の工人ら約10人と地元の関係者らが「筒井神社」に集まり、神事を開催。佐藤専務が電動ろくろや工具を使って木材を削り、紙やすりなどで磨いた上、筆で色を付けて顔を描き、高さ約24cmのこけし1体を奉納した。
氏子代表の小椋正清・東近江市長は「木地師発祥の地として、この伝統と文化をしっかり守り、より一層発展させることを約束したい」と話した。
<記事・写真: 中日新聞より>