まだパソコンは動いてる。何ごともなかったかのように…。ワイン飲んだから年代物のオンボロマシンが復活したんかなあ。
さて『翁』。(先月8日の催しの話題なのに、ようやく囃子方が打ち出すところまでたどりつきました…)
囃子方が着座して、笛が「座付き」を吹くと、小鼓方三人が床几に掛かり、素袍の肩を脱ぎます。大鼓と、『翁』に引き続いて脇能を上演する『翁付』の時に参加している太鼓も、このとき正面に向き直ります。
小鼓の素袍さばきは本当に短時間なので大変。囃子方が座付くときに切戸口から小鼓方三人に対して専用の後見が三人、登場して小鼓方の後ろに着座し、お世話をします。この後見はじつは必要不可欠で、小鼓方の本役が自分で床几に掛け、素袍の肩を脱ぐのは至難。いや、無理すれば出来なくもないかも知れないが、あの短い時間で、窮屈な場所で忙しくそれをやってしまっては、笛の「座付き」の終わりに間に合わないか、もしくはお客さまからは見苦しい姿になってしまうでしょう。
この後見、もちろん本役の小鼓方と同じお流儀の方が後見をするのが正式なのですが、やはりそれはなかなか難しい場合も多いです。なんせ同じ一つの小鼓のお流儀から6人がひとつの能楽堂に集まるんですから。それで、仕方がない場合にはいろんな手段を講じて後見の役を選出します。いわく本役とは別の小鼓のお流儀から派遣されてきて後見を勤める場合もあり、ほかにも、同じ催しに出勤している囃子方の若手が、小鼓という職種にはこだわらずに後見を勤めたり、それも不可能な場合には、囃子方の後ろに座っている地謡がお手伝いすることさえあります。
いや、後見などと言うと専門的経験が必要のように思われてしまいますが、『翁』の小鼓の後見の場合には、専門職とはちょっと違って、こういう手順なのです。笛が「座付き」を吹き始めたら小鼓方の三人はすぐに床几を組み立てるので、①まずは小鼓方が腰から抜いた扇子を預かる。これは床几に掛かった小鼓方の後ろに置いておくのですが、素袍のさばきを手伝う邪魔になるので、後見の横に置くなり、一時的に避難させておくのが賢明。次に小鼓方が立ち上がって正面を向いた瞬間に ②「フトン」を床几の上に乗せる。さらに間髪を入れず ③素袍の長袴が床几に絡まないよう、袴の裾を床几の左右に流しておく。床几の「フトン」の上にお尻を乗せた小鼓方は道具を前へ置き、すぐに素袍の両肩を脱ぐので、ここで ④素袍の袖さばきをする。つまり素袍の上半身をはだけたような状態になるので、素袍の襟=うなじに当たる部分=を袴の腰板にはさみ、垂れた両袖を床几の横に美しく流す。この間に小鼓方は道具を取り上げ、小鼓に巻かれてあった「締め緒」をほどき、これを後ろに廻すので ⑤これを受け取って四つ折り程度にたたみ、さきほどの扇子と一緒に床几のすぐ後ろに置く。
…要するにこの場合の後見は「楽屋働き」の延長のような、作業をするのであって、小鼓を打つ技術とは無関係なのです。そういうワケで、手順さえ熟知していれば、なにも小鼓の専門家が後見を勤めるのが必ずしも必要ではないので、その日の囃子方のスケジュールなどを考えて、事前に誰がこの後見を勤めるか、小鼓方の本役は考えておき、どうしても囃子方の手が足りない場合にはシテ方、つまり催主に相談があって、地謡が勤める事も窮余の一策としてあり得る、という事です。
ちなみにこの後見、「三番叟」が終わって『翁』が終演するときには、もちろん小鼓方が(このときには大鼓方も)床几から下りて素袍の両肩を入れるお手伝いもしなければならないのはもちろんですが、そのほかにも もう一つ、重要な仕事があるのです。
さて『翁』。(先月8日の催しの話題なのに、ようやく囃子方が打ち出すところまでたどりつきました…)
囃子方が着座して、笛が「座付き」を吹くと、小鼓方三人が床几に掛かり、素袍の肩を脱ぎます。大鼓と、『翁』に引き続いて脇能を上演する『翁付』の時に参加している太鼓も、このとき正面に向き直ります。
小鼓の素袍さばきは本当に短時間なので大変。囃子方が座付くときに切戸口から小鼓方三人に対して専用の後見が三人、登場して小鼓方の後ろに着座し、お世話をします。この後見はじつは必要不可欠で、小鼓方の本役が自分で床几に掛け、素袍の肩を脱ぐのは至難。いや、無理すれば出来なくもないかも知れないが、あの短い時間で、窮屈な場所で忙しくそれをやってしまっては、笛の「座付き」の終わりに間に合わないか、もしくはお客さまからは見苦しい姿になってしまうでしょう。
この後見、もちろん本役の小鼓方と同じお流儀の方が後見をするのが正式なのですが、やはりそれはなかなか難しい場合も多いです。なんせ同じ一つの小鼓のお流儀から6人がひとつの能楽堂に集まるんですから。それで、仕方がない場合にはいろんな手段を講じて後見の役を選出します。いわく本役とは別の小鼓のお流儀から派遣されてきて後見を勤める場合もあり、ほかにも、同じ催しに出勤している囃子方の若手が、小鼓という職種にはこだわらずに後見を勤めたり、それも不可能な場合には、囃子方の後ろに座っている地謡がお手伝いすることさえあります。
いや、後見などと言うと専門的経験が必要のように思われてしまいますが、『翁』の小鼓の後見の場合には、専門職とはちょっと違って、こういう手順なのです。笛が「座付き」を吹き始めたら小鼓方の三人はすぐに床几を組み立てるので、①まずは小鼓方が腰から抜いた扇子を預かる。これは床几に掛かった小鼓方の後ろに置いておくのですが、素袍のさばきを手伝う邪魔になるので、後見の横に置くなり、一時的に避難させておくのが賢明。次に小鼓方が立ち上がって正面を向いた瞬間に ②「フトン」を床几の上に乗せる。さらに間髪を入れず ③素袍の長袴が床几に絡まないよう、袴の裾を床几の左右に流しておく。床几の「フトン」の上にお尻を乗せた小鼓方は道具を前へ置き、すぐに素袍の両肩を脱ぐので、ここで ④素袍の袖さばきをする。つまり素袍の上半身をはだけたような状態になるので、素袍の襟=うなじに当たる部分=を袴の腰板にはさみ、垂れた両袖を床几の横に美しく流す。この間に小鼓方は道具を取り上げ、小鼓に巻かれてあった「締め緒」をほどき、これを後ろに廻すので ⑤これを受け取って四つ折り程度にたたみ、さきほどの扇子と一緒に床几のすぐ後ろに置く。
…要するにこの場合の後見は「楽屋働き」の延長のような、作業をするのであって、小鼓を打つ技術とは無関係なのです。そういうワケで、手順さえ熟知していれば、なにも小鼓の専門家が後見を勤めるのが必ずしも必要ではないので、その日の囃子方のスケジュールなどを考えて、事前に誰がこの後見を勤めるか、小鼓方の本役は考えておき、どうしても囃子方の手が足りない場合にはシテ方、つまり催主に相談があって、地謡が勤める事も窮余の一策としてあり得る、という事です。
ちなみにこの後見、「三番叟」が終わって『翁』が終演するときには、もちろん小鼓方が(このときには大鼓方も)床几から下りて素袍の両肩を入れるお手伝いもしなければならないのはもちろんですが、そのほかにも もう一つ、重要な仕事があるのです。