今回 ぬえはちょうど傷んだ稽古扇が1本手元にあったので、これを使って張り扇を作る事にしました。
前回も書いたのですが、シテ方が使う扇はどうしても張り扇を作るには大きすぎて、まして観世流の尺一扇をそのまま使って作ると巨大張り扇ができあがってしまいます。そこで扇の骨を少し切り落として、九寸強程度のものを作ることにしました。
ところがこれが。。意外に大変な作業でした。観世流の扇の親骨には中啓と共通する三箇所の透かし彫りがあって、扇の寸法を詰める場合にはこの彫りを避けて切り落とさないと強度が落ちてしまう事は容易に想像できました。これを避けて寸法を採ると、今度は扇の柄のうち要のあたり、握りとして少しふくらんだ部分を切り落とさなければならず、そうなるとその部分の成形を別に考えなければならなくなる。。
結局はうまく扇の先端の部分から切り落として張り扇の形はできたのですが、その後も地紙をすべて骨から引きはがして位置を変えて再び接着するなど、かなり面倒な作業が続きました。ぬえの結論としては、やはり稽古扇は舞に使う扇としての役割を考慮して作られているので、張り扇に転用するのには少しく無理はどうしても出てくる、という事でした。やっぱり竹材を削りだして張り扇の芯を新たに作る方がうまくいく予感はしています。次回張り扇を作る時にはその方法を試してみることとしましょう。
さて四苦八苦しながらなんとか竹の芯と地紙を成形して、今回は地紙を少し補強して、それからようやく革でこれを包みます。この作業は意外に易しかった。包んだ革は糸でかがって綴じてゆくのですが、革には微妙な伸縮性があるのです。ですから張り扇の芯を包むよりもほんの少し小さめに革を裁断して、糸で革を緊張させながら綴じてゆくと、この性質のために全体にあまり皺もよることなく、芯をピッタリと包むことができました。「微妙な伸縮性」ここがミソでしょう。予想よりも遙かにキレイに出来上がって、満足 満足~。
張り扇が出来上がったところで、今度は何を作ろうかな~。そんなヒマなお正月も終わってすでに稽古は始動していますが、昨日は白樺の鹿背杖の製作に取りかかりました。
年末の頃に師家では庭木の手入れが大がかりに行われたようで、ある日師家に参上した ぬえは伐採された大量の枝が師家のお庭の片隅に積み上げられていたのを発見しました。ああ、お舞台の前にあった あの白樺。。伐っちゃったのかあ。ところがその中に、枝の太さといい、曲がり具合といい、これは『山姥』に小書がついた場合に使われる「自然木(じねんぼく)」に まさに打ってつけの枝を見つけたのです。
白樺で出来た「自然木」は聞いたことがないけれど、『山姥』の「白頭」に白樺の鹿背杖なんて、ちょっと面白いかも、と思って、ぬえはこの枝を自宅に持ち帰っておいたのでした。杖の部分と握りの部分とをそれぞれ切り出して接合するだけだから工作とはちょっと言えないかもしれませんが、丸木をT字形にキレイに接合するのは結構難しいですよ~。今回も彫刻刀とカンナを駆使して接合部だけきれいに樹皮を剥がし、立体的に接合するように工夫してエポキシで固めて完成。ただ、あとは樹皮に残る小枝を切り落とした痕や接合部を白い塗料で上塗りして全体の色を整える作業が残っています。樹皮の保護のためにつや消しのラッカーを吹き付けようかなあ。
なんだか工作の報告ばっかりで申し訳ありません。張り扇のお話をしていたら、ちょっと能で使われる扇についてお話してみたくなってきました。次回は扇のお話にしようかしらん。
前回も書いたのですが、シテ方が使う扇はどうしても張り扇を作るには大きすぎて、まして観世流の尺一扇をそのまま使って作ると巨大張り扇ができあがってしまいます。そこで扇の骨を少し切り落として、九寸強程度のものを作ることにしました。
ところがこれが。。意外に大変な作業でした。観世流の扇の親骨には中啓と共通する三箇所の透かし彫りがあって、扇の寸法を詰める場合にはこの彫りを避けて切り落とさないと強度が落ちてしまう事は容易に想像できました。これを避けて寸法を採ると、今度は扇の柄のうち要のあたり、握りとして少しふくらんだ部分を切り落とさなければならず、そうなるとその部分の成形を別に考えなければならなくなる。。
結局はうまく扇の先端の部分から切り落として張り扇の形はできたのですが、その後も地紙をすべて骨から引きはがして位置を変えて再び接着するなど、かなり面倒な作業が続きました。ぬえの結論としては、やはり稽古扇は舞に使う扇としての役割を考慮して作られているので、張り扇に転用するのには少しく無理はどうしても出てくる、という事でした。やっぱり竹材を削りだして張り扇の芯を新たに作る方がうまくいく予感はしています。次回張り扇を作る時にはその方法を試してみることとしましょう。
さて四苦八苦しながらなんとか竹の芯と地紙を成形して、今回は地紙を少し補強して、それからようやく革でこれを包みます。この作業は意外に易しかった。包んだ革は糸でかがって綴じてゆくのですが、革には微妙な伸縮性があるのです。ですから張り扇の芯を包むよりもほんの少し小さめに革を裁断して、糸で革を緊張させながら綴じてゆくと、この性質のために全体にあまり皺もよることなく、芯をピッタリと包むことができました。「微妙な伸縮性」ここがミソでしょう。予想よりも遙かにキレイに出来上がって、満足 満足~。
張り扇が出来上がったところで、今度は何を作ろうかな~。そんなヒマなお正月も終わってすでに稽古は始動していますが、昨日は白樺の鹿背杖の製作に取りかかりました。
年末の頃に師家では庭木の手入れが大がかりに行われたようで、ある日師家に参上した ぬえは伐採された大量の枝が師家のお庭の片隅に積み上げられていたのを発見しました。ああ、お舞台の前にあった あの白樺。。伐っちゃったのかあ。ところがその中に、枝の太さといい、曲がり具合といい、これは『山姥』に小書がついた場合に使われる「自然木(じねんぼく)」に まさに打ってつけの枝を見つけたのです。
白樺で出来た「自然木」は聞いたことがないけれど、『山姥』の「白頭」に白樺の鹿背杖なんて、ちょっと面白いかも、と思って、ぬえはこの枝を自宅に持ち帰っておいたのでした。杖の部分と握りの部分とをそれぞれ切り出して接合するだけだから工作とはちょっと言えないかもしれませんが、丸木をT字形にキレイに接合するのは結構難しいですよ~。今回も彫刻刀とカンナを駆使して接合部だけきれいに樹皮を剥がし、立体的に接合するように工夫してエポキシで固めて完成。ただ、あとは樹皮に残る小枝を切り落とした痕や接合部を白い塗料で上塗りして全体の色を整える作業が残っています。樹皮の保護のためにつや消しのラッカーを吹き付けようかなあ。
なんだか工作の報告ばっかりで申し訳ありません。張り扇のお話をしていたら、ちょっと能で使われる扇についてお話してみたくなってきました。次回は扇のお話にしようかしらん。