ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

東北公演、その後(その6)

2008-10-28 02:08:16 | 能楽
え~~、お話が東北公演からかなり脱線してしまいました。。いつもの事かもしれませんですが。。

考えてみれば、もう東北公演から帰ってから1週間以上が経っているんですね~。それからの ぬえは、師家の稽古能、申合に続いて師家の月例公演、伊豆および千葉での能楽講座、さらには自分のお弟子さんの稽古とおさらい会、と、息つく暇もない多忙さでした。明日もまた学校公演があるんですが、それが終われば本当に久しぶりに数日間お休みを取ることができました。ちょっと海のそばで のんびりしてこようと思います。。

そんなわけで、中尊寺 金色堂拝観から話題がそれて、師家の戦前の舞台の跡地の調査の話にまで飛んでしまいましたので、ここらで軌道修正して。。

中尊寺に参詣して、その日の午後には一関市立長坂小学校にお伺いして能楽公演を行い、終演後は秋田県の大館市に移動して投宿しました。この移動距離はハンパではなかったです。なんせ岩手県の南端から秋田県の北端への移動。。それでも先日の北海道での札幌~帯広への移動よりは、高速道路が結んでいる分ずいぶん楽だったかなあ。北海道は残念ながら交通網などインフラの整備が遅れていますね。。経済発展の阻害ともなるだろうし、一刻も早く手を差し延べてあげて頂きたいと思います。。

ところが岩手から秋田への長い道のりは、本当に印象的でした! 東北高速道をひたすら北へ進んでいくうちに日は暮れ。。すると、ぬえら能楽師一行を乗せたバスの車窓からは、左手に雄大な岩手山の偉容が聳え、方や右の車窓の向こうには、見事な満月が昇ります。。こんな幻想的な光景を ぬえは久しく見たことがない。。深山幽谷。。まさに山姥がひょっこりと顔を見せそうな、そんな光景でした。

翌日は北秋田市立鷹巣東小学校の、モダンで明るい体育館での公演、そして終演後は青森県の弘前市へ移動。青森では平川市立竹館小学校で最後の演能を行い、青森空港から帰京いたしました。

これら小学校での公演は、いや~~面白かったですよ! 上演曲『安達原』の鬼女と山伏の戦いの場面では、子どもたちもワキのまねをして数珠を揉む仕草をしていたり、大歓声はあがるわ、今回は師匠がシテを勤められましたが、あ~ ぬえもこういう場所でずっと能を舞っていたいわ~。

それから、この3つの小学校では、終演後の質疑応答で、小学生にしてはかなり高度な質問が出ていたのも印象的でしたね。いわく「そういう声を出すのには何年かかるのか」「その楽器はどれぐらい古いもので、価値はどれほどなのか」。。ここまで来ると大人と一緒。

それから、秋田の小学校での公演では、参観しておられた地元の方の一人が終演後に居残られて舞台設営のスタッフに能について質問をされたようです。スタッフの方は すぐに ぬえに声を掛けてくださって、ぬえがそのご質問にお答えさせて頂きましたが、なんと言うか、うれしい展開ではありました。ぬえは公演旅行中にスタッフの方とも一緒に飲みに行ったりして、その場では ぬえも能楽論を熱く語っていましたから、スタッフの方もお客さまからの質問を すぐに ぬえに回してくださったのでしょう。だんだんとスタッフの方とも一体化していく感じがよいな~ と率直に思いましたですね。そしてまた秋田のこのお客さまも、貪欲に能の中に文化を発見をして、それを吸収しようとしておられる。頭が下がることです。