すみません、更新が滞りまして…ええと、エレーヌが採譜したSP盤について、の続きです。
清水中央図書館に展示されているエレーヌ自筆の『羽衣』の採譜の譜面と、それに並べられた宝生流の『羽衣』のSP盤。これらエレーヌの旧蔵品は、夫君マルセルをはじめすべて関係者による寄贈品ですから、このSP盤がエレーヌの所蔵になっていた事は間違いないでしょう。
それなので、展示されてあったエレーヌ自筆の『羽衣』の譜面は、このSP盤から採譜されたものだとすぐに信じたのですが… どうもそうとばかりは言い切れないようです。
この件について鮒さんと話し合ったのですが、そこで重大な見落としがあったことに ぬえは気がついたのでした。
すなわち、SP盤というのは、アナログ盤の30cmLPレコードと同じ大きさではありますが、収録時間はたったの数分なのですよね。何度となくSP盤のデジタル化作業のお手伝いをしているので、わかりきったはずだったのですが、ついつい、盤面の大きさに惑わされて、収録時間のことを忘れていました。
…つまり、ぬえが何を言いたいのかというと、エレーヌが採譜した楽譜が「風早の~」とワキの登場の場面から始まっている、というのが問題で、この部分が収録されたSP盤をエレーヌが聞いたのであるならば、そのSP盤はダイジェスト版ではなく、素謡全曲を収録したレコードであるはずだ、ということです。
SP盤全盛の当時は、その収録時間の制限や販売価格の問題から、謡曲の録音盤も、素謡であっても全曲を収録するのは大変で、たとえばクセやキリなどの部分謡として発売された場合が数多くあります。『羽衣』の素謡は35分くらい掛かると思いますが、SP盤の収録時間が数分であることを考えると、素謡の全曲を収録するとなると、SP盤にして7~8枚のセットの企画盤であったはずなのです。
そうであるならば、そのセット盤の盤面には『羽衣』という曲名のほかに「一声~呼び掛けまで」のようなクレジットが記されていたり、(一)~(七)~のように連番号が付されているのが普通です。実際にユーザーが盤を掛けて再生する場面では、数枚に分かれた盤を蓄音機に掛ける順番が容易にわからなければなりませんからね。
ところがこの、清水中央図書館に展示されているSP盤にはそういったクレジットはなく、ただ『羽衣』と書かれれているだけです。普通に考えればこのSP盤が素謡の全曲を収録したセット盤の1枚とは考えにくく、部分謡を収録した盤である可能性もある、ということなのです。その場合、曲の冒頭のワキの登場場面だけが選ばれて収録されている事は…ちょっと考えにくいです。…こうしたことから、エレーヌが採譜した『羽衣』のSP盤は、これとはまた別の、セット版のレコードである可能性が出てきました。
…いずれにせよ、まずはこの展示されているSP盤に何が収録されているのか、それを調べなければなりませんね。展示品であるこの盤を再生するのは難しいでしょうが、同じ盤が資料として国会図書館に所蔵されているわけですし、実際に再生しなくても綿密に調査すれば収録内容はどこかに記録されているかもしれません。
もうひとつ、鮒さんは現在、当時までに発売されてエレーヌが入手することができた可能性のある、セット版のSPレコードの記録を調べておられます。これらの調査の結果によって、エレーヌがどの盤を聴いてインスピレーションを得、採譜した音を頼りにエレーヌ版の『羽衣』を作り上げるに到ったか、その道のりを解明することができるかもしれません。
清水中央図書館に展示されているエレーヌ自筆の『羽衣』の採譜の譜面と、それに並べられた宝生流の『羽衣』のSP盤。これらエレーヌの旧蔵品は、夫君マルセルをはじめすべて関係者による寄贈品ですから、このSP盤がエレーヌの所蔵になっていた事は間違いないでしょう。
それなので、展示されてあったエレーヌ自筆の『羽衣』の譜面は、このSP盤から採譜されたものだとすぐに信じたのですが… どうもそうとばかりは言い切れないようです。
この件について鮒さんと話し合ったのですが、そこで重大な見落としがあったことに ぬえは気がついたのでした。
すなわち、SP盤というのは、アナログ盤の30cmLPレコードと同じ大きさではありますが、収録時間はたったの数分なのですよね。何度となくSP盤のデジタル化作業のお手伝いをしているので、わかりきったはずだったのですが、ついつい、盤面の大きさに惑わされて、収録時間のことを忘れていました。
…つまり、ぬえが何を言いたいのかというと、エレーヌが採譜した楽譜が「風早の~」とワキの登場の場面から始まっている、というのが問題で、この部分が収録されたSP盤をエレーヌが聞いたのであるならば、そのSP盤はダイジェスト版ではなく、素謡全曲を収録したレコードであるはずだ、ということです。
SP盤全盛の当時は、その収録時間の制限や販売価格の問題から、謡曲の録音盤も、素謡であっても全曲を収録するのは大変で、たとえばクセやキリなどの部分謡として発売された場合が数多くあります。『羽衣』の素謡は35分くらい掛かると思いますが、SP盤の収録時間が数分であることを考えると、素謡の全曲を収録するとなると、SP盤にして7~8枚のセットの企画盤であったはずなのです。
そうであるならば、そのセット盤の盤面には『羽衣』という曲名のほかに「一声~呼び掛けまで」のようなクレジットが記されていたり、(一)~(七)~のように連番号が付されているのが普通です。実際にユーザーが盤を掛けて再生する場面では、数枚に分かれた盤を蓄音機に掛ける順番が容易にわからなければなりませんからね。
ところがこの、清水中央図書館に展示されているSP盤にはそういったクレジットはなく、ただ『羽衣』と書かれれているだけです。普通に考えればこのSP盤が素謡の全曲を収録したセット盤の1枚とは考えにくく、部分謡を収録した盤である可能性もある、ということなのです。その場合、曲の冒頭のワキの登場場面だけが選ばれて収録されている事は…ちょっと考えにくいです。…こうしたことから、エレーヌが採譜した『羽衣』のSP盤は、これとはまた別の、セット版のレコードである可能性が出てきました。
…いずれにせよ、まずはこの展示されているSP盤に何が収録されているのか、それを調べなければなりませんね。展示品であるこの盤を再生するのは難しいでしょうが、同じ盤が資料として国会図書館に所蔵されているわけですし、実際に再生しなくても綿密に調査すれば収録内容はどこかに記録されているかもしれません。
もうひとつ、鮒さんは現在、当時までに発売されてエレーヌが入手することができた可能性のある、セット版のSPレコードの記録を調べておられます。これらの調査の結果によって、エレーヌがどの盤を聴いてインスピレーションを得、採譜した音を頼りにエレーヌ版の『羽衣』を作り上げるに到ったか、その道のりを解明することができるかもしれません。