新型コロナウイルス感染拡大の影響で休校が長引くなか、いっそ9月入学に制度を変えてしまえば、という意見が出ていますね。今日の衆院予算委員会でも取り上げられ、安倍首相が次のようにコメントしたそうです。
- これくらい大きな変化がある中では、前広にさまざまな選択肢を検討したい。
9月入学についてはさておき、私が気になったのは「前広に」という言葉。聞き覚えがなく、意味がよくわからないのです。
前向きに? あれこれ見て?
いつも使う字引き(集英社国語辞典)には項目がありません。家にある古い『広辞苑』(第1版)には次のようにあります――
- 前広-に【前広に】〔副〕あらかじめ。前以て。
首相はこの意味で使ったのでしょうか。
一応、わかった気にはなったのですが……。
すっきりしないので、ネットで検索してみると、元宮城県知事の浅野史郎さんのサイト『夢らいん』で「官僚の言葉について」という記事がありました。お役人の言葉遣いについて批判的に取り上げておられるのですが、例外的に――
- 外交官の使う官庁用語は、一味違う。昭和の出来事であるが、私が在米日本大使館に三年間在籍した間に、その一端を耳にして以来、気に入っている表現がある。ひとつは、「前広に」。「この件について、ご提案がある方は、前広にお知らせください」といった使い方である。「時間的余裕を持って」というぐらいの意味だが、片や九文字、前広になら三文字ですむ。(後略)
なるほど。霞が関(特に外務省)では「時間的余裕を持って」という意味で使われているのですか。
では、首相がおっしゃったのは「時間的余裕をもってさまざまな選択肢を検討したい」という意味なのでしょうか。
9月入学に制度を変更するのに、これから「時間的余裕をもって」とは言いがたいように、私には思えます。あと4か月しかないのですから。
今のところ、よくわからないままです。この前の、緊急事態宣言の「発出」もそうですが、できるだけ一般に通用する言葉を使ってもらいたいものだと思います。
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