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「路地裏を歩く会」なるパーティとすれ違った。60代から70代の女性たちだ。路地裏はどこに行っても存在するが、どういう見方をするのか、聞きそびれた。
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先日樋口一葉の住んでいた西片を取材した。菊坂台通り(本郷通りから白山通りへ下る道)の中間、肉屋の下あたり。一葉が使ったという井戸が残されている。一葉は細露路を『雨が降る日は傘もさされぬ窮屈さに、足もととては処々に溝板の落し穴あやふげなるを中にして、両側に立てたる棟割長屋、突当りの芥溜わきに九尺二間の上り框朽ちて、雨戸はいつも不用心のたてつけ・・・』明治28年に文芸倶楽部に発表した『にごりえ』の一節である。舗装はされているが、道幅は今でも変わらない。
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肉屋の店先に置いてある椅子に座って1個100円の菊坂コロッケを食べる。お茶を出してくれた。先ほど一葉がよく利用したという伊瀬屋という質屋の前で言葉を交わした女性二人連れがやはりコロッケを頼んで、座り込んだ。埼玉から来たという。まだ歩けるなら根津神社へ出て藪下通りを上がれば森鴎外の旧居跡が、その近くには夏目漱石の旧居跡がありますよ、と案内図を差し上げた。<写真は樋口一葉の旧宅、植え木の先に井戸がある。左の家に住み、その後右側の家に住む。>