情報を制するものは、未来を制する。
古来より情報は、その国の存亡に係る非常に重要なものであった。それは今も変わらない。
湾岸戦争の時、アメリカ軍を主体とした国連軍は、まずステルス攻撃機を使って、イラク軍のレーダー基地を破壊した。同時にイラク全土の通信インフラをも破壊した。
その結果、イラク各地に分散されたイラク軍は、情報が分からずに孤立し、何が起きているのかも分からない恐怖に襲われ、戦うことなく逃亡するケースが続発した。
現代の戦争に於いて、情報はかくも重要な役割を持っている。
そのことを良く理解していたアメリカ軍は、従来の音声情報だけでなく、画像情報のやり取りのできる新しい通信システムに関心を持った。元々は既存の電信通信システムの改良が始まりであった。
やがて音声と文字情報のやり取りが出来る通信システムが欧米の複数の大学、研究所で開発された。そこに目を付けたアメリカ軍が多額の予算を通じて、軍用通信網の開発に着手した。
その後紆余曲折を得て、この新しい通信システムは統合され、1980年代末には技術として確立された。それがインターネットである。
やがて欧州において冷戦が終結すると、平和の配当としてアメリカ軍の有する特殊技術の一部が民間に開放され、払い下げられた。なかでもインターネットは、その便利さから世界中に拡散して、情報革命を引き起こした。
以来30年、今やインターネットは社会インフラとして欠かせぬものとなった。電気、水道、ガス、通信といった社会基盤の管理にコンピューターとインターネットは必要不可欠なものとなった。
同時にインターネットを悪用した犯罪も発生していることは周知のとおりである。既に小説や映画などでは、インターネットが敵対的、破壊的な活動に乱用されて、社会に大混乱をもたらす可能性があることを明示している。
だからこそ、アメリカ政府はシナの巨大IT企業であるファーウェイを問題視した。この会社は普通の民間営利法人ではない。シナの人民解放軍の強い影響下にある組織である。
これはファーウェイに限らないが、以前からシナのIT企業には奇妙な噂があった。噂としてだけでなく、実際に逮捕され、裁判になったこともある。それが欧米企業へのスパイ疑惑であった。
IT技術は開発が大変だが、その反面模倣はやりやすいといった特徴がある。遅れてきた大国シナが覇権国となるためには、IT技術を盗み取り、自前の技術を育てて世界に売り込むことが必要である。
シナの北京政府は欧米があまり力を入れていないアフリカやアジアのIT通信網を、援助の名目で多額の資金を出して構築し、事実上市場を占有している。通信インフラが貧困であったアジア、アフリカにおけるインターネットの普及はシナなくしてあり得ない。
力をつけ、自信をもったシナの次なるターゲットは、ITの本場である欧米である。新しい通信規格である5Gに狙いを定め、格安の値段でこの新通信規格に対応した通信設備を売り込んだ。
だが、この振る舞いがアメリカの警戒心に火を付けた。経済を最優先して考える日本とは異なり、普通の国は国防を第一に考える。ファーウェイの製品には、いざという時にシナが自由に使えるバックドアがあることが判明してしまった。
シナもまた軍事を第一に考える以上、輸出する製品に、自国に有利になる様な仕組みを取り入れることは決しておかしなことではない。特に通信技術は国家の安全にかかわる重要なものである。
シナの人民解放軍と密接な関係を持つファーウェイが、その製品に組み入れた仕組みが、アメリカという虎の尾を踏んでしまった。
戦後の日本人は、敗戦のショックで何事も経済的視点で判断する奇妙な性向があります。今回の事件で、経済よりも軍事が優先する世界の常識をよく認識して欲しいと思います。