ヌマンタの書斎

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安倍首相の辞任

2020-09-04 12:44:00 | 社会・政治・一般

体調が悪そうだなと感じたのは7月ぐらいであった。

どこがと具体的なものはないが、疲れているような様子がTV画面から伝わってきた。それゆえ今回の安倍首相の辞任は、私的にはそう意外ではなかった。

私自身が長年、難病からくる疲労感に悩まされているので、単なる疲労と、病気からくる疲労の違いは身体に刻み込まれている。この苦しいほどの病的な疲労は、心身を休める以外に癒す手段はない。

7年も一国のトップを務めていたのだから、その労苦は相当なものだろう。とりあえず今は、お疲れ様としてゆっくり静養して欲しい。

ところで歴史の評価には半世紀は時間を置くべきだとするのは、近視眼的な評価を避けるためである。従って安倍政権の評価が定まるのは、相当先のことだと考えている。

さりとて思うところがない訳ではない。現時点で私が考える安倍政権の功罪をシンプルに書き記しておこうと思う。

まず外交。これは戦後の歴代総理のなかでもトップクラスの功績だと思う。アメリカとの親密な関係を維持しつつ、ロシアやシナとの関係も歪めることはなかった。そしてなによりもインドとの外交を促進させたことが素晴らしい。

この点については別稿で改めて書きたいと思うので、今回は端折ります。

外交面で功績ある安倍首相であるが、国内、とりわけ経済政策ではかろうじて及第点の凡庸さであることも確かだと思う。安倍内閣成立以降、株価と不動産価格は上昇した。それは確かに功績ではあるが、国内景気はぼんやりとした温い状態で、好景気を体感している国民は、ほとんどいないと思う。

黒田バズーカも不完全燃焼(白川よりはマシ)であり、それ以外にも失敗した景気浮揚策は多い。成功例のほうが珍しいくらいである。ただ、これは高齢化社会となり、欲しい物があまりなく、物資に満ち溢れた先進国特有の構造不況である。安倍政権のせいにするのは少々気の毒だ。

安倍首相という人は、口には出さないが霞が関の官庁に対して相当な不信感を持っている。それゆえに官邸主導型の政治を目指してきた。しかし、官庁の助力なしで国内政治は動かせない。そこで各官庁から首相官邸に役人を出向させて、なんとか官邸主導の政策を実施していた。

これが安倍政治の最大の弱点となってしまった。官邸に集められた若手の官僚たちは理想に燃えていたのは間違いない。しかしエリート特有の現場知らずであった。最近の失敗例として「GO TO」や「アベノマスク」などを上げれば分かり易いと思う。

私は官邸主導自体は決して間違いではないと思うけど、集めた人材の活用に問題が多かった。せめて自民党幹部には根回しすべきであったし、末端の官僚たちとの交流(いわゆる官官接待も含めて、ね)させた上で政策を提出するべきだった。

もっといえば、安倍首相自身が、どちらかといば下々の事情には詳しくない。典型的な富豪の御坊ちゃまであり、日本経済を支える中小零細事業者とは、あまり縁のない人であった。だから細部に目が行き届かなかったのだと思う。

幸いというか、野党もマスコミも現場に疎く、官庁の作成した資料頼みの報道が多いせいで、安倍内閣の弱点を付けなかった。その代りに安直な「森友・加計問題」や「桜の会」に飛びついていたので、安倍首相も対応は楽だったと思う。

馬鹿な野党やマスコミはさておいても、景気低迷に彷徨う日本経済の問題は、地味に安倍首相を追い詰めたと思う。やはり致命傷となったのは、前例のない新型コロナウィルスの対処であろうと私は考えています。

心身共に、この前代未聞の疫病対策に苦しんだ挙句の難病再発であったと思います。

いろいろと課題は残っていますが、戦後最長の内閣として十分に名を残す名宰相であったとも思うのです。今はゆっくりと静養していただきたいと思います。


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