ヌマンタの書斎

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覇権国が倒れる時

2023-01-25 12:22:42 | 社会・政治・一般
人類と称する哺乳類の生息域は、オリエントと呼ばれる地域であった。

少なくとも17世紀まで、世界の中心といえばオリエントである。もちろんユーラシア大陸の東方にはシナ人の帝国があったが、あくまで東アジアであり、またインド亜大陸の文明も限定的な存在であった。

そのオリエントの最後の覇者がオスマン朝トルコであった。首都であるイスタンブールは中東、アフリカ、そしてヨーロッパの主要国の外交官が集い、スルタンと呼ばれた皇帝の宮殿で開催されるパーティに足繁く通い、情報収集に努めたという。

なぜならスルタンの意向次第で世界の動向が大きく変わるからだ。その意味でイスタンブールは世界の首都でもあった。

しかしユーラシア大陸の西端のブリテン島で生まれた産業革命が全てを変えた。オスマン朝の権威は地に落ち、辺境の蛮族に過ぎなかったヨーロッパの国々が帝国主義の名のもとに世界を再分割し、近代と呼ばれる時代が幕を開ける。

だが欧州の勃興だけがオスマン帝国を滅ぼした訳ではない。巨大な帝国の衰退は内部から始まっていた。それが一部の特権階級による富の独占と、帝国を支えてきた中産階級の衰退である。

歴史的センスのある方ならば、これをローマ帝国と同じだと分るはずだ。似たような事例は東の中華帝国でも見られる。帝国の支配が強くなればなるほど、内部で富の独占が進行し、中核たる臣民が没落して内部が崩壊する。

オスマン帝国から権威を奪い取った西欧だが、やはり歴史は繰り返すらしい。

欧州(EU)でもアメリカでも一部の超富裕階級が、富の独占を繰り返し、内部に社会的な矛盾と軋轢が生じつつある。EUでもアメリカでも全体の5%に満たない超富裕階級が法律や制度を都合よく捻じ曲げて富を合法的に奪い取る。

そのせいで、夫婦共稼ぎでも暮らしに余裕が出来ず、納税をしない裏稼業で日々の暮らしを賄う人が増加する。当然に社会に対する不満分子であり、正義と公正さが失われた社会に絶望して、反社会的行為に賛同を示すようになる。

その結果、たいしたことのないトラブルが火付け役となり暴動が発生する。窃盗や強盗が日常化し、治安が悪化してしまう。すると超富裕層は国内の平穏を維持するため強権的な治安機構に依存するが、これは根幹的な対策にはならず、むしろ社会全体の不満は蓄積し、爆発するのを待つばかり。

そうなると、国内の不満を解消するのではなく、国外に怒りを向けるように仕向けるのはいつの時代、どの政府でも同じらしい。

今も続くロシアのウクライナ侵攻などは、ずるずると長く続いているが、ロシアも西側も本気で終結させる様子がない。ロシアは国内の不満分子を徴兵して戦場に送り込んでいるし、EUやアメリカは支援と称してウクライナの戦いを長引かせる。

その戦場の映像を利用して、軍事予算の増額を図るアジアの国も出る始末である。幸い古い兵器を援助と称してウクライナの戦場に送り、新兵器を更新する絶好の機会でもある。そのための財源は増税とインフレが手助けしてくれる。

今はまだ核兵器大国であるアメリカとロシアが均衡状態を保っているが、もしロシアがウクライナ処理を間違えるとユーラシア大陸に戦乱の嵐が吹き荒れる可能性は極めて高い。中心的権威の没落は、地方の不満分子を活性化、すなわち中央アジアで戦乱が発生する可能性が高まる。

同時に覇権国アメリカは国内での富の不均衡を維持するため、外交(戦争)で国内の不満を逸らす手段をとる可能性が高まっている。別に戦争で勝てなくても良い。ただ国内の不満をそらすことが目的なのだから、無理に勝つ必要はない。

幸い21世紀の世界には戦争の種が沢山ある。民族問題であり、経済格差の問題であり、そして水や食料の偏在、化石燃料の枯渇問題とより取り見取り。

その意味で、岸田内閣の増税、軍事支出増大は方向としては正しい。問題はその中身が頓珍漢なことだろう。まァそれも分からぬ軍事音痴の平和バカが多数派なので自業自得ですけどね。

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