1980年代後半、私は病院と自宅を往復するだけの人生を送っていた。
たまに入院もしていたが、家で巣篭りというか引きこもっていることが多かった。時間はいくらでもあったが、体力がなかった。それなりに衰弱もしていたが、なによりも免疫力が低く、人込みなんて怖くていけなかった。なにせ電車に乗っていて同じ車両に咳をする人がいれば、その日の夕方には感染して発熱して寝込んでいたほどだ。
サッカー部の部員と間違えられるほど太かった大腿筋は痩せ細り、上半身は骨と皮。別にマッチョ願望はなかったが、長年の闘病生活で病み衰えた身体は私の劣等感そのものだった。だからこそだと思うのだけど、この頃はけっこうマッチョな俳優が主演する映画を良く観ていた。
ただ風邪などの感染症が怖かったので、映画館には行かず、もっぱらレンタルビデオ屋で借りて自宅のTVで観ていた。必然的に観る映画は偏ってしまう。シルベスター・スタローンの「ロッキー」が定番だが、アーノルド・シュワルツェネッガーの「コマンドー」や表題の「プレデター」も何度も借りて観たものだ。
言っちゃ悪いが、シュワルツェネッガーは演技力の幅が狭い。そのせいか割と無口な作品が多く、その中でも最も成功例ではないかと思うのが「プレデター」だ。演技力の幅が狭いと書いたが、反面その鍛え上げた肉体を利しての表現力は凄い。何気ない動作に筋肉が色を添えてくる。
鋭い眼光よりも、切れのよい筋肉の脈動が下手な演技を超越してしまう。この特異な表現力はシュワルツェネッガーの武器としか言いようがない。後年彼は努力して演技力を上げようとするが、正直上手くいったとは思えない。むしろその逞しい肉体、鍛え上げた筋肉のほうが遥かに有言であったと思う。
筋肉信仰なんてないに等しかった私だが、自らの病み衰えた肉体を痛感していただけに彼の筋肉の凄さには憧れを禁じ得ませんでした。事実上シリーズ化された「プレデター」ですが、シュワルツェネッガーの出演はこれ一作。でも、これがプレデター・シリーズの最高峰だと私は考えています。
大藪春彦のヒーローと狼男が戦うみたいな、SFと冒険小説が好きだった私には刺さりました!
シュワちゃんの出ない続編とかも好きでしたが、
そうそう続編って最初にラテン系ギャング組織が何者かに殲滅されたニュースから始まってましたが、あの続編で描かれたラティーノと麻薬とギャングがまんま実現しちまいましたね。
麻薬とアメリカ、ラテン系マフィアはウィンズロウが書いてますね。まだ未読山脈に埋もれていますが、いずれ読むでしょう。