この季節になると鈴虫が鳴いている記憶が蘇る。
おばあちゃんの趣味は、鈴虫を飼うことであった。あばあちゃんの家の廊下の片隅には、ちょっと大きめの壺が置いてあった。その壺で鈴虫を育てていた。
大体、梅雨の前あたりに孵化して、夏には鳴きだす。初めの頃は鳴き方が下手だが、次第に上手く鳴くようになる。秋が終わる前には自然と静かになる。上手くいけば、産卵して越冬することもある。
ちなみに餌は胡瓜やナスを与えていたが、雑食性で野菜だけだと共食いを始めるので、時折焼いたフナなどを与えていた。ちなみに、そのフナは私が用水路などで捕まえてきた奴だ。なんで焼くのかというと、生の死体だとコバエなどが湧きやすく、また悪臭も漂うからだと教わった。
おばあちゃんが亡くなってからは、鈴虫を飼うことをおじいちゃんはしなくなってしまった。また一人では不安だと母が同居するようになったが、生き物を飼うことにあまり積極的な人ではなかったので、鈴虫のことは忘れ去られてしまった。
先日のことだが、私が銀座で働いていた頃、近所で事務所を開業していたA先生が亡くなったとの報が入った。A先生の趣味が、鈴虫の飼育であった。何かの時に、雑談の話題として鈴虫の思い出を話したら物凄く喜んだのがA先生だった。
それから一時間以上に渡り鈴虫談義を聴かされたのには参った。あとで師匠のS先生に愚痴ったら、まさかあなたが鈴虫を飼った経験があるとは思わなかった。事前に知らせておけば良かった、A先生の前では鈴虫の話はタブーだと言われた。
もっと早く教えて欲しかったが、後に私が経理部長になった時、支部幹部であったA先生にはあれこれと世話になったから随分と助かったものだ。A先生は引退して数年経つので、遠方の自宅までご焼香に伺るほどの付き合いでもなかった。でもお香典ぐらいは送りますかね。
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