午前5時、けたたましく目覚ましが鳴りだした。上のベッドでゴソゴソと音がすると、克ちゃんがあくびをしながら着替えを始めた。土曜日の朝だが、克ちゃんは4直3交代勤務なので、曜日に関係無くご出勤だった。「わりぃ。起こしちまったか?」「いや、構わんよ。吉田さんは?」あくびをしながら僕が聞くと「残業だろうな。まだ戻ってないよ」と返事が返って来た。3人3様の時間帯で生活し始めて1ヶ月近くが経過していたが、3人揃って休みの日と言うのは今もって無い!「お前さんは、早番オンリーだけど、懐具合はどうなんだ?」と克ちゃんが言う。「それなりさ。克ちゃんの稼ぎには及ばないよ」と言うと「夜勤は儲かるぜ!今からでも遅くはねぇから、配置転換を希望したらどうだ?」と言われる。「そうしたのは山々だが、こっちにも“大仕事”が振られて来てる。それを放り出すのは認められないだろうな。もう、完全に取り込まれてるからな!」「第3次隊の連中もそうなる運命だ。知らぬ内が花さ。現実は甘くないって事を伝えて置けよ!どっち道、俺は歓迎会に顔は出せないからな」と克ちゃんは自嘲気味に言う。「ああ、そこら辺はきっちりと言っとくよ。向こうの常識は通用しないってな」「頼んだぜ!じゃあ、俺は行ってくる!誰が入って来るか知らねぇが、時間帯がズレてるってきちんと説明してくれよ!俺達が寝てる脇で騒ぐな!って釘を刺しといてくれ!」と言うと克ちゃんは仕事に向かった。「さて、寝直すか」とベッドに横になったところへ「Y、起きろ!お姉さま方からお呼び出しだぞ!」と田尾がシーツを剥ぎ取った。「インターフォンが入ってる。5番に出ろ!」と言う。「朝から何の騒ぎだ?今日は何も予定は入ってないぞ」と止む無く起き上がると「予定は向こうが決めるらしいな!岩崎が待ちくたびれてるぜ!」と鼻で笑われる。1階へ降りて5番のインターフォンに出ると「Y、昨日はどうだった?千春を満足させられたかな?」とクスクス笑っている岩崎さんの声が聞こえる。「それは、本人に聞いて下さいよ。日付を跨いでの帰りだったから、まだ眠いんですが・・・」と言うと「精気をすっかり抜かれた様ね!千春はどんな感じだった?」とたたみかけられる。「“ちーちゃんと呼んで”って言われまして・・・、疲れましたよ」と言うと「えっ!Y、今“ちーちゃんと呼んで”って言ったわよね!マジなの!」と声のトーンが跳ね上がった。「ええ、ご本人の強い希望でそうなりましたが、どうかしました?」「千春が“ちーちゃん”を言い出したとなると、彼女本気で奪いにかかってる証拠よ!千春が本気になったとなると、ヤバイ事になりそうだわ!また、“山口組の抗争”が勃発するわよ!それに、あたしの描いた構図にも狂いが出るの!Y、悪いけど非常招集よ!直ぐに支度して出て来てちょうだい!朝食を食べながら作戦会議よ!30分後に迎えに行くから急いでね!」と言うとインターフォンは切れた。「寝ても覚めても暇は無しか」僕は急いでシャワーを浴びると、寮の玄関前に急行するハメになった。
待機していたスカイラインに乗り込むと、岩崎さんは急発進をかけた。後部席には永田ちゃんと実里ちゃんも居た。「おはようございます」と言うと「Y先輩、実にヤバイ事になりましたよ!」と永田ちゃんが深刻な顔で言った。「“ちーちゃん”が出たと言う事は、予定外のハプニングじゃなくて、実に危険なサインなの!まずったわ!千春の心を読み違えるとは、迂闊だった!」と岩崎さんも唇を噛んでいる。僕にはさっぱり分からないが、彼女達にすれば一大事なのは間違い無さそうだ。車は海岸沿いの喫茶店に突っ込んで停まった。ボックス席で朝食をオーダーすると「Y、確認なんだけど、千春は“ちーちゃんと呼んで”の“範囲”を指定したの?」「ええ、“2人だけ”になった場合に限りと言われてますが」と言うと3人は一斉に安堵の溜息を洩らした。「指定されたなら、まだ手は残されてるわね。みんなの前で“ちーちゃん”が横行したら、血を見るだけでは済まないのよ!全てが崩壊するかも知れないの!千春が“ちーちゃん”を許可するって事は“誰よりも信頼するわよ!あたしを自由にしていいわよ!”って意味なのよ!悪いけど迂闊に“ちーちゃん”とは呼ばないでね!」と岩崎さんはコーヒーを飲んで言った。「それにしても、厄介な事には変わりがありませんね!“ちーちゃん”が出た以上は、これまでよりも神経を使わなければなりませんから!」と永田ちゃんも言う。「男性に対しては、初めてじゃないですか?」と実里ちゃんが言うと「そうなのよ!しかも、相手がYでしょう?どうやって封じるか?頭が痛いわ!」と岩崎さんも応じた。「“ちーちゃん”を言い出したのは、千春先輩ですが“イエローカード”なんですか?」と僕が聞くと「“レッドカード”なの!“Yと結婚します”と同じ意味よ!だから、困ってるのよ!」と岩崎さんに思いっきり釘を打たれる。「しかし、知り得ているのは、Y先輩と千春先輩とあたし達だけです。この中で封印してしまえれば、実害は免れませんか?」と実里ちゃんが言う。ちょうどモーニングセットが届いたところだ。「そうね。この中で封印してしまえれば、最善なのよ。でも、代わりの手も考えないと千春が爆発しかねないわ。さて、どうやって口封じに持ち込もうかしら?」3人はしばし思案に沈んだ。「千春先輩が納得した上で、“ちーちゃん”を封じる・・・か。まずは、公式の場では言わない事!これは当然ですが、千春先輩とはどう折り合います?」僕が言い出すと「Yには悪いけど、明日も千春の“生贄”になってもらうしか無いわね!果実で釣り上げてから、“ちーちゃん”を限定的にしか使わない様に説得するしか無いでしょう!千春に言い聞かせるのは、あたしがやるとして、実里と永田ちゃんはYの口元に注意してもらう。これしかないわ!」「でも、Y先輩なら口が滑る心配はしなくてもいいのでは?」と実里ちゃんが言うが「万が一に備えるのは、王道よ!Yだって完璧では無いの。監視の目は必要だわ!」と岩崎さんは主張した。女の子達は殊更に気を遣う。針1本でも見逃すつもりはない様だ。「Y、千春から連絡させるから、明日は予定を入れないでくれない?何事もこの先の平和のためよ!千春のワガママに、もう1日だけ付き合ってあげて!そうすれば、実害が出ない様に封印するから!」岩崎さんはそう言って釘を打った。「分かりました。平和のためなら、何でも致しましょう」と息を殺して返した。「さあ、行動開始よ!でも、ちょっとだけ遠回りしてから戻ろうか?Y!」岩崎さんがキーを投げて寄越した。「じゃあ、また、最速記録を叩き出しますか?」と僕が言うと3人が微笑む。こうして、朝の騒動は幕を閉じた。寮に帰るとトラックから大量の荷物が搬入されていた。いよいよ、第3次隊の受け入れが始まったのだ。
部屋に帰り着くと、吉田さんは眠っていた。そーと、必要な物品を揃えると、僕はずっとやりたかった仕事にとりかかった。国分に来てから僕は“ワープロ”を手に入れていた。欠勤届や早退届の類は、原本を使われると新たに作ってもらうのに、手間と時間を必要とした。コピーの原本を複数作成出来れば、余計な心配をする必要もなくなる。時間はたっぷりあるのだから、こう言う時間にまとめて作成するには持ってこいだった。フロッピーにデーターを保存すると、感熱紙を使って試し刷りをして行く。仕上がりは順調だった。これで、コピーを大量に取れば、しばらくは心配することも無いだろう。昼前になったので、作業服に着替えて社食へと歩き出した。しばらくすると肩を叩かれた。「久しぶりだな。お前さんが週末に居るとは、珍しいな」と長老の田中さんが言った。「そうですね。“優しいお姉さま方”にずっと誘われてましたからね」と言うと「“薩摩おごじょ”は豪快だな。酒も強いし話も上手い。ウチは4人だが、Yのところは何人居る?」「年齢を問わなければ50人居ますよ。半分はパートさんですがね」「花園で勤務か!羨ましいね」「いばらの道ですよ。強烈な“おばちゃん達”と渡り合うには“通訳”が必要ですから」と言うと田中さんは噴出した。「確かにそれは分る!半分も理解出来ればいい方だ。今度、着任する連中も同じ苦労を味わうハメになるな!」と言って笑った。「勤務は?」と聞くと「夜からだよ。昼間起きてないと寝れないから、仕方なくこうしてるだけさ」と返して来た。あれこれと話して昼食を食べ、寮に戻るとダンボール箱の移動を手伝った。女子寮に運ぶダンボール箱は結構な量があった。一汗流して談話室で休んでいると、インターフォンが鳴った。誰も居ないので仕方なく出ると、相手は千絵だった。「Y先輩、これから空いてますか?」「ああ、今のところは空いてるがどうした?」と言うと「買い物に付き合ってくれません?買い溜めするから、荷物持ちお願いしてもいいかな?」と言うのでOKすると「じゃあ、15分後に車付けますからお願いします!」と嬉しそうに言った。そそくさと着替えて、財布と免許証を持つと玄関を出る。千絵のマーチは既に横付けされていた。「運転任せます!」と言うので、マーチを市内に向けて走らせる。「何を買うか決めてあるのか?」と言うと「日用品と食料品だから、2ヶ所に行くわよ」と明るく笑って左手に右手を重ねて来る。“千絵となら未来が見えるのかな?”とフッと思った。同じ事を考えていたのか分からなかったが、千絵は横顔を見て「毎週、こうして買い物に行くのが夢よ。明るく楽しい家庭を築きましょう!」と言った。「いつからにする?」と聞くと「明日からでもいいよ。あたし、待ってるから!」と力強く言った。千絵の笑顔が眩しかった。
日曜日、赤いスタリオンは、錦江湾の東沿いを南下して、佐多岬を目指していた。「昨日、恭子に散々怒られたわよ!“大奥取締役が抜け駆けしたら、何も意味が無いでしょう!”って力説されて、延々とお説教!でもね、あたしは“一番槍”を取るわよ!見事に男子を挙げるからね!」ちーちゃんは挫けてはいなかった。2人だけの時は“ちーちゃん”と呼ぶが、公の場では今まで同様に“千春先輩”と呼ぶ事で合意した様だが、彼女は意欲満々で助手席に座っていた。デニムのミニスカートにチェック柄のタンクトップ。ノーメイクだが、肌は透き通る様に白い。明らかに“連れ込む”算段だろう。化粧道具を持参しているが何よりの証拠だ。問題は“いつどこで仕掛けて来るか?”だった。何故なら、ちーちゃんの右手は、既に僕の下半身を触っているからだ!「ちーちゃん、余り刺激しないで下さいよー」と言うが「Yの息子は良く知っておる。良いではないか!早くあたしの元へ来るがいい!」と笑っている。これは、半分拷問だ!恐らく、仕向けたのは岩崎さんだろう。条件提示の段階で、ちーちゃんの要求を飲んだ結果がこれなのだ。朝からこの調子では、先が思いやられる!鹿屋付近を過ぎると、対向車線から車が来るのも少なくなった。「Y、あそこに停まってよ」ちーちゃんが路側帯を指した。鬱蒼と枝が茂っている中へ車を停めると、ちーちゃんは襲い掛かって来た。唇を重ねている間に助手席が倒されて、ベッドの代わりになった。「Y-、おっぱいちゃんだよ」と言ってブラのホックを外すと、豊満な乳房に触らせる。巧みに体をくねらせると、スカートを脱いでパンティに僕の手を持って行く。湿り気を帯びているちーちゃんのハンティの中に手を入れてやると、嬉しそうに声を上げ始める。「お願い、早くしようよー」知らぬ身体ではない。ちーちゃんの中へと息子を入れていくと、たちまち喘ぐ声が高まった。「あん!もっと・・・、いっぱい・・・突いてちょうだい!」ちーちゃんは首に腕を巻き付けると、何度もキスをしながら突きをねだった。猛然と突きを入れてやると「あー・・・・、あーあー・・・、イク・・・あたし、いっちゃう!」と腰をくねらせた。ありったけの体液を注いでやると、痙攣しながら1滴も余さずに吸い取った。「気持ち良かった。Y、ティシュ取って」と言うと、ちーちゃんは溢れる体液を拭き取り、僕の息子も拭いてくれた。「抱いて」と言って膝に座り込むと、ピッタリと密着して「出来るといいね」と妊娠を願う。その表情は真剣そのものだ。「Y、このパンティあげるよ。濡れちゃったし、着替え持ってるから」ちーちゃんはあっけらかんと言う。この底抜けの明るさこそ、ちーちゃんの魅力だろう。どうにかして、お互いに服を着ると再び車を走らせる。佐多岬ロードパークまでは、まだ先があった。だが、ちーちゃんは我慢が続かなくなってしまったらしい。「Y―、もう1回しようよ!」と盛んにおねだり大作戦を展開し始める。「しょうが無いなー!」と諦めると急遽、鹿屋へ転進してモーテルを探す。やっとの思いで空き部屋を見つけると、ちーちゃんは直ぐに部屋へ僕を押し込んでから、服をもどかし気に脱ぎ捨てて、襲いかかって来た。応戦しつつ、後ろから猛然と突きを入れてやると、たちまち理性をかなぐり捨てて「もっと・・・、もっと・・・、いっぱい突いてちょうだい!そうよ・・・!もっと激しくして!」と喘ぎながら言って、自らも腰を動かし始めた。身体を入れ替えて正面から突くと「気持ちいい・・・!中よ・・・!中に出して・・・!お願い!」と盛んに言って脚をクロスさせて、逃さない態勢を取った。大量の体液を注いでやると「気持ちよかった。Y,頑張ったね」と言ってから、僕の左側に寄り添うと胸元に顔を埋めて目を閉じた。ちーちゃんは、スヤスヤと眠りの世界へと入って行った。乱れた髪を直してやりながら、寝顔を見るとカワイイ顔をしていた。シーツでそっと覆い隠すと、もう一度寝顔に見入る。女の子の寝顔なんて滅多に見られるモノじゃないので、しばらく観察していると、ちーちゃんが現実の世界へ戻った。「ごめん!あたし、今まで寝てた?」「うん、スヤスヤと」「どうだった?あたしの寝顔は?」「可愛かったですよ!寝言を除けば」と言うと「何ていったの?教えなさいよ!」と馬のりになって問い質す。豊満な乳房に手を伸ばして、乳首に刺激を加えてやると「ダメよー!また、したくなっちゃうー!」と身体をくねらせた。ちーちゃんも、僕の息子に触ってパワーを入れようとし始める。「元気にしてあげる!だから、もう1回頑張ってよ!」ちーちゃんは、舌を使って息子にエネルギーを送り込んだ。「今度は、あたしが上よ!あっ・・・、大きい・・・、Yのが根元まで・・・入ってるよ!じゃあ、動くね」と言うと、たちまち理性をかなぐり捨てて、喘ぎ声を出し始める。下から突き上げてやると、悲鳴に似た声をあげて「もっと・・・、もっといっぱい・・・突いて下さい!・・・突いて下さい!」とねだった。再度、背後を取ると猛然と突きを入れてやる。「いい・・・、気持ちいい・・・!あたし・・・、イク、いっちゃうよー!」ちーちゃんは絶頂に登りつめた。同時に体液が注がれる。ちーちゃんは、ベッドに横たわると、僕の体液を指ですくってホールへと押し込んで行く。「気持ちよかった。これで妊娠出来るかな?あたし、Yの子供欲しいの!」と言う目は真剣な眼差しだった。それからは、バスルームでシャワーを浴びながら、互いにボディソープを塗り合って遊び出した。バスタブに湯を張ってから、2人してゆっくりと浸ると「お腹が大きくなる前に、ドレスを着たいから今回は期待してるのよ!絶対に当てるからね!」ちーちゃんは、その気満々だ。「Y,あたしを置いて行くな!妻として何処までも共に歩むからさ!」抱き着いて来るちーちゃんを僕は優しく抱きしめた。結局は、もう一度の熱戦をして、佐多岬ロードパークには行かずに、国分の街へと帰ったのだが、ちーちゃんの機嫌はすこぶる良くなり、ちーちゃんと呼んで問題は無事に決着したのだった。「アンタ、相当に頑張った見たいね!千春の晴れやかな顔を見れば一目瞭然!Y,お疲れ様でした。次は、あたしの番だから、覚悟してなさい!」夕方に入ったインターフォンで岩崎さんが言った。「少しは、休ませて下さいよ!」と言ったが「ダメよ!大奥の掟は厳しいの!正妻の顔は立てなさい!」と敢え無く撃沈の浮き目にあった。「こりゃ、痩せるな。しっかり食べないと体力が続かない」僕は作業服に着替えると社食で目一杯食べて、翌日に備えた。
月曜日、月が代わって6月。南九州一帯の梅雨入りは、間近に迫っていた。全体朝礼に備えて整列していると「Y,昨日はありがと!」と千春先輩が後ろから抱き着いて来た。「はい!そこまでよ!千春、Yは共有財産なのよ!控えてちょうだい!」と岩崎さんに引き剥がされる。「Y,結局、何試合したのよ?」彼女は入れ替わり際に囁いた。僕は黙して指を4つ立てた。「ボクシングのタイトルマッチをしてから、アメフトの試合に出た訳ね。分かったわ、今日は仕事で無理はさせないから!」と言って列に並ぶ。延々と続く朝礼を乗り越えて、おばちゃん達との格闘も済ませると、1日はあっと言う間に過ぎ去った。「Y先輩、帰りますよ!」と千絵が呼びに来る。寮に向かって歩き出すと、後ろから第3次隊、50名が着いて来る。「道を譲るよ」と僕が言うと左側に寄って、隊列を先に出させた。数名が僕に気付いて手を上げた。「Y先輩、お知り合いですか?」と千絵がボケをかます。「全員が知り合いだよ!来月に第4次隊が着任すれば、今回の派遣隊全員が揃う。先月に着任したのを忘れたか?」と返すと「あっ、そうか!でも、Y先輩は元々居た様な気がするんです」と永田ちゃんが言う。「それだけ、Yの存在感は大きいって事よ。今回も誰か配属されるのかしら?千春、何か情報は?」「今のところ無し。ただ、レイヤーとディップで駆け引きしてるのは確か。押し付け合ってる感じらしいわ」と不穏なニュースを聞いた。「まあ、明日になれば分かるさ。今晩は、ヤツらの出方を伺うとしましょう!」僕等もゆっくりと寮へと歩き出す。「今回は、女の子が多いのが特徴的だよね。女子寮も久々に満杯になるのよ。各部屋へ分散するけど、どんな子が来るのかな?Yを付け狙う子は居そう?」岩崎さんが心配気味に言う。「厄介なヤツは居ませんよ。例え居たとしても、これだけ厳重にガードされてるんですから、付け入るスキはありませんね!」「そうだといいけど、予防対策はしっかりと取りますからね!」と女性陣は奪取されぬ様に厳戒体制を敷いている様だ。「好きな様にして下さい。どの道、みんなバラバラの時間帯に放り込まれるんです。すれ違う暇すらありませんよ!」僕は差して気にもしなかった。寮ですれ違う事でさえ稀な事なのだから、己の事で手一杯になる明日からの生活で余裕は無いはずだ。寮の玄関先で「また明日ねー!」と手を振り千絵達は女子寮へと入って行った。田尾と僕もそれぞれの部屋へ急いだ。誰が来るのか?皆目見当が付かないからだ。克ちゃんが爆睡中だし、吉田さんもTVの前で寝ている。部屋のドアには何も表示が無い。「セーフか?」と思っていると、ゴソゴソと音が聞こえた。「よお!」と言って現れたのは、同期の鎌倉だった。慌ててヤツの口を塞ぐと「静かにしろ!寝てる連中に袋にされちまう!ここでは、みんな違う時間帯で生活してる。騒いだらタダじゃあ済まない。手伝うから静かに運べ!」と言って荷物を運んでやる。吉田さんも起きてくれたので、鎌倉の荷物運びは、直ぐに終わった。「ベッドは僕の上を使え。細かい作業は、克ちゃんが起きる午後7時以降にしてくれ。どの道、寮長からの説明会だろう?」と言うと「お前さんは上がりか?」と言うので「僕は早番オンリーだが、吉田さんは3交代、克ちゃんは4直3交代だ。残業だってバンバンあるから、定時上がりは稀なケースさ!」と説明会をしてやる。「思ってる以上に過酷だな。コンビニはどこだ?」「無いよ!向こうの常識は通じないんだ!それから、調味料も丸で違うから、ここの味に慣れるまでは味噌と醤油は節約するんだな。ちなみに、醤油味と塩味のラーメンは無いから、覚悟して置け!」と釘を刺した。「マジ?!そんな中でどうやって生きてくんだよ?」「“住めば都”だろう?大丈夫だ。慣れればどうって事は無い」と吉田さんも言う。「さあ、談話室へ行け!詳しい話は、それからだ!」鎌倉は肩を落として階段を降りて行った。「最初はあんなもんさ。その内慣れるだろう。後の世話は頼んだぞ!俺達は仕事があるからな」と吉田さんが言う。「鎌倉で良かった。アイツなら妙な事はしないから、安心ではありますよ」「ああ、ヤツなら直ぐに女の子とツルんで遊び回るさ。お前さんの様にな!」「お姉様方に遊ばれてるんですが?」「同じだろう?」「違いますよ!」僕等は意見の相違を言い合った。時を同じくして、談話室でも言い合いは始まっていた。そして騒ぎは僕にも降り掛かって来た。「Y,助けてくれ!美登里が騒いでるんだ!鎮圧に手を貸してくれ!」田中さんが青ざめた顔でやって来た。「“緑のスッポン”がですか?!何故ヤツが国分に?」「直前になって入れ替えがあったんだ。本来なら向こうに釘付けになるはずだったのに、やむを得ない事情で送られるハメになったらしい。ともかく火を消すのに人が足りないんだ!何とか封じ込めるしかあるまい!」田中さんも唇を噛んでいる。1階へ降りると、激しいやり取りが聞こえた。「あたしは、不条理を指摘しただけです!!男子寮に空き部屋があるなら、そこを使わせて下さい!バラバラにされたら、連絡も容易には付きません!変えて下さい!!」美登里の金切り声は、相変わらずキンキンと響く。「ともかく、連れ出そう!Y,このままでは、他の連中の迷惑になるだけだ!行くぞ!」僕と田中さんは、素早く美登里を捕捉すると、有無を言わさずに談話室から屋外ヘ引きずり出した。
「離してよ!何をするの!」美登里は抵抗するが、僕と田中さんの手で、寮の外ヘ連行された。「初めに言って置くが、“郷に入れば郷に従え”と言うだろう?ここは、国分なんだから国分のルールに従うのが筋だろう?自己都合を押し付けて、みんなを困らせるな!」田中さんが、いつになく語気を強めて、美登里を黙らせる。「お恥ずかしいったらありゃしない!部屋割り1つであの騒ぎか?信頼を得るには、黙々と努力を積むしか無いが、失うのは一瞬でおじゃんさ!第1次隊と2次隊のみんなの顔に泥を塗る真似は許さんぞ!立場をわきまえろよ!」と僕も半分脅しをお見舞いする。「でっ、でも、各部屋にバラバラにされたら、連絡も取れなくなります!納得出来ません!大体、事前に根回しをして無いなんて、信じられない!みんな、受け入れ準備すらして無いじゃありませんか!無責任過ぎます!」美登里は悪びれる素振りも見せずに言い返した。「田中さん、向こうに連絡して強制送還の依頼をして下さい!これでは話になりませんよ!君は帰った方がいい。協調性の無い自己中心的な考えは通じないんだ!旅費は出してやる!だから帰れ!」と美登里を突き放した。田中さんは早速、O工場に電話を入れに行った。「そんな命令は無効です!不条理に立ち向かって何が悪い訳?」「アンタの理論では不条理かも知れないが、僕達には不条理とは見えないぜ!そもそも軒先を貸してもらうんだ。ありがたくお世話になるのが、普通じゃないか?」「それは男性だから言えるんです!女性の立場に立って、考えてくれなければ困るんです!」議論は平行線を辿ったままだった。“緑のスッポン”は石橋を叩き壊しても渡らない頑固者だ。田中さんが「美登里、総務部長が呼んでる!電話に出ろ!」と呼びに来た。美登里は、仕方なく受話器を取る。「Y,アレどう言う事?」千春先輩が聞いて来る。彼女は寮生会の幹部でもある。「見ての通りの頑固者ですよ!自分の我が通らないと、気が済まない悪癖があるんですよ。協調性の欠片も無い“鼻摘まみ者”で通ってます。すみませんね。皆さんの気分を害してしまい、お詫びのしようもありません。寮長さんに頭を下げて来ます。田中さん、いいですか?」「済まんが頼む!後で、1次隊と2次隊の隊長も行くと伝えてくれ!」「そんな!Yが土下座する必要は無いのに!あたしが取りなすから、止めときな!Yの責任にされちゃうよ!」千春先輩は止めに入ろうとするが、僕は聞かなかった。憮然とした表情の寮長さん達に詫びを入れて土下座を繰り返した。第3次隊の連中も必死になって詫びを入れ始める。「分かりました。もうその辺で頭を上げて下さい。Yさんに、こんな事されたのが知れたら、私が吊るされますよ!そうでなくても、現に睨まれてますから」と寮長さんは、慌てて僕の土下座を止めた。女子寮の幹部達が、僕を助け起こすと「Yの責任にしないで!やむを得ない事情があったんだからね!」と千春先輩が言い放った。「それは分かってるさ。彼が、どれだけの信頼を勝ち得ているか?を考えれば、女子寮の意向は無視出来ない。彼にかかっている期待と仕事も含めれば、罪に問える訳ないよ!」と寮長さんは言って、女性陣の追求を逃れた。「Y、ちょっといいか?」田中さんが呼びに来る。美登里はうつむき加減で、受話器を握りしめていた。「総務部長が、話たいそうだ!代われ!」僕は受話器を握りしめて話に耳を傾けた。美登利が、派遣隊に加わった経緯から説明されたが、現実に美登里が引き起こした“騒動”に話が及ぶと、総務部長の声は上ずり氷漬けになった。「信頼関係を一瞬で破壊されたんです!明日中には、国分全体に話が拡散するでしょうし、我々も釈明に追われるでしょう!Oの恥を晒す真似は許されません!部長!美登里は引き上げにすべきです!」と僕は釘を打った。「Yからそう言われると、無下には出来んな。お前さんの評価は、群を抜いて高いし期待も大きい。ウチのエースが無理だと言うなら、従うのが筋だろう。分かった!高山美登里は、引き上げとする!代替え要員は、1週間以内に派遣する。工場長、それで宜しいですか?」どうやら、会話はオープンマイクで聞いていたのだろう。工場長は、即断で引き上げを了承した。「詳細は、これから国分の方と詰めるが、そちらに迷惑をかけるつもりは断じて無い。田中さんにもそう伝えてくれ!Y,済まなかったな。大変だろうが、頑張ってくれ!」と言うと電話は切れた。「どうだ?」詫びを入れに行った田中さんが戻った。「引き上げが決まりそうです。O工場の恥は晒せない。工場長も同意した様です。我々に迷惑はかけないから、安心しろと言ってました」「やはりそうか!美登里、責任は取れ!我々の顔に泥を塗った罪は重いぞ!」彼女は蒼白で頷いた。寮長さん達の説明会が終わると、3次隊の連中が談話室から出て来た。一様に美登里を睨み付ける。1人の子が美登里の手を引いて、女子寮へ向かった。「“緑のスッポン”を派遣した方が間違ってるんだ!」「Y,済まなかったな!」男達は僕の肩を叩いて言った。「先が思いやられるな。これで終わりとは行かんだろう。爆弾を抱える覚悟はして置こう!」と田中さんは言った。実際、騒動はこれで終わらなかった。
待機していたスカイラインに乗り込むと、岩崎さんは急発進をかけた。後部席には永田ちゃんと実里ちゃんも居た。「おはようございます」と言うと「Y先輩、実にヤバイ事になりましたよ!」と永田ちゃんが深刻な顔で言った。「“ちーちゃん”が出たと言う事は、予定外のハプニングじゃなくて、実に危険なサインなの!まずったわ!千春の心を読み違えるとは、迂闊だった!」と岩崎さんも唇を噛んでいる。僕にはさっぱり分からないが、彼女達にすれば一大事なのは間違い無さそうだ。車は海岸沿いの喫茶店に突っ込んで停まった。ボックス席で朝食をオーダーすると「Y、確認なんだけど、千春は“ちーちゃんと呼んで”の“範囲”を指定したの?」「ええ、“2人だけ”になった場合に限りと言われてますが」と言うと3人は一斉に安堵の溜息を洩らした。「指定されたなら、まだ手は残されてるわね。みんなの前で“ちーちゃん”が横行したら、血を見るだけでは済まないのよ!全てが崩壊するかも知れないの!千春が“ちーちゃん”を許可するって事は“誰よりも信頼するわよ!あたしを自由にしていいわよ!”って意味なのよ!悪いけど迂闊に“ちーちゃん”とは呼ばないでね!」と岩崎さんはコーヒーを飲んで言った。「それにしても、厄介な事には変わりがありませんね!“ちーちゃん”が出た以上は、これまでよりも神経を使わなければなりませんから!」と永田ちゃんも言う。「男性に対しては、初めてじゃないですか?」と実里ちゃんが言うと「そうなのよ!しかも、相手がYでしょう?どうやって封じるか?頭が痛いわ!」と岩崎さんも応じた。「“ちーちゃん”を言い出したのは、千春先輩ですが“イエローカード”なんですか?」と僕が聞くと「“レッドカード”なの!“Yと結婚します”と同じ意味よ!だから、困ってるのよ!」と岩崎さんに思いっきり釘を打たれる。「しかし、知り得ているのは、Y先輩と千春先輩とあたし達だけです。この中で封印してしまえれば、実害は免れませんか?」と実里ちゃんが言う。ちょうどモーニングセットが届いたところだ。「そうね。この中で封印してしまえれば、最善なのよ。でも、代わりの手も考えないと千春が爆発しかねないわ。さて、どうやって口封じに持ち込もうかしら?」3人はしばし思案に沈んだ。「千春先輩が納得した上で、“ちーちゃん”を封じる・・・か。まずは、公式の場では言わない事!これは当然ですが、千春先輩とはどう折り合います?」僕が言い出すと「Yには悪いけど、明日も千春の“生贄”になってもらうしか無いわね!果実で釣り上げてから、“ちーちゃん”を限定的にしか使わない様に説得するしか無いでしょう!千春に言い聞かせるのは、あたしがやるとして、実里と永田ちゃんはYの口元に注意してもらう。これしかないわ!」「でも、Y先輩なら口が滑る心配はしなくてもいいのでは?」と実里ちゃんが言うが「万が一に備えるのは、王道よ!Yだって完璧では無いの。監視の目は必要だわ!」と岩崎さんは主張した。女の子達は殊更に気を遣う。針1本でも見逃すつもりはない様だ。「Y、千春から連絡させるから、明日は予定を入れないでくれない?何事もこの先の平和のためよ!千春のワガママに、もう1日だけ付き合ってあげて!そうすれば、実害が出ない様に封印するから!」岩崎さんはそう言って釘を打った。「分かりました。平和のためなら、何でも致しましょう」と息を殺して返した。「さあ、行動開始よ!でも、ちょっとだけ遠回りしてから戻ろうか?Y!」岩崎さんがキーを投げて寄越した。「じゃあ、また、最速記録を叩き出しますか?」と僕が言うと3人が微笑む。こうして、朝の騒動は幕を閉じた。寮に帰るとトラックから大量の荷物が搬入されていた。いよいよ、第3次隊の受け入れが始まったのだ。
部屋に帰り着くと、吉田さんは眠っていた。そーと、必要な物品を揃えると、僕はずっとやりたかった仕事にとりかかった。国分に来てから僕は“ワープロ”を手に入れていた。欠勤届や早退届の類は、原本を使われると新たに作ってもらうのに、手間と時間を必要とした。コピーの原本を複数作成出来れば、余計な心配をする必要もなくなる。時間はたっぷりあるのだから、こう言う時間にまとめて作成するには持ってこいだった。フロッピーにデーターを保存すると、感熱紙を使って試し刷りをして行く。仕上がりは順調だった。これで、コピーを大量に取れば、しばらくは心配することも無いだろう。昼前になったので、作業服に着替えて社食へと歩き出した。しばらくすると肩を叩かれた。「久しぶりだな。お前さんが週末に居るとは、珍しいな」と長老の田中さんが言った。「そうですね。“優しいお姉さま方”にずっと誘われてましたからね」と言うと「“薩摩おごじょ”は豪快だな。酒も強いし話も上手い。ウチは4人だが、Yのところは何人居る?」「年齢を問わなければ50人居ますよ。半分はパートさんですがね」「花園で勤務か!羨ましいね」「いばらの道ですよ。強烈な“おばちゃん達”と渡り合うには“通訳”が必要ですから」と言うと田中さんは噴出した。「確かにそれは分る!半分も理解出来ればいい方だ。今度、着任する連中も同じ苦労を味わうハメになるな!」と言って笑った。「勤務は?」と聞くと「夜からだよ。昼間起きてないと寝れないから、仕方なくこうしてるだけさ」と返して来た。あれこれと話して昼食を食べ、寮に戻るとダンボール箱の移動を手伝った。女子寮に運ぶダンボール箱は結構な量があった。一汗流して談話室で休んでいると、インターフォンが鳴った。誰も居ないので仕方なく出ると、相手は千絵だった。「Y先輩、これから空いてますか?」「ああ、今のところは空いてるがどうした?」と言うと「買い物に付き合ってくれません?買い溜めするから、荷物持ちお願いしてもいいかな?」と言うのでOKすると「じゃあ、15分後に車付けますからお願いします!」と嬉しそうに言った。そそくさと着替えて、財布と免許証を持つと玄関を出る。千絵のマーチは既に横付けされていた。「運転任せます!」と言うので、マーチを市内に向けて走らせる。「何を買うか決めてあるのか?」と言うと「日用品と食料品だから、2ヶ所に行くわよ」と明るく笑って左手に右手を重ねて来る。“千絵となら未来が見えるのかな?”とフッと思った。同じ事を考えていたのか分からなかったが、千絵は横顔を見て「毎週、こうして買い物に行くのが夢よ。明るく楽しい家庭を築きましょう!」と言った。「いつからにする?」と聞くと「明日からでもいいよ。あたし、待ってるから!」と力強く言った。千絵の笑顔が眩しかった。
日曜日、赤いスタリオンは、錦江湾の東沿いを南下して、佐多岬を目指していた。「昨日、恭子に散々怒られたわよ!“大奥取締役が抜け駆けしたら、何も意味が無いでしょう!”って力説されて、延々とお説教!でもね、あたしは“一番槍”を取るわよ!見事に男子を挙げるからね!」ちーちゃんは挫けてはいなかった。2人だけの時は“ちーちゃん”と呼ぶが、公の場では今まで同様に“千春先輩”と呼ぶ事で合意した様だが、彼女は意欲満々で助手席に座っていた。デニムのミニスカートにチェック柄のタンクトップ。ノーメイクだが、肌は透き通る様に白い。明らかに“連れ込む”算段だろう。化粧道具を持参しているが何よりの証拠だ。問題は“いつどこで仕掛けて来るか?”だった。何故なら、ちーちゃんの右手は、既に僕の下半身を触っているからだ!「ちーちゃん、余り刺激しないで下さいよー」と言うが「Yの息子は良く知っておる。良いではないか!早くあたしの元へ来るがいい!」と笑っている。これは、半分拷問だ!恐らく、仕向けたのは岩崎さんだろう。条件提示の段階で、ちーちゃんの要求を飲んだ結果がこれなのだ。朝からこの調子では、先が思いやられる!鹿屋付近を過ぎると、対向車線から車が来るのも少なくなった。「Y、あそこに停まってよ」ちーちゃんが路側帯を指した。鬱蒼と枝が茂っている中へ車を停めると、ちーちゃんは襲い掛かって来た。唇を重ねている間に助手席が倒されて、ベッドの代わりになった。「Y-、おっぱいちゃんだよ」と言ってブラのホックを外すと、豊満な乳房に触らせる。巧みに体をくねらせると、スカートを脱いでパンティに僕の手を持って行く。湿り気を帯びているちーちゃんのハンティの中に手を入れてやると、嬉しそうに声を上げ始める。「お願い、早くしようよー」知らぬ身体ではない。ちーちゃんの中へと息子を入れていくと、たちまち喘ぐ声が高まった。「あん!もっと・・・、いっぱい・・・突いてちょうだい!」ちーちゃんは首に腕を巻き付けると、何度もキスをしながら突きをねだった。猛然と突きを入れてやると「あー・・・・、あーあー・・・、イク・・・あたし、いっちゃう!」と腰をくねらせた。ありったけの体液を注いでやると、痙攣しながら1滴も余さずに吸い取った。「気持ち良かった。Y、ティシュ取って」と言うと、ちーちゃんは溢れる体液を拭き取り、僕の息子も拭いてくれた。「抱いて」と言って膝に座り込むと、ピッタリと密着して「出来るといいね」と妊娠を願う。その表情は真剣そのものだ。「Y、このパンティあげるよ。濡れちゃったし、着替え持ってるから」ちーちゃんはあっけらかんと言う。この底抜けの明るさこそ、ちーちゃんの魅力だろう。どうにかして、お互いに服を着ると再び車を走らせる。佐多岬ロードパークまでは、まだ先があった。だが、ちーちゃんは我慢が続かなくなってしまったらしい。「Y―、もう1回しようよ!」と盛んにおねだり大作戦を展開し始める。「しょうが無いなー!」と諦めると急遽、鹿屋へ転進してモーテルを探す。やっとの思いで空き部屋を見つけると、ちーちゃんは直ぐに部屋へ僕を押し込んでから、服をもどかし気に脱ぎ捨てて、襲いかかって来た。応戦しつつ、後ろから猛然と突きを入れてやると、たちまち理性をかなぐり捨てて「もっと・・・、もっと・・・、いっぱい突いてちょうだい!そうよ・・・!もっと激しくして!」と喘ぎながら言って、自らも腰を動かし始めた。身体を入れ替えて正面から突くと「気持ちいい・・・!中よ・・・!中に出して・・・!お願い!」と盛んに言って脚をクロスさせて、逃さない態勢を取った。大量の体液を注いでやると「気持ちよかった。Y,頑張ったね」と言ってから、僕の左側に寄り添うと胸元に顔を埋めて目を閉じた。ちーちゃんは、スヤスヤと眠りの世界へと入って行った。乱れた髪を直してやりながら、寝顔を見るとカワイイ顔をしていた。シーツでそっと覆い隠すと、もう一度寝顔に見入る。女の子の寝顔なんて滅多に見られるモノじゃないので、しばらく観察していると、ちーちゃんが現実の世界へ戻った。「ごめん!あたし、今まで寝てた?」「うん、スヤスヤと」「どうだった?あたしの寝顔は?」「可愛かったですよ!寝言を除けば」と言うと「何ていったの?教えなさいよ!」と馬のりになって問い質す。豊満な乳房に手を伸ばして、乳首に刺激を加えてやると「ダメよー!また、したくなっちゃうー!」と身体をくねらせた。ちーちゃんも、僕の息子に触ってパワーを入れようとし始める。「元気にしてあげる!だから、もう1回頑張ってよ!」ちーちゃんは、舌を使って息子にエネルギーを送り込んだ。「今度は、あたしが上よ!あっ・・・、大きい・・・、Yのが根元まで・・・入ってるよ!じゃあ、動くね」と言うと、たちまち理性をかなぐり捨てて、喘ぎ声を出し始める。下から突き上げてやると、悲鳴に似た声をあげて「もっと・・・、もっといっぱい・・・突いて下さい!・・・突いて下さい!」とねだった。再度、背後を取ると猛然と突きを入れてやる。「いい・・・、気持ちいい・・・!あたし・・・、イク、いっちゃうよー!」ちーちゃんは絶頂に登りつめた。同時に体液が注がれる。ちーちゃんは、ベッドに横たわると、僕の体液を指ですくってホールへと押し込んで行く。「気持ちよかった。これで妊娠出来るかな?あたし、Yの子供欲しいの!」と言う目は真剣な眼差しだった。それからは、バスルームでシャワーを浴びながら、互いにボディソープを塗り合って遊び出した。バスタブに湯を張ってから、2人してゆっくりと浸ると「お腹が大きくなる前に、ドレスを着たいから今回は期待してるのよ!絶対に当てるからね!」ちーちゃんは、その気満々だ。「Y,あたしを置いて行くな!妻として何処までも共に歩むからさ!」抱き着いて来るちーちゃんを僕は優しく抱きしめた。結局は、もう一度の熱戦をして、佐多岬ロードパークには行かずに、国分の街へと帰ったのだが、ちーちゃんの機嫌はすこぶる良くなり、ちーちゃんと呼んで問題は無事に決着したのだった。「アンタ、相当に頑張った見たいね!千春の晴れやかな顔を見れば一目瞭然!Y,お疲れ様でした。次は、あたしの番だから、覚悟してなさい!」夕方に入ったインターフォンで岩崎さんが言った。「少しは、休ませて下さいよ!」と言ったが「ダメよ!大奥の掟は厳しいの!正妻の顔は立てなさい!」と敢え無く撃沈の浮き目にあった。「こりゃ、痩せるな。しっかり食べないと体力が続かない」僕は作業服に着替えると社食で目一杯食べて、翌日に備えた。
月曜日、月が代わって6月。南九州一帯の梅雨入りは、間近に迫っていた。全体朝礼に備えて整列していると「Y,昨日はありがと!」と千春先輩が後ろから抱き着いて来た。「はい!そこまでよ!千春、Yは共有財産なのよ!控えてちょうだい!」と岩崎さんに引き剥がされる。「Y,結局、何試合したのよ?」彼女は入れ替わり際に囁いた。僕は黙して指を4つ立てた。「ボクシングのタイトルマッチをしてから、アメフトの試合に出た訳ね。分かったわ、今日は仕事で無理はさせないから!」と言って列に並ぶ。延々と続く朝礼を乗り越えて、おばちゃん達との格闘も済ませると、1日はあっと言う間に過ぎ去った。「Y先輩、帰りますよ!」と千絵が呼びに来る。寮に向かって歩き出すと、後ろから第3次隊、50名が着いて来る。「道を譲るよ」と僕が言うと左側に寄って、隊列を先に出させた。数名が僕に気付いて手を上げた。「Y先輩、お知り合いですか?」と千絵がボケをかます。「全員が知り合いだよ!来月に第4次隊が着任すれば、今回の派遣隊全員が揃う。先月に着任したのを忘れたか?」と返すと「あっ、そうか!でも、Y先輩は元々居た様な気がするんです」と永田ちゃんが言う。「それだけ、Yの存在感は大きいって事よ。今回も誰か配属されるのかしら?千春、何か情報は?」「今のところ無し。ただ、レイヤーとディップで駆け引きしてるのは確か。押し付け合ってる感じらしいわ」と不穏なニュースを聞いた。「まあ、明日になれば分かるさ。今晩は、ヤツらの出方を伺うとしましょう!」僕等もゆっくりと寮へと歩き出す。「今回は、女の子が多いのが特徴的だよね。女子寮も久々に満杯になるのよ。各部屋へ分散するけど、どんな子が来るのかな?Yを付け狙う子は居そう?」岩崎さんが心配気味に言う。「厄介なヤツは居ませんよ。例え居たとしても、これだけ厳重にガードされてるんですから、付け入るスキはありませんね!」「そうだといいけど、予防対策はしっかりと取りますからね!」と女性陣は奪取されぬ様に厳戒体制を敷いている様だ。「好きな様にして下さい。どの道、みんなバラバラの時間帯に放り込まれるんです。すれ違う暇すらありませんよ!」僕は差して気にもしなかった。寮ですれ違う事でさえ稀な事なのだから、己の事で手一杯になる明日からの生活で余裕は無いはずだ。寮の玄関先で「また明日ねー!」と手を振り千絵達は女子寮へと入って行った。田尾と僕もそれぞれの部屋へ急いだ。誰が来るのか?皆目見当が付かないからだ。克ちゃんが爆睡中だし、吉田さんもTVの前で寝ている。部屋のドアには何も表示が無い。「セーフか?」と思っていると、ゴソゴソと音が聞こえた。「よお!」と言って現れたのは、同期の鎌倉だった。慌ててヤツの口を塞ぐと「静かにしろ!寝てる連中に袋にされちまう!ここでは、みんな違う時間帯で生活してる。騒いだらタダじゃあ済まない。手伝うから静かに運べ!」と言って荷物を運んでやる。吉田さんも起きてくれたので、鎌倉の荷物運びは、直ぐに終わった。「ベッドは僕の上を使え。細かい作業は、克ちゃんが起きる午後7時以降にしてくれ。どの道、寮長からの説明会だろう?」と言うと「お前さんは上がりか?」と言うので「僕は早番オンリーだが、吉田さんは3交代、克ちゃんは4直3交代だ。残業だってバンバンあるから、定時上がりは稀なケースさ!」と説明会をしてやる。「思ってる以上に過酷だな。コンビニはどこだ?」「無いよ!向こうの常識は通じないんだ!それから、調味料も丸で違うから、ここの味に慣れるまでは味噌と醤油は節約するんだな。ちなみに、醤油味と塩味のラーメンは無いから、覚悟して置け!」と釘を刺した。「マジ?!そんな中でどうやって生きてくんだよ?」「“住めば都”だろう?大丈夫だ。慣れればどうって事は無い」と吉田さんも言う。「さあ、談話室へ行け!詳しい話は、それからだ!」鎌倉は肩を落として階段を降りて行った。「最初はあんなもんさ。その内慣れるだろう。後の世話は頼んだぞ!俺達は仕事があるからな」と吉田さんが言う。「鎌倉で良かった。アイツなら妙な事はしないから、安心ではありますよ」「ああ、ヤツなら直ぐに女の子とツルんで遊び回るさ。お前さんの様にな!」「お姉様方に遊ばれてるんですが?」「同じだろう?」「違いますよ!」僕等は意見の相違を言い合った。時を同じくして、談話室でも言い合いは始まっていた。そして騒ぎは僕にも降り掛かって来た。「Y,助けてくれ!美登里が騒いでるんだ!鎮圧に手を貸してくれ!」田中さんが青ざめた顔でやって来た。「“緑のスッポン”がですか?!何故ヤツが国分に?」「直前になって入れ替えがあったんだ。本来なら向こうに釘付けになるはずだったのに、やむを得ない事情で送られるハメになったらしい。ともかく火を消すのに人が足りないんだ!何とか封じ込めるしかあるまい!」田中さんも唇を噛んでいる。1階へ降りると、激しいやり取りが聞こえた。「あたしは、不条理を指摘しただけです!!男子寮に空き部屋があるなら、そこを使わせて下さい!バラバラにされたら、連絡も容易には付きません!変えて下さい!!」美登里の金切り声は、相変わらずキンキンと響く。「ともかく、連れ出そう!Y,このままでは、他の連中の迷惑になるだけだ!行くぞ!」僕と田中さんは、素早く美登里を捕捉すると、有無を言わさずに談話室から屋外ヘ引きずり出した。
「離してよ!何をするの!」美登里は抵抗するが、僕と田中さんの手で、寮の外ヘ連行された。「初めに言って置くが、“郷に入れば郷に従え”と言うだろう?ここは、国分なんだから国分のルールに従うのが筋だろう?自己都合を押し付けて、みんなを困らせるな!」田中さんが、いつになく語気を強めて、美登里を黙らせる。「お恥ずかしいったらありゃしない!部屋割り1つであの騒ぎか?信頼を得るには、黙々と努力を積むしか無いが、失うのは一瞬でおじゃんさ!第1次隊と2次隊のみんなの顔に泥を塗る真似は許さんぞ!立場をわきまえろよ!」と僕も半分脅しをお見舞いする。「でっ、でも、各部屋にバラバラにされたら、連絡も取れなくなります!納得出来ません!大体、事前に根回しをして無いなんて、信じられない!みんな、受け入れ準備すらして無いじゃありませんか!無責任過ぎます!」美登里は悪びれる素振りも見せずに言い返した。「田中さん、向こうに連絡して強制送還の依頼をして下さい!これでは話になりませんよ!君は帰った方がいい。協調性の無い自己中心的な考えは通じないんだ!旅費は出してやる!だから帰れ!」と美登里を突き放した。田中さんは早速、O工場に電話を入れに行った。「そんな命令は無効です!不条理に立ち向かって何が悪い訳?」「アンタの理論では不条理かも知れないが、僕達には不条理とは見えないぜ!そもそも軒先を貸してもらうんだ。ありがたくお世話になるのが、普通じゃないか?」「それは男性だから言えるんです!女性の立場に立って、考えてくれなければ困るんです!」議論は平行線を辿ったままだった。“緑のスッポン”は石橋を叩き壊しても渡らない頑固者だ。田中さんが「美登里、総務部長が呼んでる!電話に出ろ!」と呼びに来た。美登里は、仕方なく受話器を取る。「Y,アレどう言う事?」千春先輩が聞いて来る。彼女は寮生会の幹部でもある。「見ての通りの頑固者ですよ!自分の我が通らないと、気が済まない悪癖があるんですよ。協調性の欠片も無い“鼻摘まみ者”で通ってます。すみませんね。皆さんの気分を害してしまい、お詫びのしようもありません。寮長さんに頭を下げて来ます。田中さん、いいですか?」「済まんが頼む!後で、1次隊と2次隊の隊長も行くと伝えてくれ!」「そんな!Yが土下座する必要は無いのに!あたしが取りなすから、止めときな!Yの責任にされちゃうよ!」千春先輩は止めに入ろうとするが、僕は聞かなかった。憮然とした表情の寮長さん達に詫びを入れて土下座を繰り返した。第3次隊の連中も必死になって詫びを入れ始める。「分かりました。もうその辺で頭を上げて下さい。Yさんに、こんな事されたのが知れたら、私が吊るされますよ!そうでなくても、現に睨まれてますから」と寮長さんは、慌てて僕の土下座を止めた。女子寮の幹部達が、僕を助け起こすと「Yの責任にしないで!やむを得ない事情があったんだからね!」と千春先輩が言い放った。「それは分かってるさ。彼が、どれだけの信頼を勝ち得ているか?を考えれば、女子寮の意向は無視出来ない。彼にかかっている期待と仕事も含めれば、罪に問える訳ないよ!」と寮長さんは言って、女性陣の追求を逃れた。「Y、ちょっといいか?」田中さんが呼びに来る。美登里はうつむき加減で、受話器を握りしめていた。「総務部長が、話たいそうだ!代われ!」僕は受話器を握りしめて話に耳を傾けた。美登利が、派遣隊に加わった経緯から説明されたが、現実に美登里が引き起こした“騒動”に話が及ぶと、総務部長の声は上ずり氷漬けになった。「信頼関係を一瞬で破壊されたんです!明日中には、国分全体に話が拡散するでしょうし、我々も釈明に追われるでしょう!Oの恥を晒す真似は許されません!部長!美登里は引き上げにすべきです!」と僕は釘を打った。「Yからそう言われると、無下には出来んな。お前さんの評価は、群を抜いて高いし期待も大きい。ウチのエースが無理だと言うなら、従うのが筋だろう。分かった!高山美登里は、引き上げとする!代替え要員は、1週間以内に派遣する。工場長、それで宜しいですか?」どうやら、会話はオープンマイクで聞いていたのだろう。工場長は、即断で引き上げを了承した。「詳細は、これから国分の方と詰めるが、そちらに迷惑をかけるつもりは断じて無い。田中さんにもそう伝えてくれ!Y,済まなかったな。大変だろうが、頑張ってくれ!」と言うと電話は切れた。「どうだ?」詫びを入れに行った田中さんが戻った。「引き上げが決まりそうです。O工場の恥は晒せない。工場長も同意した様です。我々に迷惑はかけないから、安心しろと言ってました」「やはりそうか!美登里、責任は取れ!我々の顔に泥を塗った罪は重いぞ!」彼女は蒼白で頷いた。寮長さん達の説明会が終わると、3次隊の連中が談話室から出て来た。一様に美登里を睨み付ける。1人の子が美登里の手を引いて、女子寮へ向かった。「“緑のスッポン”を派遣した方が間違ってるんだ!」「Y,済まなかったな!」男達は僕の肩を叩いて言った。「先が思いやられるな。これで終わりとは行かんだろう。爆弾を抱える覚悟はして置こう!」と田中さんは言った。実際、騒動はこれで終わらなかった。
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