夫婦でシネマ

夫婦で見た映画と、個別に見た映画について感想をかいてます。全て映画館で見た映画で、ミニシアター系の映画をたくさん紹介!

つぐない

2008年06月02日 | た行の映画
Story
第二次世界大戦前夜、夏のイングランド。政府官僚の娘で未来の大作家を自負する13歳のブライオニー(シアーシャ・ローナン)は、大学を卒業したばかりの姉セシーリア(キーラ・ナイトレイ)と使用人の息子で幼なじみのロビー(ジェームズ・マカヴォイ)のただならぬ関係を察知し、ロビーへの警戒心を抱く。そして事件は起きる。ブライオニーの嘘の証言によって、愛しあう恋人たちは無残にも引き裂かれ、犯した過ちの重さにブライオニーが気づいたときには、泥沼の戦争が始まっていた。(goo映画より)
2007年/イギリス/ジョー・ライト監督作品





評価 ★★★★★

ネタバレ注意だワン!!!
これは、物語を語るということ~それが小説だろうと、映画であろうと~その意味の深奥を問いかける傑作でした。
物語は、少女の頃から作家志望で後に大作家として成功したブライオニーの視点を主にして描かれます。姉とその恋人への嫉妬から出た行為で彼等を引き裂いてしまい、その贖罪を小説に託すという物語です。

この映画の特徴的なところは、同じ場面をブライオニーの主観と客観で繰り返す描写が何度かでてくる点です。主観と客観はそのまま物語の創作過程を表しているようでもあります。この時系列を遡っての反復描写は上質なサスペンス映画を観ているようです。いやむしろ、この映画はどこまでが真実で創作なのか錯綜した極上のサスペンス映画でもありますね。

そしてハイライトとも言えるのは、敗残兵達が辿り着く海岸のワンショット超長回しシーン。この「トゥモロー・ワールド」のクライマックスをより高度に発展させたような描写には鳥肌が立ちました。喪失感を募らせる荒れ果てたかつてのリゾート地。無人で廻り続ける観覧車はディストピアの象徴のようです。

映画は浜辺で幸せそうに抱き合うセシーリアとロビーを描き(ブライオニーの創作)、そして浜辺の別荘を映して終わります。この別荘はロビーとセシーリアがいつか会う事を約束し、ロビーが最期まで携えていた写真に映っていたもの。ここで思い出すのは映画の冒頭で模型の邸宅が映された事。贖罪として創作されたハッピーエンドと作り物の景観がつながり、映画の主題が浮かび上がってきます。このストーリーテリングの妙が、そのまま物語ることの意味の問いかけとなって投げつけられたように感じました。

人は皆いつか死んでしまう訳ですが、生前の物語は人々の想い出として語り継がれることとなります。その語り継がれる物語は、現実を如何に補完するのか、現実を修正する事の意味は、そのようにして人々の記憶に残った物語はどのような役目を果たすのか。そんな答えの出ない問い掛けがいつまでも巡り続ける映画でした。





評価 ★★★★

さらにネタバレ注意だニャン!!!
この映画は、ひとつの場面を主観・客観で描き出したり、さらに時間軸が逆行するという面白い手法を取っていたので、最後の最後までまったく飽きる事がなく、とても面白かった作品でした。

この映画のポスターだけ見ると、キーラ・ナイトレイ演じるセシーリアの恋愛映画なのかと勘違いしてしまいますが、どちらかというと本当の主役は、セシーリアの妹・ブライオニーの方で、ブライオニーの贖罪をテーマにしたサスペンスタッチの映画でしたね。

上流階級の美しい姉・セシーリアと、小説家志望の年の離れた妹・ブライオニー。そしてその姉妹と幼馴染みであり、使用人の息子のロビー。この3人のそれぞれの想いが実に見事に描かれているので、どの人物にも共感して観られる作りになっているのではないかと思います。
セシーリアとロビーの悲恋物語には切なくて、とても心を打たれましたし、その二人を偽証によって引き裂いてしまったブライオニーにも、彼女が辿ったその後の人生を考えると、どこか憎めない感じで可哀想な気持ちになりましたね。

プライオニーは小説家志望だけあって、利発で想像力のたくましい少女であり、また、13歳という多感な年頃から、初恋の相手ロビーに対しても、どこか性に対する嫌悪感を抱いています。このブライオニーという難しい役柄を演じたシアーシャ・ローナンは、子役ながらも素晴らしい表現力で魅せてくれました。二人の姉妹から愛されるロビーを演じたジェームズ・マカヴォイも、知的な感じでとても素敵でしたね。
この二人に比べると今作ではちょっと印象が薄かったかなと思うキーラ・ナイトレイですが、背中全開の緑色のドレスがとてもセクシーで、女性から見ても憧れてしまうようないい女っぷりを発揮していました。

小説家として大成したブライオニーは、セシーリアとロビーの辿った人生があまりにも救われなかったために、二人の物語を小説によってハッピーエンドにすることで、自分の犯した罪を償おうとします。真実を書くよりも、創作して彼等の人生を補完する方がより贖罪になるんですね。このラストのシーンはとても考えさせられるシーンであり、また涙が出るような感動的なシーンでもありました。


映画『つぐない』公式サイト


(「つぐない」2008年5月 横浜シネマリンにて鑑賞)

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4 コメント

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こんばんは! (kira)
2008-06-03 23:39:20
TB,有難うございます♪
ジョー・ライト監督の前作で一緒だったキーラと、
ロニーの母親役のブレンダ・ブレシン、
彼女にはやられました。

やはりロニーに感情移入していたんでしょうね。
あの、気の遠くなるような大勢の兵士で埋め尽くされたダンケルクの夜。
セシーリアを想い、母親に会う、あのシーンで私は壊れました。。。
とっても好きな作品です~
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こんにちは! (nyanco)
2008-06-07 12:05:21
kiraさん、こんにちは!

TBとコメントありがとうございました。
お返事が遅くなってごめんなさいね。

ダンケルクの夜、母親に会うシーンは本当に泣けてきました。
母親が足を洗ってあげるので、もしかしたらロビー死んじゃうのかなと思ったのですが、本当にそうなってしまいました。。
その他、いろいろ心に残るシーンが多くて、語り出すときりがない作品ですよね。
私もwancoと同じく、洋画のベスト3に入りそうなくらい好きな作品です~。
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こんばんは! (アイマック)
2008-10-19 22:03:50
今頃になって見たのですが、上質な映画でよかったです!

>その語り継がれる物語は、現実を如何に補完するのか、現実を修正する事の意味は、そのようにして人々の記憶に残った物語はどのような役目を果たすのか。そんな答えの出ない問い掛けがいつまでも巡り続ける映画でした。

まさにそんな映画でした。答えがでないですよね。
二人を会わせ、謝罪したブライオニーの創作がなんとも切なくて・・・
今でもため息がでてしまいます~
今回のキーラはほんとに美しくて、グリーンのドレスが細身の体に似合ってました。ウットリ

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こんばんは! (wanco&nyanco)
2008-10-25 22:25:28
アイマックさん、こんばんは!
コメとトラバ、ありがとうございました。

いつまでも余韻が消えない映画でしたね。
グリーンのドレスのキーラはほんとに素敵でした。
噴水に飛び込むところもドキッとしてしまいました(笑)。

それにしても、今は亡き二人に、物語の中でしか謝罪出来ないブライオニーの後悔はいかほどのものなのか、切ない気持ちが伝わってくるようでした。
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