Story
ホームセンターで働くスタンレー(ジョン・キューザック)は、二人の女の子の父親。母親は陸軍軍曹として、イラクに赴任中だった。長女のハイディ(シェラン・オキーフ)は、父親のいない時に、こっそり戦争のニュースを見ていた。スタンレーは、母親を恋しがる娘たちとうまく接することが出来ず、いつもぎこちなく食卓を囲んでいた。ある日、妻が亡くなったという報せが届く。突然の妻の死を伝えることが出来ないスタンレーは、娘たちと小旅行に出かけることを思いつく…。(goo映画より)
2007年/アメリカ/ジェームズ・C・ストラウス監督作品
評価 ★★★★☆
クリント・イーストウッドが音楽を担当。戦場に送られた妻と残された家族を描く秀作。
これは小品ながら、大変良く出来た映画でした。
妻が戦場へ行って、夫が家庭に残るという通常とは逆のパターン。その夫のスタンレーも、理想に燃えて軍に志願した過去があります。しかし、視力が悪いのを隠していたのがバレて除隊させられたというやるせない思いが、ジョン・キューザックの名演から滲み出てきます。そんな中に飛び込んで来た妻の訃報。自分のこれまでの人生とどう折り合いをつけ、娘達と上手くやって行けるのかが、ドラマの焦点となります。
映画は妻の死を娘達に言い出せないままフロリダの遊園地へ向かうロードムービーの形をとっています。繰り返し映し出される、車窓からの見知らぬ街並の風景や、通勤する車に逆行して反対車線を1台だけ進むスタンレーの車が、取り残された家族の状況を表しているようで、しんみりしてきます。
数日間の旅路の末、フロリダの浜辺でついにスタンレーが母の死を娘達に打ち明けるのですが、ここからラストまでが感情を揺さぶるシーンの連続で、めちゃめちゃ感動してしまいました。ハイディが、学校の宿題だった母についての作文を葬儀の場でスピーチするシーンは、哀しいながらも彼女の成長を窺わせる所です。そして、最後に母の墓前に佇む父と娘達の場面まで、涙腺が決壊する感動的な終幕でした。
「自分のやっていることが正しいと思えなくなったらおしまいだ。」とスタンレーがハイディに言う台詞がありました。リベラルな弟とのやり取りや、テレビで釈明する当時のラムズフェルド国防長官の姿が出て来たりして、スタンレー自身も自分の行動に自信が持てなくなることがある中、自分自身を励ましている言葉のようで、観ている私達にも突き刺さってきます。
この映画の原題は「Grace is Gone」で、妻のグレースは逝ってしまった、という意味。一方、アメリカには「Grace under Pressure」という格言があって、これは、危機的な状況にあっても優雅さ、やさしさを保ちなさい、という意味なんですが、イラク戦争を声高に非難するだけでなく、犠牲になった兵士や残された遺族のことにも想いを馳せなさいという、社会への警鐘のように受け取れました。
映画の主人公は父親のスタンレーでしたが、長女ハイディの少女から大人への成長ドラマとしても観ることができます。ハイディがデパートでピアスの孔を空けるシーンがありましたが、大人への通過儀礼のようでした。
音楽をクリント・イーストウッドが担当しているのも聴きどころです。イーストウッドの映画には、娘への愛情を描いた作品が少なくなかったですが、そんなところも、本作品に携わった理由かもしれませんね。
映画『さよなら。いつかわかること』公式サイト
(「さよなら。いつかわかること」2008年6月 長野グランドシネマズにて鑑賞)
ホームセンターで働くスタンレー(ジョン・キューザック)は、二人の女の子の父親。母親は陸軍軍曹として、イラクに赴任中だった。長女のハイディ(シェラン・オキーフ)は、父親のいない時に、こっそり戦争のニュースを見ていた。スタンレーは、母親を恋しがる娘たちとうまく接することが出来ず、いつもぎこちなく食卓を囲んでいた。ある日、妻が亡くなったという報せが届く。突然の妻の死を伝えることが出来ないスタンレーは、娘たちと小旅行に出かけることを思いつく…。(goo映画より)
2007年/アメリカ/ジェームズ・C・ストラウス監督作品
評価 ★★★★☆
クリント・イーストウッドが音楽を担当。戦場に送られた妻と残された家族を描く秀作。
これは小品ながら、大変良く出来た映画でした。
妻が戦場へ行って、夫が家庭に残るという通常とは逆のパターン。その夫のスタンレーも、理想に燃えて軍に志願した過去があります。しかし、視力が悪いのを隠していたのがバレて除隊させられたというやるせない思いが、ジョン・キューザックの名演から滲み出てきます。そんな中に飛び込んで来た妻の訃報。自分のこれまでの人生とどう折り合いをつけ、娘達と上手くやって行けるのかが、ドラマの焦点となります。
映画は妻の死を娘達に言い出せないままフロリダの遊園地へ向かうロードムービーの形をとっています。繰り返し映し出される、車窓からの見知らぬ街並の風景や、通勤する車に逆行して反対車線を1台だけ進むスタンレーの車が、取り残された家族の状況を表しているようで、しんみりしてきます。
数日間の旅路の末、フロリダの浜辺でついにスタンレーが母の死を娘達に打ち明けるのですが、ここからラストまでが感情を揺さぶるシーンの連続で、めちゃめちゃ感動してしまいました。ハイディが、学校の宿題だった母についての作文を葬儀の場でスピーチするシーンは、哀しいながらも彼女の成長を窺わせる所です。そして、最後に母の墓前に佇む父と娘達の場面まで、涙腺が決壊する感動的な終幕でした。
「自分のやっていることが正しいと思えなくなったらおしまいだ。」とスタンレーがハイディに言う台詞がありました。リベラルな弟とのやり取りや、テレビで釈明する当時のラムズフェルド国防長官の姿が出て来たりして、スタンレー自身も自分の行動に自信が持てなくなることがある中、自分自身を励ましている言葉のようで、観ている私達にも突き刺さってきます。
この映画の原題は「Grace is Gone」で、妻のグレースは逝ってしまった、という意味。一方、アメリカには「Grace under Pressure」という格言があって、これは、危機的な状況にあっても優雅さ、やさしさを保ちなさい、という意味なんですが、イラク戦争を声高に非難するだけでなく、犠牲になった兵士や残された遺族のことにも想いを馳せなさいという、社会への警鐘のように受け取れました。
映画の主人公は父親のスタンレーでしたが、長女ハイディの少女から大人への成長ドラマとしても観ることができます。ハイディがデパートでピアスの孔を空けるシーンがありましたが、大人への通過儀礼のようでした。
音楽をクリント・イーストウッドが担当しているのも聴きどころです。イーストウッドの映画には、娘への愛情を描いた作品が少なくなかったですが、そんなところも、本作品に携わった理由かもしれませんね。
映画『さよなら。いつかわかること』公式サイト
(「さよなら。いつかわかること」2008年6月 長野グランドシネマズにて鑑賞)
ジョン・キューザックの役は、もっとコミカルなものを想像してたのですが、意外にシリアスだったのが予想外でした。
だけど、彼だからこその持ち味で、こちらも過剰に深刻にならずにすんだのだと思いました。
音楽も決して目立たず、かつ効果的で良かった。
拾い物の一編でしたね。
とてもいい映画でした。
クリント・イーストウッドの音楽がよかったし、説明がいちいち入らないところもなかなか。
子役たちもうまかったですねえ。
ジョン・キューザックのこういう役、はじめて見た気がする。
期待してなかったので、得した気分です。笑
こちらこそ、ご無沙汰ですみませんでした。
長野では限定公開で、なんとか観ることができました。
僕も、電話のシーンは、まだ妻の死を受け入れられないスタンレーの気持ちが伝わってくるようでジーンと来ました。
戦場シーンなし、母親戦死、というのがこの映画を成功させた要因ですね。
こちらこそご無沙汰で申し訳ありません。
父親がイラクに行ったのじゃ平凡過ぎて映画にならなかったと思いますが、母親がイラクに行って戦死するというテーマが素晴らしかったですね。
初日シアターはガラガラでしたが、全国展開されているのですね?
妻の声で録音された電話に語る夫のスタンレー。妻に“Help me!”と言いたかったでしょうね?あの電話のシーンにはウルウルきました。
戦場のシーンが全く出て来ないのも、想像力を駆り立てられ、余計に戦争の悲劇を訴えてくるものがあり、上手い描き方だなぁと感じましたわ。