「みろく山の会」の人々と歩いた足跡はすでに無く
3月15日快晴、風もなく穏やか。
前夜降ったのだろう、薄っすらと積もった雪にスノーシュー(ズ)がその分だけ潜る。前回来てからまだ一か月と経っていないのに、日の光は明らかに明度を高め、新しい季節の予感が大気に漲る。また、春が来るのだ。
「法華道」の登り口
雪に埋もれかけた標識
法華道は冬の間だれも通る人がいない。すっきりとした灌木の尾根道を、急登を巧みにかわしながら歴史の道は続いている。
さすがに古道と言うべきか、途中「万灯」、「龍立つ場」、「門祉屋敷」、「爺婆」、「厩の平」、「脛巾(はばきあて)」と、古い時代の地名を教える標識が、雪の中に埋もれるようにして立っている。どれもこれも、北原のお師匠の孤独な努力がなしたことで、次代への尊い贈り物である。
雪の状態にもよるが、これらの道標を確認しながら2,3時間も行けば、いつしか尾根は消えて、さらに登り傾斜の続く深い雪の森の中に出る。木々の合間から守屋山や大沢山の牧場の一部も見えている。
この辺りはどこでも登路とすることができて気持ちのよい場所だが、最小限の労力で行こうとすればそれなりに地形を読みたい。やがて今は使われていない林道らしきが、森を横切るように薄っすらと見えてきてようやく一安堵する。ここから緩い登りを約1時間も行けば「本家・御所平峠」に着く。
古道は深い雪の下にあるが、尾根を行く間は道に迷うことも、雪崩や滑落の心配もまずない。尾根が終われば標識布が欲しくなる場所もあるが、たまに見かけるそれらしい標識の類はかならずしも登山用のものではない。薄っすらとしか判別できない林道を、損をしたような気になりながらも何度か折り返すころには、「御所平」の標識が見えてこよう。
(つづく)