昨夜も上に泊まる。そしてよく眠れないまま夜が明けた。そういう夜に見る夢には、帰り方が分からず途方に暮れている都会の郊外の駅がよく出てくる。列車は次々に通過していくが、どれに乗ったら帰るべき場所へ行けるのか、この夢の中では知ることができない。
その後夢は、今度はしてもいない不義理の夢に変わった。さんざん世話になった人に顔向けができなくなったとか、してもいない借金の返済を怠っていた夢とかだ。過去にはそういうこともあったから、いまごろになって古傷の痛みが夢の中で疼くのかも分からない。
昨夜は加えて、夢の中で山にも登った。ピッケルを手にアイゼンも履き、どこぞかの山での登攀の場面だったが、少しも興は乗ってこなかった。もうすることもない山での一コマが、浅い眠りの中でどういう意味を持つのかと、目が覚めてからしばらく考えた。
昨夜、夕日を眺めに第1牧区へ上がっていった時のことだ。驚いた。雷電様に通ずる放牧地には、およそ100頭ほどはいただろう、鹿が車の音を聞き付けて逃げていくところだった。夕暮れの草原に、まるで茶色の敷物が移動していくような錯覚を覚えたほどだ。後には、前日よりもさらに拡大したイノシシの掘り起こした跡が延々と続いていた。
毎年の春、入牧すると電牧を立ち上げ、初冬の風が吹くころにこれを落とす。初夏には漏電を避けるため、2キロくらいはあるリボンワイヤーの下を草刈りする。そういう努力の結果がこれである。今や鹿対策用の電気牧柵は殆どその意味がないことを思い知らされた。災害に襲われた人に比べたらこんなことは大したことではない、シジホスの神話なぞを持ち出せば滅相もないと嗤われよう。それでも、何年にもわたり保守してきた者の努力は、これであからさまに否定された。
もしかすれば、この時の落胆が昨夜の夢を誘ったのかと思う。
8月10日から18日までのキャンプ場の予約は、大変に勝手ながら打ち切らせていただきました。まだ余裕はありますが、あくまでも来ていただく方たちの快適な滞在を優先するためです。ご理解ください。
営業案内 「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」およびその(2)です。下線部をクリックしてご覧の上、どうぞご利用ください。