Photo by Ume氏
少し日が射しただけでも、気温の上昇を感ずる。午前10時の気温20度、時折青空が見えるくらいで、権兵衛山は霧だか雲に翻弄されていてその姿は見えない。鳥の声もせず、いつもなら草を食む牛たちも今は反芻の時間なのだろう、彼女たちの確認はまだできていない。牛の姿が見えない放牧地は妙に素っ気なく、間の持てない眺めで、特にこんな天気の日は周囲の緑の色に息苦しささえ覚える。
外に出てみたら思いの外西の空に青空が拡大していた。牛たちは囲いのほぼ中央の低い場所に横臥して、やはり反芻をしていた。近付くと「何か用か」とでも言うように、いつものあの疑い深そうな視線を送ってくる。さらに接近すれば、その中でも一番大きな500㌔の体躯をした種の付かないあの牛も、他の牛と一緒にこれまた面倒臭そうにして立ち上がるのだが、憩いの時を邪魔するような野暮な真似はしないでおいた。
管理棟の裏側になる第2牧区にはきょうも、30頭を超える鹿の群れが出ていて、その様子が遠くからでも見えた。ほぼ伸び切った茶色の角を生やした幾頭かの雄鹿、春に産まれた小鹿を連れた母鹿、そして多くの雌鹿が従うように群をつくり、わが物顔に草を食んでいる。最早あの牧区は鹿たちの「聖域」と化してしまった。
あの草地に罠を仕掛ければかなりの数の鹿を獲ることができるはずだが、それでももう、そういう元気・熱意は殆どなくなってしまった。くくり罠で捕獲できる鹿の数などに比べ、敵の繁殖力はあまりにも旺盛でまさしく焼け石に水だと匙を投げてしまったからだ。
またもの凄く激しい雨が降ってきた。キャンプに来ていた人たちを近くの山へ案内し、途中からは別行動で下りてきたが、彼ら彼女ら5名は多分ずぶ濡れになってしまったと思う。しかし、濡れた衣服は着替えれば済むわけだから、それよりも、未知の自然に触れたことを多として欲しいと願っている。
明日からまた撮影やその下見などが続き、例年よりか少ないが小屋やキャンプ場へやって来る人たちもいる。11日の中間検査には牛も上がってくるし、牧区替えもあり、盆が終わるまでは忙しい日が続く。
本日はこの辺で。