遠くの浮かぶように見えている穂高や槍だけでなく、美ヶ原や霧ヶ峰、さらにもっと近くの守屋山なども、日毎に山肌の色合いを微妙に変えていく。その変化を毎日眺められることを感謝し、幸福だと思う。
また同時に、ここで暮らす日々も残り少なくなってきたことを否が応でも意識している。さらに、人生に限りがあるように、この仕事にもそれがあることを、牛のいなくなった放牧地に立って感じている。
秋の空は美しい。しかしそれだけでなく、その変化する様子が面白い。今朝、羊雲の浮かぶそんな大きな空を見せて上げようとご婦人連を第1牧区へ案内したが、こっちの意図が充分に伝わったかどうか、特にあの人には。軽トラが苦手なご婦人もいて、帰りは歩いて下りたいと言うので、お好きなようにと捨ててきた。
昨日、第1牧区の冬支度を始め、電気牧柵も落とした。また以前から課題としていた追い上げ坂の区画変更も、そのために第6牧区と境を接する支柱を抜いたが、それではとても本数が足りそうもない。となれば、他にに使い回しが可能な牧柵は限られ、新たな課題が生まれた。どうするか。
そんなことを考えながら、何気なく囲いの方を見たらゲートが落ちている。捕獲した頭数は不明だが、中に少なくも1頭の鹿がいることは間違いない、確認した。しかし、もしも本当にたったの1頭だけだとしたら、鉄砲撃ちは上がってくるだろうか。
逃げ場所を探して囲いの際(きわ)を移動するのが鹿の行動癖だから、どこかにくくり罠を仕掛け、それで捕らえることもできないではないが、これには手がかかる。たった1頭のために、そんな面倒なことはしたくないが、と言って、今度は無罪放免とはいかない。
キャンプ場に人がいて、しかもあの人がいて鹿が罠に入るとは、まったくの驚きだ。
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本日はこの辺で。