久しぶりに用事が出来てヒルデエラ(大阿原)へ行ってきた。午後遅くだったが、阿原(=湿原)は見頃を迎えた見事な錦繡の色に染まり、今年も地元の高校生が来たのだろうか、木道の両側のクマササが荒っぽく刈られてそのままになっていた。
ヒルデエラにあんな立派な木道が出来た経緯は知らないが、何でも車椅子でも行けるようにということだったと聞いた。あそこは伊那の行政区ながら国有林の一部であり、恐らく高校生が協力するかたちで森林管理署が管理してきたのだろう。それにしても、木道に残るアイゼンの爪痕を見ると、想定の範囲のことかは知らないが、木道の将来が危ぶまれてしまう。
その将来と言えば、この阿原・湿原も、すでにその兆候を見せていて、やがては草原に変わるものと見做されている。そうなれば木道は不要になるかも知れないが、草原を残すなら落葉松の実生から育つ幼木やカヤは厄介な相手となるだろう。
高校の1年の学校登山で初めて青柳から歩いて入笠へ来た。泊まった山小屋以外で記憶に残るのは唯一この阿原で、さてそこに至る経路や、その後か前か当然登ったであろう入笠の山頂を含めて、全く記憶にない。なぜこの阿原だけが記憶の断片として残っているのか、ここへ来るとそのことを思い出し不思議に思う。もう、半世紀以上も前のことだ。
昨夜は8時過ぎに寝て、4時少し過ぎに起きた。さっきから鹿の鳴く声がしきりとしている。囲い罠に入った囚われの鹿は昨日の朝に殺処分したのに、それでもかなり近くまで来ている。鉄砲の音には驚いただろうが、果たしてそれがどれほど自分たちの身に危険な物かを、あの鹿たちが理解できているのかどうかは疑がわしい。
たった1頭の鹿を仕留める面倒な役を引き受けてくれたM君は、散弾銃の所持経験が10年を過ぎ、今年からライフルが使用できるようになった。銃はかの有名なブローニングである。散弾銃のぶっとい銃身んと比べそれより細い、鈍く黒光りしたライフルは、やはり銃器としての風格がある。ただし、狩猟の目的によっては、散弾銃の方が効率の良い場合もあるようだ。
本来の牧守の仕事のことを考えると、まだまだいろいろとある。また、鹿の捕獲も、これだけで終えるわけにはいかない。
今朝は朝から強い風が吹く。落葉松の葉は赤味の強いこげ茶色に変わった。やがて金色に染まり、落葉する。そのころにはここからでもきっと、雪の便りを送ることになるだろう。
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本日はこの辺で。