夜中、また2時間ほど本を読んでいた。すでに4時半になる。これから2時間ほど眠り、きょうもまた第4、第2牧区の電気牧柵の冬支度のために一日を過ごす予定でいる。
牛が里に下りて、きょうどうしてもやらなければならないという仕事はなくなった。今の穏やかな季節の中で、それも広大な自然の中で、一日をどう過ごすかと考えればいいわけで、牛からも誰からも強制されない有難い身分にやっとなれた。
今冬の雪はどうだろうか、そんなことを考えていたら眠りに落ちた。そして2時間のつもりが、3時間半も眠った。それでも、きょう一日の仕事、暮らしには全く影響ないだろうし、むしろこれだけ眠れたから寝付く前にあった疲労感も消えたようだ。
遠くで鹿の鳴く声がする。雄が雌を呼んでいる声だという。夜中にも鳴いていた。
囲い罠は牛が下りた翌日から仕掛けてあるが、反応はない。塩に釣られて入っていけば、とんでもない危険が待っていることをいつの間にかあの鹿たちは学んだのだろうか。罠の入り口に誘引用に置いた塩はとっくに消えて、深い穴ができている。
くくり罠も3頭捕獲した後何日も過ぎたが、それ以後は捕れていない。それでも構わない。捕獲した後の面倒な処理のことを考えると、もっと有効な捕獲場所、方法もあるのだが、あまり積極的にはなれないでいる。
先日捕った雄鹿などは珍しく最初から攻撃的で、近付けば頭を下げて向かって来て、かなり手古摺った。雄は身体も大きく、なかなか一撃では倒れないだけでなく、最後には残された野生本能を振り絞り向かって来る。狩猟免許を持っていた時は一人でもやっていたが、今は鉄砲撃ちに頼むようにしている。
ついでながら、そういうわけで、牧場管理人の立場は有害駆除においてはあくまで脇役、助手でしかない。
秋日和のいい天気になってきた。牧草はまだ夜露に濡れたままで、その上を渡る風の音がかすかに聞こえてくる。いつも眺めている山桜の老木が大分葉を落とした。
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本日はこの辺で。