夕暮れの中を帰る。昨日も、また貴婦人の丘の前で、あの丘の上に拡がっていた冬空の色に惹かれ車を停めた。丁度、黄金の夕空が青空と雲の色調をさらに複雑に染め上げつつある時だった。懐かしい気持ちと、寂寞とした思いが同時に湧いてくる、そういう色だった。
人気のないキャンプ場を一瞥し、小屋の中に入る。すぐにまた外に出て、忘れないうちに米を研ぐ。そうしておかなければ、そんな厄介なことをする気がしなくなるからで、まだ外の寒さが気にならないうちに面倒なことは全て済ませてしまう。
水は相変わらず太いホースの先から勢いよく流れ出ている。よくもまあこれほどの水量が絶えることもなく確保されているものだと、天然の貯水力にいつもながら感動する。もっと寒くなっても、雪に覆われ山が長い眠りに入っても、ここだけは活動を止めない。さながら心臓のごと。
冷え切った身体がそれを望むのだろう、風呂に入りたいと切実に思う。軟弱なそんな思いを振り切って、夕餉の支度をする。野菜不足を身体が訴えて来るからまたしても一人鍋。肉は使わない、ちくわを代用する。
酒は2合、熱燗にした。この時季になると、ビールは冷蔵庫に入れておかなくても充分冷えているから有難い。
それからは、同じ俳優ばかりが分別もなく出てくる下手糞なCMに腹を立てつつウクライナへ行き、アメリカへ行き、パレスチナへ行く。
中小企業の経営者も、中にはおかしなのがいるが、従業員やその家族のことをそれなりに考えている。それに比べ、人類80億の生命に責任を負うはずの人たち、特異と言えばいいのか、あまりの能天気さ・・、われわれも含めてホモサピエンスの限界を、山の中で一人嘆じている。
雨かと思えば雪、雪かと思えば雨、きょうはそんな天気の一日だろう。
本日はこの辺で。