昨日の朝の空には、子供が黒板に白墨を倒して好き勝手に描いたような薄い雲が、大きな青い空に現れた。その奔放な雲の出現が、次第にゆっくりと変化していく様子が、秋の空をいつもよりか格段に大きくし、美しく見せていた。今秋一番の秋空だったと言ってもよかった。
先日の雪は穂高周辺では消えてしまったが、五竜や白馬などの後立山連山はそのまま根雪となったようだ。標高からすれば前者の槍、穂高より若干低く、位置的にはより北になるこれらの山々が、白い衣装を纏い続けることができた訳は、どれほどの気温差があるのかないのか知らないが、あの時の降雪量の多さ、それと日照の違いにあったのではないだろうか。
そんなどうでもいいことを考えながら、出発が遅れたので昼抜きで御所平峠付近の草刈りをした。もちろんその前にはいつものように北原のお師匠が担ぎ上げた地蔵尊に額づき、途中で草刈りを中止して、そこで30分ほど座った。
この「座る」についてはまた別の機会に譲るが、集中するコツ、と言っては何だが、を思い出した。
きょうは昨日と打って変わって曇天、かつては緑色をした単調な森や林が、趣の異なった複雑と言うのか雑多と評していいのか、茶や黄や赤、様々な渋い色合いを、こんな天気でさらに強調して見せている。
濁色の赤茶けた落葉松の葉が、脱色しつつ大分黄色味を帯び始めた。これからさらにその色を磨き、やがては黄金色に変わる。
もう少し先になるが、朝の日の光りが谷の中まで届くようになると、それまで眠っていた落葉松の谷は黄金に「にほい」、その眩いまでの光景は入笠の山頂から眺める日の出の荘厳さとも充分に競える。
作業を終え、ここへ帰ってくると、夕空にはまたしても朝と劣らず、スケーターの華麗な軌跡を思わせる幾つもの白い線状の雲が、大きな弧を描きながら空いっぱいに拡がっていた。身に沁みる、それも一日の終わり方だった。
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本日はこの辺で。明日は会沈黙します。