どうも10年に1度、飛びきりの贈り物をしてくれそうな友人がいます。まるで"その時"になると天空を通り過ぎながら、パラシュートにつけた贈り物を空の彼方から落とし、長い尾を引きながらまたどこかへ行ってしまう彗星のようです。普段はどこで何をしているのか・・・。一応、メールか(それもここ数年の話ですが)、いざとなったら電話でも連絡を取る方法はあるのに、日常生活ではお互いほとんど没交渉。しかし、ある時、ふと高い高い空の雲間から降ってくる私の人生に極めて大切な贈り物
10年前初めて授かったものは猫でした。今では私たちのかけがえのない家族、子どもたちにとっては兄貴でもある、2匹のシンガポール生まれの猫は彼女からの贈り物でした。
「会社の敷地内に住んでいる猫が管理人室で子どもを産んだの。とにかく可愛いから見に来て。」
そんな電話をもらい、2人とも猫好きの私たちは軽い気持ちで出かけていきました。自分たちが飼うことになるなど全く想定していませんでしたから、もちろん手ぶらで。
しかし、見たとたんにもうメロメロ。毛皮をまとったもぞもぞと動く4匹の生まれたての猫たちはミーミー泣きながら、私たちの掌で指をかじってみせたり、後ろ足で頭をかこうとしながら上手くいかずに転んだり、もう可愛さ全開。夫とかわるがわる掌に乗せて、
「かわい~い、かわい~い、かわい~~い!」
「1匹じゃ可哀想だから、2匹にした方がいいわよ。昼間2人がいなくても寂しくないでしょう。ウチの2匹も猫同士で楽しくやってるみたいだから。」
「世話はとってもカンタン。猫はきれい好きだからトイレのトレーニングもとってもラク。場所さえ決めておけばもうバッチリ。」
「餌だって昼間はドライのキャットフードとお水をたくさんあげておけばいいし、夜は缶詰のキャットフードあげたり、好物を手作りしてあげてもいいわね。」
「爪も研ぐ場所を決めておけば家具とかは大丈夫。」
友人はまるでこちらの脳裏をかすめる不安が読めるように、一つずつ不安の種を潰していきます。安っぽいセールストークのように畳み掛けるのではなく、優雅に知的に私たちを絡め取っていく魔法のお言葉。
「どれにしよう?」
まんまとそれに乗った私たち。とっくに問題は飼うか飼わないかではなく、どの猫にするかにすり替わっていました。
「コレとコレにしよう!」
最終的に選んだのは2人が気に入ったトラ猫と4匹のうち一番痩せっぽちで、頼りなくて最も引き取り先が見つからなさそうな白に茶のブチが入った猫でした。
「白猫は大きくなるって言うから、元気に大きく育つわよ・・・」
友人のご神託は私たちが段ボールを抱えて車に乗り込むまで続きました。
果たして、白猫ピッピ(夫命名、意味不明)とトラ猫チャッチャ(私命名、茶色なので)は友人の予言通り、元気に、そして大きく育ちました。窓辺で昼寝する2匹を見たマンションのお隣さんに、
「お宅、2匹も犬がいるのね!」
と言われたほどに(笑)
特にピッピは痩せっぽちだった子猫時代の片鱗も忍ばせないほど、巨猫になってしまいました。今では2匹とも好奇心のかけらもなくなり、窓辺に来たハトにガラス+網戸越しの絶対安全な場所から、
「アァァァァァ」
と、よもや猫とは思われないような腹話術の妙な声を出し、本人たちはそれで十分威嚇し、番猫(?)としての務めを果たしたつもりで、後はひたすら、ひねもすのたりのたりかな。
「何かの役に立てよ~」
と、夫は昼寝三昧の2匹に不満を漏らし、誰も見ていないとろでこっそりシッポを踏んだり、突然抱き上げて猫が身をよじって耐えられなくなるほど撫で殺しにしたりと、最近では愛情表現も倒錯してきています。しかし、この2匹は間違いなく西蘭家の長男、次男で、「子はかすがい」の諺通り、その後香港で子を授かり、たった2人で育て始めることになる私たちに、忍耐と愛を教えてくれました。
(※香港での長男・次男)
あれから10年。ここ1、2年音信不通だった彗星から突然メールで交信がありました。そして私はまたまた、一生事となるであろう、とんでもない贈り物をしてもらうことになったのです。(つづく)
=============
「マヨネーズ」
先日、大きな飲茶レストランチェーンが倒産しました。これで約2,000人が職を失ったそうです。返還以降の景気悪化でこれまでも有名無名の多数の店が潰れ、夜逃げ同然、出勤してみたらもぬけの空、オーナーはとっくに中国や海外にトンズラ・・・などということが繰り返されてきましたが、さすがに今回は「飲茶まで」と、香港人への衝撃もひとしおのようです。
倒産ということは、「香港人が飲茶を食べなくなっている」とも思いますが、
①包んで、蒸して、運んで、と人件費がかかる上、朝食か昼食なので夜は食べない飲茶というものが、店にも客にも割高になってきた
②ちょっと足を伸ばせば中国でかなり安く食べられる
③食生活の洋風化、個人化で、大勢で2~3時間をかける食文化が廃れてきた
など、いろいろな理由があるのでしょうが、景気の悪さが状況に拍車をかけているのは間違いないようです。
体育館のような広い場所を12人掛けの円卓が埋め尽くす中、店員やお客が右往左往している活気に満ちた独特の雰囲気は、香港の元気の素を見る思いでしたが、そんな姿が"経済効率"という味気も素っ気もない物の前で膝を屈していかざるを得なくなっているのです。
=============
後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
次男ピッピは2007年9月18日に15歳で、長男チャッチャは2010年12月24日のクリスマスイブに18歳で、それぞれ天に昇りました。贈ってくれた友人には今でも感謝しています。
本当に仲のよい2匹でした。
10年前初めて授かったものは猫でした。今では私たちのかけがえのない家族、子どもたちにとっては兄貴でもある、2匹のシンガポール生まれの猫は彼女からの贈り物でした。
「会社の敷地内に住んでいる猫が管理人室で子どもを産んだの。とにかく可愛いから見に来て。」
そんな電話をもらい、2人とも猫好きの私たちは軽い気持ちで出かけていきました。自分たちが飼うことになるなど全く想定していませんでしたから、もちろん手ぶらで。
しかし、見たとたんにもうメロメロ。毛皮をまとったもぞもぞと動く4匹の生まれたての猫たちはミーミー泣きながら、私たちの掌で指をかじってみせたり、後ろ足で頭をかこうとしながら上手くいかずに転んだり、もう可愛さ全開。夫とかわるがわる掌に乗せて、
「かわい~い、かわい~い、かわい~~い!」
「1匹じゃ可哀想だから、2匹にした方がいいわよ。昼間2人がいなくても寂しくないでしょう。ウチの2匹も猫同士で楽しくやってるみたいだから。」
「世話はとってもカンタン。猫はきれい好きだからトイレのトレーニングもとってもラク。場所さえ決めておけばもうバッチリ。」
「餌だって昼間はドライのキャットフードとお水をたくさんあげておけばいいし、夜は缶詰のキャットフードあげたり、好物を手作りしてあげてもいいわね。」
「爪も研ぐ場所を決めておけば家具とかは大丈夫。」
友人はまるでこちらの脳裏をかすめる不安が読めるように、一つずつ不安の種を潰していきます。安っぽいセールストークのように畳み掛けるのではなく、優雅に知的に私たちを絡め取っていく魔法のお言葉。
「どれにしよう?」
まんまとそれに乗った私たち。とっくに問題は飼うか飼わないかではなく、どの猫にするかにすり替わっていました。
「コレとコレにしよう!」
最終的に選んだのは2人が気に入ったトラ猫と4匹のうち一番痩せっぽちで、頼りなくて最も引き取り先が見つからなさそうな白に茶のブチが入った猫でした。
「白猫は大きくなるって言うから、元気に大きく育つわよ・・・」
友人のご神託は私たちが段ボールを抱えて車に乗り込むまで続きました。
果たして、白猫ピッピ(夫命名、意味不明)とトラ猫チャッチャ(私命名、茶色なので)は友人の予言通り、元気に、そして大きく育ちました。窓辺で昼寝する2匹を見たマンションのお隣さんに、
「お宅、2匹も犬がいるのね!」
と言われたほどに(笑)
特にピッピは痩せっぽちだった子猫時代の片鱗も忍ばせないほど、巨猫になってしまいました。今では2匹とも好奇心のかけらもなくなり、窓辺に来たハトにガラス+網戸越しの絶対安全な場所から、
「アァァァァァ」
と、よもや猫とは思われないような腹話術の妙な声を出し、本人たちはそれで十分威嚇し、番猫(?)としての務めを果たしたつもりで、後はひたすら、ひねもすのたりのたりかな。
「何かの役に立てよ~」
と、夫は昼寝三昧の2匹に不満を漏らし、誰も見ていないとろでこっそりシッポを踏んだり、突然抱き上げて猫が身をよじって耐えられなくなるほど撫で殺しにしたりと、最近では愛情表現も倒錯してきています。しかし、この2匹は間違いなく西蘭家の長男、次男で、「子はかすがい」の諺通り、その後香港で子を授かり、たった2人で育て始めることになる私たちに、忍耐と愛を教えてくれました。
(※香港での長男・次男)
あれから10年。ここ1、2年音信不通だった彗星から突然メールで交信がありました。そして私はまたまた、一生事となるであろう、とんでもない贈り物をしてもらうことになったのです。(つづく)
=============
「マヨネーズ」
先日、大きな飲茶レストランチェーンが倒産しました。これで約2,000人が職を失ったそうです。返還以降の景気悪化でこれまでも有名無名の多数の店が潰れ、夜逃げ同然、出勤してみたらもぬけの空、オーナーはとっくに中国や海外にトンズラ・・・などということが繰り返されてきましたが、さすがに今回は「飲茶まで」と、香港人への衝撃もひとしおのようです。
倒産ということは、「香港人が飲茶を食べなくなっている」とも思いますが、
①包んで、蒸して、運んで、と人件費がかかる上、朝食か昼食なので夜は食べない飲茶というものが、店にも客にも割高になってきた
②ちょっと足を伸ばせば中国でかなり安く食べられる
③食生活の洋風化、個人化で、大勢で2~3時間をかける食文化が廃れてきた
など、いろいろな理由があるのでしょうが、景気の悪さが状況に拍車をかけているのは間違いないようです。
体育館のような広い場所を12人掛けの円卓が埋め尽くす中、店員やお客が右往左往している活気に満ちた独特の雰囲気は、香港の元気の素を見る思いでしたが、そんな姿が"経済効率"という味気も素っ気もない物の前で膝を屈していかざるを得なくなっているのです。
=============
後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
次男ピッピは2007年9月18日に15歳で、長男チャッチャは2010年12月24日のクリスマスイブに18歳で、それぞれ天に昇りました。贈ってくれた友人には今でも感謝しています。
本当に仲のよい2匹でした。