ニュージーランド準備銀行(中央銀行)は今月15日、この2ヵ月来で3回目の利上げに出ました。上げ幅は前回2回と同様の0.25%。金利というものには明確なサイクルがあり、一度上がり出すとしばらくの期間は段階的に上がっていきます。いわゆる金利上昇局面というものです。しかし、いつまでも上がり続けることはなく、ある程度の水準まで行ったら打ち止め感が出てきて、ある日を境に下がり始めます。これも上がった時と同様で、段階的に下がっていきます。
猛スピードで走っている車が急には止まれないように、経済でも一度モメンタムという勢いに乗ると、一定のところまで行ってしまうことがよくあります。そして、その反動から今度は逆の方向を目指して一斉に動き出すため、結果的にサイクルが生み出されていくのです。金利だけでなく、景気サイクル、株価サイクルもあるし、今では半導体サイクルという言葉もすっかり定着しています。
NZの2ヵ月で3回の連続利上げというのは、一般的に言えばかなり急ピッチな金利上昇です。勢いがついているのは明白で、このまま行けば第4次利上げも近いでしょう。現にロイターの調べでは、エコノミスト13人のうち、12人が次回の中銀会議がある7月3日にも更に0.25%の利上げがあると予想しています。
1年以内に1%かそれ以上の利上げとなると、預金者にとっては嬉しい話。日本の定期預金金利がやっと1%あるかないかの時に、悠々4%台かそれ以上で預金できるわけです。香港もほぼゼロ金利で最近は口座残高が少な過ぎると口座管理料を徴収され、預金金利を受け取るどころか手数料を支払わないとお金を預かってもらえないというマイナス金利状態に突入しています。しかし、利上げは変動金利で借金をしている場合には、上昇分が金利負担としてのしかかってきますから辛い話です。そのため企業や個人が急速に借り入れを見合わせるので、それが好景気へのブレーキ役になるのです。
それ以外では金利が高くなるとどうなるのか?高い預金金利を求めて資金が移動してくるので、通常であれば通貨高になります。NZドルはまさにこの状態で、先週には2000年7月以来22ヵ月ぶりの高値である、1NZドル=0.46米ドル台にまでNZドル高が進みました。0.45~0.46米ドルは心理的上値抵抗線と見られていたので、この水準の突破は相場が新たな展開に入ってきた可能性を強く示しています。単純に言えば、ここ2年間で米ドルを売ってNZドルを買い今でも持っている人は、大なり小なりの利益が出ていることになります。
4月13日の「通貨のスーパー12」でも取り上げたように、NZドル、オーストラリアドル、南アフリカのランドは、今年に入って以来、世界で最も好調に推移している最強3通貨ですから、対米ドルだけでなく他通貨に対しても相対的に強含んでいます。ちなみに、日本円はと言うと、政府の「景気底入れ宣言」を受けて、20日に昨年12月13日以来、約5ヵ月ぶりとなる1ドル=125円台をつけてきました。しかし、NZドルは22ヵ月ぶり高です!
なぜ金利を上げるのでしょう?それはずばり、景気がいいからです。世界中が景気低迷やデフレに苦しみ続け、やっとほのかな改善の兆しが出てきたかどうかという時に、金利を上げてでも景気過熱感からくるインフレを抑えなくてはいけないとは、なんと贅沢な話。これこそがサイクルの妙です。全面的にダメなように見えても、どこかで必ず調子のいい国や金融商品、企業や投資家というものはいるものです。これだけアメリカ経済の影響力が世界的に甚大になり、アメリカがくしゃみをしただけで風邪どころか肺炎になってしまう国が多数ある中で、南半球諸国の逆行は見上げたものです。
「スーパー12」の3ヵ月の中でも3月から利上げに出たのはNZだけで、この急ピッチな利上げ局面はNZ中銀が認めているように、昨年9月の米同時多発テロ以降、景気の落ち込みへの予防的な利下げが行き過ぎたことへの反動で、掛け過ぎた保険を解約しているようなものです。そして、中銀総裁は「NZ は世界的な景気低迷の影響を受けていない」高らかに宣言しています。でも同時に「それは運が良かったことと、景気サイクルからのマイナス影響への対応が抜かりなかったため」と、非常に現実的かつ冷静でもあり、景気同様にのぼせ上がり過ぎてないクールさには◎。
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編集後記「マヨネーズ」
昨年1月のNZ訪問で突然移住を決心したため、私は帰るやいなや、ささやかなへそくりはモチロン、家計のお金にまで手をつけてせっせと香港ドル売りのNZドル買いに出ました。しかし当時の相場は0.44~0.45米ドルと今とさほど変らない高水準で、その後は0.40米ドル割れにまで10%以上値下がりしたことも何度かありました。
通常であれば短期間で1割のやられを出せばビビってしまうところでしょうが、ナンピン買い(買値より下がった時に買い増し平均取得価格を下げておくこと)を続け、
「そんなに香港ドル売ってしまって、今月の支払いにまで事欠く!」
と、家計を預かる夫から悲鳴が出るほどでした。そして今日、やっと買値を上回るNZドル高に・・・。大勢に逆行しているNZの景気サイクルに加え、私にとっては世界的な景気不振の中で、サイクル以上に自給自足的な経済の底力に惚れこんだことが大きな決め手でした。
「どうせ2006年には自国通貨さ♪」
という、行ってまえ的要因もかなりあり、NZ中銀のクールさには程遠いザル投資。実際の移住までにはまだまだ何サイクルもありそうで、波乱含みの展開です。
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後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
「どうせ2006年には自国通貨さ♪」
と言っているところをみると、2002年の段階では4年後の移住を計画していたよう。どこからそんな数字が???一刻も早く行こうと思っていたはずなので、まったく記憶がありません(笑)
最終的に2004年7月に移住決行
猛スピードで走っている車が急には止まれないように、経済でも一度モメンタムという勢いに乗ると、一定のところまで行ってしまうことがよくあります。そして、その反動から今度は逆の方向を目指して一斉に動き出すため、結果的にサイクルが生み出されていくのです。金利だけでなく、景気サイクル、株価サイクルもあるし、今では半導体サイクルという言葉もすっかり定着しています。
NZの2ヵ月で3回の連続利上げというのは、一般的に言えばかなり急ピッチな金利上昇です。勢いがついているのは明白で、このまま行けば第4次利上げも近いでしょう。現にロイターの調べでは、エコノミスト13人のうち、12人が次回の中銀会議がある7月3日にも更に0.25%の利上げがあると予想しています。
1年以内に1%かそれ以上の利上げとなると、預金者にとっては嬉しい話。日本の定期預金金利がやっと1%あるかないかの時に、悠々4%台かそれ以上で預金できるわけです。香港もほぼゼロ金利で最近は口座残高が少な過ぎると口座管理料を徴収され、預金金利を受け取るどころか手数料を支払わないとお金を預かってもらえないというマイナス金利状態に突入しています。しかし、利上げは変動金利で借金をしている場合には、上昇分が金利負担としてのしかかってきますから辛い話です。そのため企業や個人が急速に借り入れを見合わせるので、それが好景気へのブレーキ役になるのです。
それ以外では金利が高くなるとどうなるのか?高い預金金利を求めて資金が移動してくるので、通常であれば通貨高になります。NZドルはまさにこの状態で、先週には2000年7月以来22ヵ月ぶりの高値である、1NZドル=0.46米ドル台にまでNZドル高が進みました。0.45~0.46米ドルは心理的上値抵抗線と見られていたので、この水準の突破は相場が新たな展開に入ってきた可能性を強く示しています。単純に言えば、ここ2年間で米ドルを売ってNZドルを買い今でも持っている人は、大なり小なりの利益が出ていることになります。
4月13日の「通貨のスーパー12」でも取り上げたように、NZドル、オーストラリアドル、南アフリカのランドは、今年に入って以来、世界で最も好調に推移している最強3通貨ですから、対米ドルだけでなく他通貨に対しても相対的に強含んでいます。ちなみに、日本円はと言うと、政府の「景気底入れ宣言」を受けて、20日に昨年12月13日以来、約5ヵ月ぶりとなる1ドル=125円台をつけてきました。しかし、NZドルは22ヵ月ぶり高です!
なぜ金利を上げるのでしょう?それはずばり、景気がいいからです。世界中が景気低迷やデフレに苦しみ続け、やっとほのかな改善の兆しが出てきたかどうかという時に、金利を上げてでも景気過熱感からくるインフレを抑えなくてはいけないとは、なんと贅沢な話。これこそがサイクルの妙です。全面的にダメなように見えても、どこかで必ず調子のいい国や金融商品、企業や投資家というものはいるものです。これだけアメリカ経済の影響力が世界的に甚大になり、アメリカがくしゃみをしただけで風邪どころか肺炎になってしまう国が多数ある中で、南半球諸国の逆行は見上げたものです。
「スーパー12」の3ヵ月の中でも3月から利上げに出たのはNZだけで、この急ピッチな利上げ局面はNZ中銀が認めているように、昨年9月の米同時多発テロ以降、景気の落ち込みへの予防的な利下げが行き過ぎたことへの反動で、掛け過ぎた保険を解約しているようなものです。そして、中銀総裁は「NZ は世界的な景気低迷の影響を受けていない」高らかに宣言しています。でも同時に「それは運が良かったことと、景気サイクルからのマイナス影響への対応が抜かりなかったため」と、非常に現実的かつ冷静でもあり、景気同様にのぼせ上がり過ぎてないクールさには◎。
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編集後記「マヨネーズ」
昨年1月のNZ訪問で突然移住を決心したため、私は帰るやいなや、ささやかなへそくりはモチロン、家計のお金にまで手をつけてせっせと香港ドル売りのNZドル買いに出ました。しかし当時の相場は0.44~0.45米ドルと今とさほど変らない高水準で、その後は0.40米ドル割れにまで10%以上値下がりしたことも何度かありました。
通常であれば短期間で1割のやられを出せばビビってしまうところでしょうが、ナンピン買い(買値より下がった時に買い増し平均取得価格を下げておくこと)を続け、
「そんなに香港ドル売ってしまって、今月の支払いにまで事欠く!」
と、家計を預かる夫から悲鳴が出るほどでした。そして今日、やっと買値を上回るNZドル高に・・・。大勢に逆行しているNZの景気サイクルに加え、私にとっては世界的な景気不振の中で、サイクル以上に自給自足的な経済の底力に惚れこんだことが大きな決め手でした。
「どうせ2006年には自国通貨さ♪」
という、行ってまえ的要因もかなりあり、NZ中銀のクールさには程遠いザル投資。実際の移住までにはまだまだ何サイクルもありそうで、波乱含みの展開です。
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後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
「どうせ2006年には自国通貨さ♪」
と言っているところをみると、2002年の段階では4年後の移住を計画していたよう。どこからそんな数字が???一刻も早く行こうと思っていたはずなので、まったく記憶がありません(笑)
最終的に2004年7月に移住決行