メジャーでは巨人でも「貧乏球団」
ヤンキースが約2億2883万ドル、ドジャースが約2億1659万ドル、フィリーズが約1億6538万ドル、そしてレッドソックスが約1億5065万ドル――。
これらは一体何の数字かといえば、2013シーズン開幕時の各球団のペイロール(メジャー25人枠入りした選手の年俸総額)だ。(
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ヤンキースの総額は、1ドル=105円とすれば、日本円にして約240億2715万円。単純比較することはできないが、同年、日本プロ野球で最も年俸総額 の高かった巨人(約38億1610万円)が、メジャーでは何位にランクされるかと言えば、全30球団中最下位のアストロズ(約2206万ドル)を超えるも のの、29位だったマーリンズ(約3634万ドル)とようやく肩を並べる程度だ。
日本では「金持ち球団」のイメージが強い巨人でも、メ ジャーでは「貧乏球団」と呼ばれるマーリンズと同等の財布しか持ち得ない。野球選手にとって、年俸=自らの能力の評価。日本球界で優秀な選手が育っても、 毎年右肩上がりになる年俸を日本球界が払いきれず、正当な評価=年俸を払うメジャーへ人材が流出せざるを得ない構造がある。
では、メジャー各球団は、一体どうやって高額年俸を支払うだけの収入を得ているのだろう? それがテレビ放映権だ。
フィリーズが結んだ大型放映権契約
先日、フィリーズがコムキャスト・スポーツネット(Comcast SportsNet)と新たなテ レビ放映権契約を結んだと発表した。現在の契約は2015シーズンをもって終了。2016シーズンから、25年間25億ドル(約2625億円)という大型 契約がスタートする。現行の契約では、放映権料は年間3500万ドルだが、新契約では年平均1億ドルまでアップする予定だ。
フィリーズ の場合、今回の契約で得る放映権料のうち、約34パーセントをMLBに上納しなければならない。それでも、今回の契約にはテレビ局の株式を25パーセント 保有すること、そしてテレビ局がフィリーズ戦放送で得た広告収入の一部をチームに還元するという条項が盛り込まれているため、実質は30億ドル以上の価値 があると試算されている。となれば、よほどの大博打を打たない限り、2040年まで、ある程度の余裕を持ちながら、戦力を組み立てていくことができる。
往時のヤンキースを思わせる勢いで、一昨年からドジャースが選手獲得のため、湯水のように資金を投入するようになったのもまた、テレビ局と大型契約を結ん だからだ。こちらは、FOXとタイムワーナーが放映権獲得争いを繰り広げた結果、25年約85億ドル(約8925億円)という浮き世離れした契約が誕生し た。2013シーズンから始まった契約では、年間約3.4億ドルの放映料が球団に支払われることになっている。総額1億ドルを超えると予想される楽天・田 中将大の契約先としてドジャースが有力視される理由が、この資金力に由来する部分も大きいだろう。
その他、今オフは思い切った資金投入 が目立つマリナーズも、2013シーズンからテレビ局との新契約が始まり、年間約1億1500万ドルの放映権が得られるようになった。ここ数年にわたって 積極的な補強が目立つレンジャーズ、エンゼルスも、それぞれ放映権料で年間1.5億ドルを得ており、今やテレビ放映権料なしに球団経営は成り立たない状況 となっている。
現在、2014シーズン終了後に一部テレビ放映権契約が切れるカブスと、2015シーズン終了後に契約終了となるダイヤ モンドバックスが、新たな契約を目指して交渉中だという。この2チームがどんな放映権契約を結ぶのか、そしてその金額が今後のチーム経営にどれだけ大きな インパクトを与えるのか、注意してみると面白いだろう。