航空自衛隊が次期主力戦闘機として配備を決めたのが、世界最新鋭のステルス戦闘機F-35だ。1974年から配備を開始したF-4ファントムIIの後継機種として、2016年から配備を開始する。
今、中国軍機は、沖縄県・尖閣諸島周辺をはじめとして、日本の領空近くでの示威飛行をほぼ毎日のように行っている。その都度、那覇基地などから戦闘機を緊急発進させ、対処している。
これをスクランブル発進と呼び、その回数は昨年943回を数え、東西冷戦当時に匹敵する事態となった。943回のうち、中国軍機によると思われるのが464回。国籍が判明しなかっただけで、中国軍機である可能性を秘めたものも多く、この数はさらに増える。
こうした状況に対処するため、まず老朽化したファントムで構成されている第302飛行隊を那覇基地から百里基地(茨城県)へ移駐した。その代わりとして、F-15で構成される第204飛行隊を、百里基地から那覇基地へ移した。さらに、2016年にはF-15で構成される第304飛行隊を築城基地(福岡県)から那覇基地へ移駐させる。
九州にできた穴を埋めるため、国産戦闘機であるF-2で構成される第8飛行隊を、三沢基地(青森県)から築城基地へと移駐させる計画もある。こうして、継ぎはぎのような部隊運用を強いられているのが現状だ。
ただ、F-15もF-2も、すでに配備から15~30年がたつ機体であり、最新鋭化を進める中国軍機との均衡を保つのが難しくなった。
そこで、F-35が導入されることになった。
F-35は「統合打撃戦闘機」という新しいタイプの戦闘機だ。海空海兵隊及び同盟国空軍が同一の機体を使用することで、相互運用性の向上や、大量生産に伴うコスト減を成し遂げるため開発された。それぞれ異なるニーズに応えるため、戦闘機型のA型、垂直発着艦が可能なB型、空母艦載用のC型と3タイプある。空自が導入するのはA型だ。
対空・対艦・対地とあらゆる戦闘に対応できる多用途性が高く、それでいて高度にコンピューター化されたためパイロットの負担はこれまでよりも軽減される。米軍は「F-35の後継は無人機となる」と公言している。
日本がF-35の配備を決めた衝撃は、韓国を動揺させた。韓国空軍はすでに次期主力戦闘機としてF-15サイレントイーグルと決めていたのだが、日本との均衡が保てなくなることを理由に白紙撤回し、慌ててF-35に決めた。
アジア地域をステルス機が飛び交う時代が間もなくやってくる。
■菊池雅之(きくち・まさゆき) フォトジャーナリスト。1975年、東京都生まれ。講談社フライデー編集部を経てフリーに。陸海空自衛隊だけでなく、米軍やNATO軍、アジア各国の軍事情勢を取材する。著書に『こんなにスゴイ! 自衛隊の新世代兵器』(竹書房)、『ビジュアルで分かる 自衛隊用語辞典』(双葉社)など。
築城基地撮影同好会提供
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