市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

公社事件のツケを後世に残さぬよう、タゴの再提訴を促すために住民監査請求

2009-04-01 02:39:00 | 土地開発公社51億円横領事件

■タゴ事件のツケが子々孫々に及んでは申し訳ない。今を生きる我々安中市民の殆どはそう思っています。

 ところが不幸なことに、当時、タゴと一緒に、土地ころがしの利権の旨みをしった元公社理事・監事らは、タゴ一人だけを単独犯にして、自分たちに事件の火の粉が及ばぬように、この前代未聞の巨額詐欺横領事件の真相を隠蔽してしまいました。司直が捜査をしても、14億数千万円もの使途不明金が残ったことからも、タゴ事件の深淵がどのくらいドス黒いか、一般市民には想像もつきません。

 安中市土地開発公社の発足後まもなく、公社の監事を歴任し、その後も、理事に就任するなど、タゴとの係わり合いの深い岡田市長は、事件の真相を最もよく知る人物の一人ですが、事件発覚当時は、なにもコメントをしませんでした。そして、皮肉なことに、事件発覚後14年を経過し、あと半年後には、タゴが刑期を終えてこようというときに、市長として、この事件に関わることになりました。

 岡田市長は、当会が公社の歴代の理事監事ら役員と、公社事務局のタゴの上司、同僚らを相手取り、損害賠償請求をした際にも、他の者達が和解を申し出たにもかかわらず、唯一和解に応じず、最後まで判決に拘り、公社の損害は市に及ばず、したがって、安中市民には訴訟の利益がないとして、勝訴を勝ち取ったのでした。


↑国道18号線脇に建つタゴ事件のシンボルの一つで、いまや安中の負の名所でもある旧・喫茶「珈琲ぶれいく」。昨年2月から韓国風家庭料理店サランバンが営業していたが、いまでは不動産屋が仲介して「売り出し中」の張り紙がしてある。かつて、平日の昼下がり、タゴは役所を抜け出して、ここでバーテンとして客にコーヒーをいれたり、荒稼ぎ案件だった古城団地の造成で県企業局の担当者をここに呼んで飲食を振舞ったなどなど、話題は尽きない。もちろん店内にも古伊万里などを展示していた。↑

■ところが、岡田市長は、市長に就任後、2ヶ月もたたないうちに、安中市土地開発公社理事長にも就任し、群銀への和解条項で、最初の10年の期限が到来する1年以上も前から、群銀に何度も参拝し、群銀のご機嫌を取るなどして、その行動に注目が集まりました。タゴ事件で103年ローンを抱えている安中市の納税者でもある住民としては、岡田市長が、安中市土地開発公社理事長に就任したら、直ちに、千葉刑務所に行き、タゴの所在を確かめてから、弁護士と相談して、どうしたら、タゴから損害金を取り戻すか、そのことに尽力してもらえるのではないかと期待していました。群馬銀行との和解金交渉などは二の次でよいからです。

 しかし、昨年来の岡田市長の行動は、タゴとの交渉は忘れたかのように、群銀の機嫌ばかりをとってきたのでした。そして、群銀への和解金支払いは、今後10年間、当初の群銀の思惑通りに、安中市が支払うことで話がきまった途端、岡田市長は、あたかもこれで一件落着といった感じているのかもしれません。でも、それでは困るのです。

 そこで、当会は、安中市土地開発公社がタゴを相手取り損害賠償請求をして、勝訴した平成11年5月31日をあと2ヵ月後に控えたこの時期が、最後の機会だと考えて、昨日、安中市監査委員宛に、岡田市長に関する措置請求、いわゆる住民監査請求をおこないました。おそらく、本日、安中市監査委員事務局の届くはずですから、4月1日受理の可能性があります。しかし、些細な形式論ばかりうるさい監査委員事務局ですが、これまで何度も行なった監査請求は全て、監査委員意が棄却ないし却下、あるいは不受理とされたため、今回も同様な心配があります。

■住民監査請求の全文は次のとおり。

**********
【住民監査請求書】
安中市職員措置請求書
1.安中市長岡田義弘に関する措置請求の要旨
 約10年前、安中市土地開発公社が、元職員多胡邦夫を相手取り、前橋地裁に提訴した損害賠償請求事件(事件番号:平成11年(ワ)第165号)は、平成11年(1999年)5月31日(月)に、「被告(多胡邦夫)は原告(安中市土地開発公社)に対して、金22億2309万2000円を支払え。訴訟費用は被告が負担するものとする」との判決により、安中市土地開発公社が勝訴し、請求権が発生した。しかし、その後、元職員から返済された金額は1488万500円に過ぎず、それも、安中市土地開発公社と連帯保証人である安中市が、元職員の税金や、不動産の換価等で回収したものであり、元職員から自主的に返済した金額は皆無と見られる。
 民法第166条(消滅時効の進行等)及び民法第167条(債権等の消滅時効)によれば、「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する」「債権は、10年間行使しないときは、消滅する。」と定めている。
 安中市土地開発公社が元職員を相手取った損害賠償請求事件の判決日は上記のように平成11年(1999年)5月31日であり、権利を行使することができる時が判決日、あるいは、判決が確定した判決日の2週間後の6月14日であるとしても、遅くとも5月31日までに、元職員に対して裁判上の請求(訴訟・支払督促など)を行わない限り、それ以降に、元職員から時効の援用を告げられた途端に、巨額の請求権が失われるリスクがある。
 元職員を相手取った損害賠償請求事件では、訴額22億2309万2000円について、判決後に当時の安中市土地開発公社の石井博明事務局長は「群銀との和解金からタゴが水増ししていない正規の借入分を差し引いた金額だ」と説明した。
 一方で、安中市が100%資本金を出資している安中市土地開発公社は、元職員の巨額詐欺横領事件による群馬銀行との和解条項に基づき、安中市長の連帯保証を得て、群馬銀行に対して、当初4億円、その後、平成20年12月25日に至るまでに、毎年2000万円ずつ10年間、合計6億円を支払い、さらに今後10年にわたる和解金の支払いを約束する「証」と称する公文書を平成20年12月26日に群馬銀行に差出したため、安中市土地開発公社としては、時効の援用を宣言することができなくなった。
 このまま元職員に対して、平成21年5月31日までに裁判上の請求を行わずに放置すれば、安中市土地開発公社は、自ら和解金全額を工面しなければならなくなる。ところが、安中市土地開発公社は、そもそも特別法人であり、基本的に利益を出すことが目的の組織ではなく、安中市の連帯保証無しには、金融機関からの融資さえ受けられないペーパー組織である。
 かかる実態にありながら、これまで、安中市は、「巨額不祥事件による損害は、安中市とは別法人の安中市土地開発公社内部で発生したものであり、安中市民には損害がない」と市民の説明し、かつて、安中市を相手取り住民訴訟を提起した市民団体に対しても同様に主張し、裁判所もその主張を認めて安中市勝訴の判決を下した経緯がある。本来であれば、安中市土地開発公社自身が、元職員とかかわった歴代の理事や幹事らの役員から損害を補填させるべきところであるが、事件発覚後これまでの14年間においてそうした姿勢はまったく見られない。
 そのため、元職員に対して、再度、裁判上の請求をしない場合、安中市土地開発公社が今後、群馬銀行に対して、和解に伴う巨額の債務を支払う過程で、債務負担に耐えかねて安中市から公金を資本注入しなければならない事態も、十分想定される。これに関連して、先日の3月定例市議会では、安中市長が財政調整基金を取り崩して、安中市土地開発公社に貸し付けようとする議案も提案されている。ちなみにこれは全会一致で否決されたと聞くが、このように安中市と公社では、かつて元職員が横領を既に働いていた公社で理事や監事をしたことのある同じ人物が代表者になっており、あの手この手で、公社に対して公金を投入しようとしているので油断できないのである。
 損害賠償請求を怠る場合、財産の管理を怠ることになるばかりか、和解金の支払のため、借り入れ等による債務その他の義務の負担を生じる可能性が高くなるのは明白である。しかも、現在の経済状況を俯瞰する限り、そのような可能性について誰も否定できないというべきである。
 かかる状況下において、安中市の財務会計上の行為として、借り入れ等による債務その他の義務の負担が、相当の確実さで予測される。また、実際に、元職員への損害賠償請求を怠れば、財産の管理を怠る事実が確定することになることから、これを未然に防ぐ意味でも、元職員への再提訴は必要不可欠のものであり、不可避である。
 よって、元職員に対する損害賠償請求の再提訴を怠っている安中市には、債務その他の義務の負担が相当の確実さで予測されるために、安中市監査委員は、岡田義弘安中市長に対して、連帯保証先の安中市土地開発公社理事長をして、必要な損害の回収について、元職員多胡邦夫を相手取り、再提訴させることを求める。
2 請求者
    住所 安中市野殿980
    職業 会社員
    氏名 小川賢(自署) 印
地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明を添え、必要な措置を請求します。
平成20年3月31日
安中市監査委員あて

【事実証明書】
1 広報あんなか 2009年2月号 8頁(元職員に対する債権回収について)
2 平成20年12月26日付安土開発第80号「和解10年後における「証」の連帯保証について
3 平成20年12月26日付安企発第20224号「和解10年後における「証」の連帯保証について
4 平成20年12月26日付、債務者・岡田理事長、連帯保証人・岡田市長による群馬銀行宛「証」
**********

■この監査請求書を市の監査委員事務局が受理すれば、60日以内に安中市監査委員の結果が出るはずです。どんな経緯をたどって、どんな結果が出るのか、今から楽しみです。本件の経過については、逐次、当会のこのブログで報告していきたいと思います。

【ひらく会事務局】

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協定書無効確認でサイボウに勝訴し更に弾みがつく?安中市の廃棄物行政

2009-04-01 02:25:00 | 全国のサンパイ業者が注目!
■平成21年2月2日に開催した安中市議会全員協議会で、岡田市長は、1月28日(水)に、原告のサイボウ環境㈱が、平成20年7月2日に、安中市を相手取って提訴した裁判の判決で、被告の安中市が勝訴したことを報告しました。

 サイボウ環境㈱は、埼玉県さいたま市に本社を持つ㈱サイボウが、15年以上前に、安中市議会の元議長だった不動産屋と一緒に設立した会社で、その後、行政や関連業者らとつるんで、さまざまな違法行為を行なってきたことは、これまでにも報告したとおりです。

 2月2日の安中市議会全員協議会に提出された資料によれば、安中市市民部環境推進課によるこの訴訟に関する報告内容は、次のとおりです。

*********
<経過報告>
平成20年
7月2日 サイボウ環境株式会社が前橋地方裁判所民事部に提訴する。
7月15日 前橋地方裁判所民事第1部より第1回口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状が到達する。事件番号 平成20年(行ウ)第6号協定書無効確認請求事件、原告 サイボウ環境株式会社 代表取締役 結城剛、被告 安中市代表者 市長 岡田義弘。
7月29日 市から答弁書を前橋地方裁判所民事第1部及び原告訴訟代理人弁護士宛に送付する。
8月5日 原告より準備書面1が到達する。
8月6日 第1回口頭弁論が前橋地方裁判所第21号法廷で開かれる。
9月8日 市から準備書面(1)を前橋地方裁判所民事第1部及び原告訴訟代理人弁護士宛に送付する。
9月24日 第2回口頭弁論が前橋地方裁判所31号ラウンドテーブル法廷で開かれる。
11月5日 第3回口頭弁論が前橋地方裁判所31号ラウンドテーブル法廷で開かれる。
平成21年
1月28日 前橋地方裁判所第21号法廷にて原告の請求を棄却する判決が言い渡される。

<訴状要旨>
サイボウ環境(株)が大谷地区内に開設した一般廃棄物鍛終処分場を設置する際に平成10年6月5日に安中市と締結した協定書の第3条項(県外規制条項)が無効であることの確認を求めて提訴する。

<裁判所の判断>
本件条項は、上乗せ規制といえるようなものではなく、かつ、合理性を欠き公序良俗に違反するものではないため、本件条項が無効であるということはできない。
**********

↑現在のサイボウ環境の処分場の様子。稼働後2年が経過し、すでに最下層部分はほぼ埋め立てられていることがわかる。相当量のゴミが搬入されているのに、なぜサイボウ=イーステージは県外ゴミにこだわるのだろうか。↑


↑処分場の前で燦然と風にはためく当会の「無法地帯」アピール旗と立看板。サイボウ処分場の手続きの歴史は違法行為のオンパレードでもあった。↑
■この裁判は、当会が平成5年から反対運動を展開してきたサイボウによる廃棄物処分場施設の設置に関連して、当時の中島市長と、サイボウとサイボウ環境の結城文夫社長との間で、平成10年6月5日付で締結した協定書のうち、「群馬県内の自治体からのゴミに限る」とする内容について争われたものです。

 サイボウの主張は「実質的には安中市と館林市の焼却灰しか持ち込めておらず、このままだと投資金額に見合う収入が得られないので、協定書の内容を変更して、県外からのゴミの受け入れも認めること」というもので、サイボウの結城文夫・前社長の息子の結城毅・現社長が、東京の野村創・弁護士を起用して、安中市を提訴した協定書無効確認裁判です。

 しかし、実際には、サイボウは名義貸しのダミー会社で、長野県のイー・ステージがサイボウのバックにおり、実質的に安中市大谷地区のゴミ処分場の運営や営業をやっているので、サイボウ=イー・ステージに読み替えることができます。

■この裁判には不可思議なことがいくつかあります。
1) サイボウは、なぜ、廃掃法により処分場の許可を出した群馬県ではなく、安中市を相手取って提訴したのか。
2) サイボウは、処分場建設で、群馬県や安中市に、長年にわたり何度も違法行為を黙認してもらったのに、なぜ処分場稼動後わずか1年3ヶ月で、安中市を訴えたのか。
3) 手間と費用をかけてまでも提起した裁判で、サイボウは何を目的としたのか。
4) この裁判でメリットを享受したのは誰か。

 この裁判で岡田市長は、「廃掃法上の許可権者は市ではなく群馬県であり、県外ゴミの搬入を認めないという条件を県知事に出しただけで、市が本件協定を無理矢理結ばせたわけではない」と主張しています。従って、本来であれば、サイボウは群馬県に対して、当初の設置条件である「県内に限る」ゴミの搬入条件を、「県外ゴミも含む」というふうに変更手続をすればよいはずです。

 あるいは、変更手続きの場合、サイボウは、苦労して平成11年に取得した知事の認可が白紙に戻されかねないと心配したのかもしれません。変更手続きをすると、実際にはサイボウではなく、長野県のイー・ステージが事業を取り仕切っていることも説明しなければならなくなります。いくら政治力を使っても、下手をするとせっかくのこれまでの苦労がパーになったら元も子もありません。

■その点、安中市の一般ゴミも持ちませないという中島前市長当時の方針を覆して安中市の一般ゴミ焼却灰等の受け入れに応じてくれた岡田市長にこの件も相談すれば、すぐに相談に乗ってくれたはずです。それなのに、なぜ、手間と費用をかけて、裁判所に訴えたのでしょうか。

 直接的にメリットがあったのは、原告サイボウの訴訟代理人の弁護士でしょう。僅か3回の口頭弁論で済み、訴状と準備書面1を作成しただけですが、おそらく相当な着手金が支払われているはずです。

 一方、被告安中市としては、理不尽な裁判ですが、売られたケンカを買わなければ、「サイボウとの癒着」が取りざたされてしまいますから、直ちに応訴する必要があります。通常は、安中市の顧問弁護士である渡辺明男弁護士に相談して、訴訟代理人になってもらうところですが、今回はなぜか市職員3名を指定代理人として起用しただけで、弁護士には相談したかもしれませんが訴訟代理人の依頼はしませんでした。最初から勝訴を確信していたのかもしれません。

 判決に「訴訟費用は原告の負担とする」とあるので、今回のような特定の業者の利害にかかる訴訟では、当然、市職員が本件訴訟に要した費用等はサイボウに請求すべきものと考えられます。果たして、訴訟費用として、サイボウに請求したのかどうか、請求したのであれば、請求額はいくらなのか、安中市に聞いてみたいところです。

■さて、当会が注目したのは判決文の「3 争点(本件条項の違法性の有無)について」「(1)上乗せ規制について」の項で、裁判所は「・・・群馬県による御製指導により本件協定の締結が強制されたのではなく、原告が任意に本件協定を締結したものであると認められる」としており、「上乗せ規制に該当しない」と判断しています。

 本来、搬入ゴミの条件を変更することは、大きな条件変更に当たりますから、群馬県に対して、改めて変更承認手続きを行なう必要があります。

 しかし、処分場が出来上がってから、このような大きな変更を群馬県に相談すれば、もう一度設置許可手続きを行なえ、と言われかねません。安中市や群馬県を巻き込んで、数々の違法行為を犯してきたサイボウには、行政の担当者も相当懲りており、処分場が稼動してから、このような変更手続で再度許可などだせば、地元住民からもアンフェアだと非難されてしまいます。

■当会の推測としては、おそらくサイボウが群馬県知事ではなく、安中市長を相手取って裁判を提起した目的は、はじめから敗訴が目的だったのではないか、というものです。判決によれば、市とサイボウとの間で締結された協定書は、群馬県の行政指導により強制されたのではなく、サイボウが安中市と任意に締結したものであるとなっています。

 確かに、協定書には、群馬県知事の名前は入っていません。となると、任意に締結された協定内容により、協定書の内容を変更すれば、つまり安中市長がOKすれば、県外ゴミの持ち込みも可能ということになるのかもしれません。

 判決では「2 確認の利益の有無」について、「①本件条項は、県外で排出された廃棄物の搬入を禁止する唯一の根拠とされていること、②一般に道理的な目的ないし根拠がないのに私人の自由を制約することは、公序良俗に反し、無効であると解される場合もあること、③原告(サイボウ)が本件条項に違反した場合の不利益を具体的に予測することは必ずしも容易ではないことなどの事情からすれば、本件条項の無効確認を求めることは原告にとって最善かどうかは別として有効適切であると解される」として、原告の訴えの利益を認めています。

■もし、今後、安中市が協定書の内容を変更するようなことがあっても、あくまで当事者間の任意の意思で決定したと主張すれば、群馬県はなにも言えなくなります。そうした事態になれば、全国各地の民営の一般廃棄物処分場には、どこからでもゴミが持ち込めるようになり、焼却灰に得体の知れない危険な廃棄物を混ぜ込ませてマニフェストも改ざんしてしまえば、サンパイだって、持ち込めることになります。

 判決文の中で、当会の反対運動についても言及があります。被告は「処分場設置に反対する住民運動も激しかったことから、地元の住民感情を考慮した場合、少なくとも県外からの一般廃棄物の搬入は認めないとすることが妥当であると判断した」と陳述し、裁判所も「本件処分場の設置計画に対し、周辺住民等の激しい反対運動があり、安中市議会にも256名による設置反対を趣旨とする請願書が提出されていた」と事実認定しています。しかし、当時、当会の陳情、請願、提訴の際に、安中市はサイボウの肩を持ち、裁判所も行政の肩を持つことで、結局、サイボウの数々の違法行為を追認ないし黙認したことは、安中市も裁判所も、もう忘れてしまったようです。でも、当会は決してこのことは忘れられません。

 岡田市長は、「サイボウとの訴訟に勝った」と市議会に報告していますが、以上のように裁判の過程での当事者らの動機や背景が全く不透明なので、真相は直接当事者らに聞いてみないことにはよくわかりません。とにかく今後、岡田市長がサイボウとの関係をどのように進めるのか注目されます。

【岩野谷の水と緑を守る会】

※なお、判決に立ち会った市職員の報告と、判決文の全文は次のとおりです。

**********
【市民部の回議用紙】
起案者   市民部環境推進課廃棄物対策係 職名 課長補佐 氏名 真下 明 内線(1121)
決裁区分  市長
決裁    市長・岡田 部長・原田 課長・多胡 係長・真下 係・中曽根 公印・-
関係部課合議 総務部長・秋山、秘書行政課長・鳥越
課内供覧   環境衛生係長・竹内
件名 平成20年(行ウ)第6号協定書無効確認請求事件(判決言渡)
1 判決言渡
(1)日   時 平成21年1月28日(水)午後1時10~1時15分
(2)場   所 前橋地方裁判所2階第21号法廷
(3)出 席 者 原 告 野村弁護士、高山和之取締役
         被 告 多胡 正、真下 明、吉田 隆(以上指定代理人)、原田勇市民部長
(5)裁判官氏名 (裁判長)小林敬子(裁判官)渡邉和義、青野卓也(書記官)米山哲雄
(6)内   容 裁判長から、判決の言い渡しがあり、市が勝訴する。詳しい内容については別紙謄本の通りです。

【判決】
平成21年1月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成20年(行ウ)第6号 協定書無効確認請求事件
口頭弁論終結日 平成20年11月5日
  判 決
    群馬県安中市大谷1900番地1 原告 サイボウ環境株式会社
           同代表者代表取締役 結城 剛
           同訴訟代理人弁護士 野村 創
    群馬県安中市安中一丁目23番13号 被告 安中市
           同代表者市長    岡田義弘
           同指定代理人    多胡 正
           同         真下 明
           同         吉田 隆
   主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
   事実及び理由
第1 請求
 原告と被告との間の平成10年6月5日付け別紙協定書第3条項は無効であることを確認する。
第2 事案の概要
1 本件は、一般廃棄物管理型最終処分場(以下「本件処分場」という。)を有する原告が、被告に対し、被告との間で締結した別紙協定書(以下「本件協定書」という。)記載の公害防止協定(以下「本件協定」という。)のうち、本件処分場に搬入できる一般廃棄物を群馬県内で排出されたものに限定する旨の条項(第3条。以下「本件条項」という。)が無効であることの確認を求める公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条)である。
2 前提事実(認定事実は末尾に証拠を摘示)
(1)当事者
 ア 原告は、一般・産業廃棄物の最終処分業並びに収集運搬業を主たる業務とする株式会社であり、群馬県安中市(平成18年3月18日に同県碓氷郡松井田町と合併しているが、以下、合併の前後を通じて「安中市」又は「被告」という。)内に本件処分場を有している。
 イ 被告は、原告と本件協定を締結した普通地方公共団体である。
(2)本件協定書
 ア 原告が本件処分場を設置するに当たり、原告と被告は、平成10年6月5日に本件協定を締結した。
 イ 本件協定書には、下記の条項が含まれている(なお、下記の条項中、「甲」は被告を指し、「乙」は原告を指す。)。
   記
(搬入する廃棄物)
第3条 乙が処分場に搬入するものは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に定める一般廃棄物のうち、群馬県内の市町村及び一部事務組合(以下「市町村等」という。)の一般廃棄物の処理施設から排出された焼却残灰(熱しやく減量10%以下)、不燃物残漬及び汚泥(以下「廃棄物」という。)に限定し、その他は一切搬入しないものとする。ただし、汚泥については別途三者間公害防止協定書の事前協議において、甲の承認を得たものとする。
(搬入の方法等)
第5条
2 廃棄物を搬入するにあたっては、甲、乙及び市町村等との間で別紙様式による三者間公害防止協定書を締結するものとし、協定がなされた市町村以外からの搬入はしてはならない。
(廃棄物の搬入時間等)
第6条
2 乙は、1日の搬入台数を20台以下とするものとし、時間調整をしながら分散して処分場に搬入するものとする。
(施設設置の同意)
第15条 乙が以上の項目を遵守することを条件に、甲は施設の設置を認めるものとする。
(甲3)
(3)群馬県における廃棄物処理施設の設置許可申請に係る行政指導の手続
 群馬県では、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」という。)8条に基づく一般廃棄物処理施設の設置許可申請に先立つ行政指導等の手続として、「群馬県廃棄物処理施設の事前協議等に関する規程」(以下「指導要綱」という。)が定められているところ、そのうち本件に関連する部分の要旨は以下のとおりである。
 ア 設置構想書の提出等
 (ア)一般廃棄物処理施設の設置等をしようとする者(以下「協議者」という。)は、設置場所や計画の概要等を記載した廃棄物処理施設設置等構想書(以下「設置構想書」という。)を同施設を設置しようとする場所等を管轄する保健所長に提出しなければならない。(7条1項)
 (イ)設置構想書の提出を受けた保健所長は、現地を管轄する市町村や同市町村に隣接している市町村(以下「関係市町村」という。)等と合同で現地の調査を行い、関係市町村の長に対し、設置構想書についての意見書の提出を求める。(8条1項、2項)
 (ウ)a 保健所長は、上記現地調査の結果、設置構想書の内容が、所定の基準に適合すると認められ、かつ、関係市町村の長の了解が得られた場合には、協識者に対し設置構想書についての承認を行うものとし、廃棄物処理施設設置等事前協議書(以下「事前協議書」という。)の提出を指示する。(同条3項)
    b 保健所長は、設置構想書の内容が不適当と認められる場合には、協議者に対し不承認の通知を行うものとする。(同条4項)
    c 保健所長は、関係市町村の長の了解を得られない場合には、協議者に対し関係市町村との調整を行うべきことを指示し、これを受けた協議者は、関係市町村との調整を行い、2年以内に関係市町村との調整結果報告書を保健所長に提出するものとする。(同条5項、6項)
 なお、保健所長は、協議者から当該指示を行った日から2年以内に上記報告書の提出がないときは、不承認の通知を行うものとする。(同条7項)
 イ 事前協議書の提出等
 (ア)上記ア(ウ)aの事前協議書の提出の指示を受けた協議者は、指示を受けた日から2年以内に事前協議書を、設置構想書を提出した保健所を経由して、群馬県知事に提出しなければならない。(9条1項)
 (イ)事前協議書の提出を受けた群馬県知事は、その内容を審査して、審査結果を付して群馬県廃棄物処理施設等審査会(以下「審査会」という。)に諮問するものとし、審査会は、事前協議の内容について調査検討して、その結果を群馬県知事に報告する。(10条1項、2項)
 (ウ)群馬県知事は、関係市町村の長に事前協議書の副本を送付し、計画に対する生活環境保全上の見地からの意見を求める。(11条)
 (エ)群馬県知事は、審査会の報告等に基づいて、協議を受けた事業計画の内容が法令及び群馬県の諸規程に照らして適当と認めるときは承認の通知を行い、不適当と認めるときは不承認の通知を行うものとする。(12条第1項)
 ウ 設置許可申請
 一般廃棄物処理施設等に係る設置許可申請等は、群馬県知事からの上記イ(エ)の承認通知書を受けた後に行うものとする。(17条)(甲4,5)
3 争点
 本件条項の違法性の有無
4 争点に対する当事者の主張
(1)原告
 ア 上乗せ規制
 (ア)本件協定の締結が強制されたこと
  a 原告は、平成5年ころより、本件処分場の許可申請行為(設置構想書の提出、事前協議を含む。)を行ってきていた。
 当時の群馬県における廃棄物処理施設の設置許可の手続のうち、設置構想書の提出あるいは事前協議書の提出等は、法令(法律、政令、省令及び条例)に基づくものではなく、指導要綱にその根拠を置くものに過ぎない。
 この手続の過程において、原告は、安中保健所長より「平成5年11月29日付けで提出のあった廃棄物処理施設等設置構想書について、安中市長の意見を求めたところ計画について了解が得られなかったので、群馬県廃棄物処理施設の事前協議等に関する規程8条5項の規定により安中市長との調整を指示します。(中略)期日までに調整結果報告書が提出できない場合は安中市長の了解が得られる見込みがないものと判断し、本構想書については不承認としますので念のため申し添えます」との通知を受けたところ,文面から明らかなとおり、安中市長の了解を承認、不承認の条件とするものであり、かつ、法令上の根拠は存在しないものの,設置構想書が不承認とされた場合、事実上、本件処分場の設置が許可される見通しはない状況であった。
 そこで、原告は、安中市長の処分場設置の了解がなければ、本件処分場の設置許可がなされないものと判断し、平成10年6月5日、安中市長と本件協定を締結した。
  b 安中市長の了解が処分場設置許可の事実上の条件とされていることは、本件処分場の許可書(甲1)及び許可証(甲2)に、留意事項として、「平成10年6月5日に安中市長と締結した協定書の各条項を遵守すること」との記載があることからも明らかである。
 また、本件条項は、形式的には協定書の形態をとり、いわゆる講学上の行政契約と目されるが、本件協定書第15条では、「乙が以上の項目を遵守することを条件に、甲は、施設の設置を認めるものとする。」との条項が存在し、本件処分場許可取得に当たっては、本件協定の締結が事実上強制されている。以上のように、本件協定の実質が強制の契機を含み、被告の承認がなければ現実的に許可が取得できず、本件条項により廃棄物の搬入元を制限し、私人の権利義務を制限する内容となっていることから、本件協定は、実質として、権力的規制手段である行政規則と同視できるものである。
 (イ)上乗せ規制に該当すること
 そして、本件条項の趣旨は、群馬県内の市町村等以外の市町村からの一般廃棄物の搬入を認めないという内容であり、原告の営業権に対する規制である。
 ところで、一般廃棄物処理施設の設置許可及び維持管理基準として、廃掃法8条の2第1項及び同法施行規則(原告は「同法施行令」としているが、同法施行規則の誤りと解される。)4条ないし4条の2の2では、当該一般廃棄物が排出された場所等については、何らの規制もない。
 すなわち、廃掃法は、生活環境保全の見地から廃棄物処理施設(最終処分場を含む。)の設置、維持管理に当たって、当該廃棄物の有害物質による地域住民への健康被害の防止の観点から技術上の規制及びこの技術上の規制を達成しうる設置者の能力に関する規制のみを定め、当該廃棄物が、当該処分場の設置されている地方公共団体から排出されたものか、他の地方公共団体で排出されたものであるかは全く規制の対象外としているのであり、処分場が枯渇している本邦の現状にかんがみれば、法の趣旨は、廃棄物をどこから搬入するかは、事業者の自由に任される趣旨であると考えられる(いわゆる法律の先占領域)。
 本件条項は、法律の先占領域につき、より厳しい規制をなそうとする、いわゆる上乗せ規制であり、地方自治法15条1項に違反するものである。
 イ 合理性の欠如
 (ア)どこの市町村であれ、現在、排出される一般廃棄物(いわゆる家庭ゴミ)に有害物質の含有量の多寡等の差異はない。そもそも、一般廃棄物の収集、運搬、処理は、地方公共団体の責務である(廃掃法6条、6条の2第1項)。一義的には、当該市町村がその処理責任を負うが、廃掃法の基準に従い、許可を得た事業者にその処理等を委託することができる(同法6条の2第3項)。
 本件処分場に搬入される一般廃棄物は、当該市町村が廃掃法の基準に従い自ら収集したか、許可を有する受託者が廃掃法の基準に従い収集したものである。すなわち、全国一律の基準で収集されたものであり、現在、市町村による差異は、構造的に存在し得ない。まして、群馬県内の市町村等と他都道府県の市町村等との間に特段の差異は存在しない。
 本件協定の目的は、廃掃法の目的である地域住民の生活環境の保全に理性を有しない違法な条項であるから、公序良俗に違反し無効である。
(2)被告
 ア 上乗せ規制について
 (ア)安中市長の了解(本件協定の締結)は、法令上の許可要件ではないところ、原告がこれを承知しながら、本件協定を締結したのは、原告自らが本件協定書の内容でも経営的に問題がないと判断したためである。
 また、被告は、廃掃法上の許可権者ではなく、許可権を盾に原告に本件協定を締結させたわけではなく、意見書における条件の一つとして、県外からの一般廃棄物の搬入を認めないこととし、併せて本件協定の締結を求めたものである。
 さらに、被告は、許可権者である群馬県知事に本件処分場が設置される市の立場として意見を述べただけであり、この意見書をどう取り扱うかについては、あくまでも群馬県知事の裁量の範囲内であって、この意見に従うかどうかは、原告の自由である。安中保健所長から調整を求め   られたときに、原告としては、本件条項が不合理なものであり、原告の営業を圧迫するため条件から外すよう努力すべきだったのに、許可を急ぐあまり、本件条項が原告に与える影響を深く考慮することなく本件協定に合意したものであって、被告が本件協定を無理矢理締結させたわけ   ではない。
 (イ)本件協定は、地方自治法15条に定める規則には該当しないし、もともと規則は条例と違って、相手に義務を課したり、権利を制限することはできない。また、行政規則は、訓令、通達、要綱等の行政内部の決まりであって、法規の性質を有しないものである。
 (ウ)よって、本件協定は、行政契約に当たり、被告と原告との間で、お互いの合意に基づき締結された公法上の契約として法的拘束力を有するものであるから、原告の営業権を違法に規制するものではない。
 イ 合理性の欠如について
 (ア)被告が本件条項を入れた趣旨は、首都圏の一般廃棄物が焼却灰に姿を変えて流人することは好ましいことではなく、処分場設置に反対する住民運動も激しかったことから、地元の住民感情を考慮した場合、少なくとも県外からの一般廃棄物の搬入は認めないとすることが妥当であると判断したことによるものである。
 また、当時は一般廃棄物処分場のダイオキシン汚染が社会問題となっており、住民の不安も高まっていたため、被告としては、処分場に搬入される一般廃棄物に対する住民への説明責任から、廃棄物の迅速な調査が可能な範囲として県内に限る必要があった。
 本来、一般廃棄物に対する行政の責務は、自区内で出た廃棄物は、全て自区内で処理する自区内処理が原則である。つまり、国の内外を問わず、廃棄物の処理はでき得る限りその排出地域に近いところで行うべきであるとされており、県外からの廃棄物搬入を規制している自治体も多い。
 もともと、都市部の廃棄物を処分場の用地確保が困難という理由だけで、地方に押し付けていいはずはなく、こうした点からも本件条項は合理性を欠いていない。
 (イ)そもそも、原告は、本件条項に不満があったならば、被告や反対する地元住民に対して、本件条項が不合理であることを十分に説明して理解を求めるか、許可権者である群馬県知事(安中保健所長)の指導又は仲介を仰ぎ、本件条項を削除する努力をすべきであったにもかかわらず、これをせず、本件処分場の設置が許可されてから、今更不合理であると主張するのは、信義則に反するものである。
 (ウ)さらに、原告は、群馬県知事に県内市町村の一般廃棄物の排出状況から、本件処分場の施設規模の適正化等について補正が指示され、施設規模を縮小する旨の補正を自ら行っている。
 つまり、原告は、本件処分場の規模が、県内市町村の一般廃棄物の処理を基準としていることを当初から認識しており、これ以外に県外市町村の一般廃棄物を受け入れることは、予定していなかったはずである。
 しかも現在、原告は、群馬県内においては、被告と群馬県館林市の2市の一般廃棄物の処理しか受託していない。にもかかわらず、本件条項を無効として、県外市町村に営業の範囲を広げようとするのはあまりに安易な考えである。
 (エ)よって、本件条項は合理性を欠くものではない。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
 前記前提事実、証拠(甲1、5、6、9、乙1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。
(1)原告は、平成5年11月29日、本件処分場の設置を計画し、指導要綱7条1項に基づいて、設置構想書を安中保健所長に提出した。
 これを受け、安中保健所長は、指導要綱8条2項に基づき、安中市長に対し上記設置構想書の内容について、意見を求めた。
(2)平成6年2月18日、安中市長は、安中保健所長に対し、群馬県外からの廃棄物の搬入について、「県としては、首都圏の一般廃棄物が焼却灰に姿を変えて流入することは、好ましいことではないという考え方であるので、市としても県の基本的な考え方を踏まえ、又市民感情を考慮すると県外からの一般廃棄物の搬入は認めない。」との内容を含む意見書(乙1)を提出した。
(3)安中保健所長は、同年3月18日、原告に対し、指導要綱8条5項に基づき、安中市長との調整を指示した。
 これを受け、原告は、被告と協議した上、同月24日、安中市長に対しては、上記調整事項並びに意見及び条件について遵守する旨の誓約書(乙2)を、また、安中保健所長に対しては、上記意見を含む8項目の意見又は条件を被告の最終的意見として認識し、すべての項目について異議なくその意見を受け入れることに合意した旨の調整結果報告書(乙3)をそれぞれ提出した。
(4)原告は、平成7年2月1日、群馬県知事に対し、指導要綱9条に基づいて事前協議書を提出し、群馬県知事は、同年11月10日、指導要綱12条1項に基づき、上記事前協議書を承認する通知をした。
(5)原告と被告は、平成10年6月5日、上記(3)の協議の結果に基づいて本件協定を締結した。
 なお、本件協定書に本件条項が盛り込まれたのは、原告の本件処分場の設置計画に対し、周辺住民等の激しい反対運動があり、安中市議会にも256名による設置反対を趣旨とする請願書が提出されていたことなどから、被告が環境行政のあり方や住民感情を考慮し、群馬県外からの一般廃棄物の搬入は認めないことが妥当であると判断したことによるものであった。
(6)原告は、同月11日、群馬県知事に対して、一般廃棄物最終処分場の設置許可申請を行った。
 しかし、施設の規模が過大であったことから、施設規模の適正化等についての補正が指示され、原告は、施設規模を縮小する旨の補正を行った。
 平成11年8月30日、群馬県知事は、原告に対し、本件処分場の設置を許可した。この際、本件協定書の各条項を遵守することとなど留意事項が付された。
(7)原告は、平成19年4月から、本件処分場に一般廃棄物の搬入を開始したが、本件条項に従い、群馬県以外において排出された一般廃棄物の搬入は行っていない。
2 確認の利益の有無について
 本件訴えは、公法上の法律関係に関する確認の訴えに当たるというべきところ、争点についての判断に先立ち、確認の利益の有無につき検討する。
 まず、本件条項によって、排出者の範囲が群馬県内の市町村に制限されているために、本件処分場では他県からの廃棄物の搬入を受け入れることができず、その意味で、原告の営業活動が相当程度の制約を受けていることは明らかであるところ、将来、原告が本件条項に違反した場合に予想される不利益処分を待って、事後的に同処分の違法性を主張するという手段も考えられないではないが、それでは、原告が本件条項を誠実に遵守する限り、その効力を争うことができないという奇妙な結果となり、妥当ではない。
 他方、本件協定は、私人たる原告と地方公共団体である被告との間の行政契約であるから、現段階において、原告が排出者の範囲を制限されずに本件処分場での操業を行うためには、本件条項の効力を争って当事者訴訟(公法上の法律関係に関する訴訟)を提起する必要があるというべきである。
 そして、行政契約に係る当事者訴訟において、当該契約の無効確認を求める利益を肯定するためには、それが、当該契約の効力を争う者の具体的な公法上の権利ないし利益を保護するのに有効適切な手段であると認められることを要するところ、①本件条項は、県外で排出された廃棄物の搬入を禁止する唯一の根拠とされていること、②一般に、合理的な目的ないし根拠がないのに私人の自由を制約することは、公序良俗に反し、無効であると解される場合もあること、③原告が本件条項に違反した場合の不利益を具体的に予測することは必ずしも容易ではないことなどの事情からすれば、本件条項の無効確認を求めることは原告にとって最善かどうかは別として有効適切であると解される。
 したがって、本件訴えについては、確認の利益を肯定することができる。
3 争点(本件条項の違法性の有無)について
(1)上乗せ規制について
 原告は、本件処分場の設置許可を取得するのに本件協定の締結を事実上強制されたから、本件協定は安中市長による行政規則の制定に該当する旨主張する。
 しかしながら、①本件協定が原告と被告との間の合意である行政契約という形式で締結されており、原告の判断次第で拒否することも可能であったとみられること、②原告は、平成6年3月18日に安中保健所長から安中市長との調整を指示され、そのわずか6日後に原告が群馬県外からの廃棄物の搬入を認めない旨の被告の意向を受諾していること、③仮に、原告が本件条項を不当と考えるのであれば、本件条項を含む本件協定の締結を求める旨の群馬県の行政指導に従わずに、廃掃法8条に基づき群馬県知事に対し処理施設設置申請許可を行い、これに対する群馬県知事の不許可等の違法を争うことができたといえるところ、原告はこれを行っていないこと、④本件全証拠によっても、原告が本件協定の締結に先立って本件条項の不当性を主張して争ったとの事情が認められないことなどを併せ考えると、群馬県による行政指導により本件協定の締結が強制されたのではなく、原告が任意に本件協定を締結したものであると認められる。
 そうすると、本件条項が上乗せ規制に該当するという原告の主張は、その前提を欠くものであり採用できない。
(2)本件条項の合理性の欠如について
 ア 原告は、本件条項は合理性を欠くから公序良俗に違反して違法、無効である旨主張する。
 そこで検討すると、前記認定事実によれば、被告は、本件処分場の設置に対する住民等による反対運動が存在したことから、群馬県外で排出された廃棄物の搬入を認めない旨の条件を提示し、それに基づき本件協定書中に本件条項を規定することを求めたものである。こうした経緯からすれば、本件条項の趣旨・目的は、地域住民の生活環境の保全に尽きるものではなく、生活環境の悪化を懸念する反対住民等の感情に配慮を示すことにより本件処分場の設置を円滑に進めるという政策的なものも含まれていたと解されるところ、住民の不安や不信感の高まり、権利意識の向上、廃葉物処理場の新設をめぐる地域紛争の発生などの近年の社会情勢に照らしても、上記のような趣旨・目的が直ちに不合理であるとはいえないし、また、かかる趣旨・目的との関係では、群馬県以外からの廃棄物の搬入を規制することにも一定の合理性があるというべきである。
 イ 原告は、本件協定書第6条第2項により本件処分場に搬入する廃棄物の総量規制があること、同第5条第2項により三者間の公害防止協定を締結することとなっていること、一般廃棄物の有害性に差異がないことなど指摘し、本件条項は地域住民の生活環境の保全するための規制手段としては無意味である旨主張する。
 しかし、繰り返しになるが、本件条項の趣旨・目的は、地域住民の生活環境の保全に尽きるものではなく、また、反対運動が存在するという状況の下で処分場の設置計画を円滑に進行させるには住民の理解を得ることが必要であるから、そのために県外の廃棄物の搬入を規制するという手段がとられたとしても、必ずしも無意味とはいえない。したがって、原告の指摘する上記各事由が存在するとしても、何ら結論を左右しない。
 さらに、原告は、事前協議や本件処分場設置許可当時と社会情勢が変化した旨主張するが、これを裏付けるに足りる証拠はない上、仮に、原告の主張するような社会情勢の変化があったとしても、本件条項による廃棄物の搬入制限を原告に課し続けることが信義則上著しく不当になったということはできないし、その他本件全証拠を精査してもそのような事情を認めることはできない。
 ウ よって、本件条項が不合理であり、公序良俗に反し、違法、無効であるということはできない。
(3)以上により、本件条項は、上乗せ規制といえるようなものではないから、地方自治法15条に違反するものではなく、かつ、合理性を欠き公序良俗に違反するものでもない。よって、本件条項が無効であるということはできない。
4 結論
 以上によれば、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
 前橋地方裁判所民事第1部
   裁判長裁判官  小林敬子
      裁判官  渡遵和義
      裁判官  青野卓也

(別紙)協定書
 群馬県安中市(以下「甲」という。)と安中市大谷229番地1サイボウ環境株式会社(以下「乙」という。)とは、乙が安中市大谷字西谷津1893番7外15筆に一般廃業物管理型最終処分場(以下「処分場」という。)を設置するに当り、次の通り協定を締結する。
(法令等及び協議に付された事項の遵守)
第1条 乙は、法令等(関係法令、条例及び要綱)、特に廃棄物の処理及び清掃に関する法律、同法施行令、構造指針等の許可申請等又は事前協議において明らかにした事項を遵守しなけれ‘ぱならない。
2 乙は、処分場を設置し事業を行っていくに当って公害の防止に万全を期さなければならない。
(用水計画)
第2条 乙は、処分場に必要な用水については、別に甲と協議する。
(搬入する廃棄物)
第3条 乙が処分場に搬入するものは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に定める一般廃案物のうち、群馬県内の市町村及び一部事務組合(以下「市町村等」という。)の一般廃棄物の処理施設から排出された焼却残灰(熱しゃく減量10%以下)、不燃物残渣及び汚泥(以下「廃棄物」という。)に限定し、その他は一切搬入しないものとする。ただし、汚泥については別途三者間公害防止協定書の事前協議において、甲の承認を得たものとする。
(搬入する廃棄物の検査)
第4条 搬入する廃棄物及び搬入車両の検査は、処分場の搬入管理施設において、乙が責任を持って検査する。
(搬入の方法等)
第5条 搬入する車両は、すべて乙のトラックとする。
2 廃棄物を搬入するにあたっては、甲、乙及び市町村等との間で別紙様式による三者間公害防止協定書を締結するものとし、協定がなされた市町村以外からの搬入はしてはならない。
3 乙は、搬入車両をいつもきれいな状態で使用整備をするものとする。
4 乙は、交通渋滞の発生防止に努め、甲が必要と認めた場合は退避場所等を設置して協力するものとする。
(廃棄物’の搬入時間等)
第6条 乙は、処分場への搬入時間は、原則としで8時30分から正午までとして、日曜、祭日は搬入しないものとする。
2 乙は、1日の搬入台数を20台以下とするものとし、時間調整をしながら分散して処分場に搬入するものとする。
3 処分場の開場時間内での団体等の視察及び見学については受け入れるものとする。
(進入道路)
第7条 乙は、工事期間中及び廃棄物の搬入については、道路管理者が関係機関と協議して定める新設道路及び県道高崎・富岡線から市道岩323号線、市道岩324号線並びに天白農道の一部(市道324号線に接続する100m以内)を経由して進入するものとし、その他は一切使用しないものとする。また、地元車両の通行は優先しなければならない。
2 乙は、前項の進入道路については幅員5.0m以上としなければならない。また進入道路を破損した場合は、甲の指示に従い、乙の負担により補修を行なうこと。
3 覆土の搬出入車両の通行は、第1項において特定する道路及び覆土置場用地に接する市道岩580号線の範囲内で道路管理者の許可を得た部分とし、その他は一切使用しないものとする。
(処分場の’管理)
第8条 乙は、処分場の開場時間内は管理責任者を常駐させるものとする。
2 乙は、搬入される廃棄物が、設定した受け入れ基準に合致しているかの検査及び搬入量の計量等を行うために、搬入管理施設を設置するものとする。
3 乙は、処分場の埋立地に搬入される対象廃棄物について、その種類、性状、有害物質の有無、搬入可能量、納入者の要件等の基本的項目を内容とする受け入れ基準を設定し、基準に合戦しない物は受け入れないものとする。
4 乙は、廃棄物の受入状況を記録し、月毎に当該月終了後、速やかにその結果を甲に報告するものとする。.
(処分場の構造及び安全対策)
第9条 乙は、処分場の設置に当たっては、平成9年10月の生活環境審議会廃棄物処理部会廃棄物処理基準等専門委員会報告の内容に適合した構造としなければならない。
2 乙は、処分場建設工事着工までに、処分場の建設、稼動及び廃案物の搬入等が周辺地域の生活環境に及ぼす影響について調査し、その結果を甲に報告するものとする。
3 乙は、甲から前項の結果について必要な指示を受けたときは、速やかに対応しなければならない。
4 甲は、処分場の建設に当たって、各部分の確実な施工が行われていることを確認するだめ、甲の指定する職員に立入り検査をさせ、乙から報告を求めることができる。
(地下水の監視及び報告)
第10条 乙は、処分場の浸出水による地下水汚染の有無を判断できる観測井戸を設置し、地下水の水質を定期に監視するものとする。
 なお、観測井戸の設置場所、地下水の水質検査項目、検査頻度等については、甲乙が協議して定めるものとする。
2 乙は、前項の水質検査の結果を記録、保存し、甲の求めがあったときは、速やかに報告するものとする。
3 乙は、地下水の水質に異常を認めたときは、直ちに甲に報告し、甲のほか監督官庁の指示を受けて、必要な措置を講じるものとする。
(住民保護)
第11条 乙は地域住民から出された要望事項等については、誠意を持って解決するものとする。                       
2 乙は、処分場の建設及び処分業務にあたり、地域住民に迷惑をおよぼさないよう最善の.努力を払うものとし、地域住民が損害を受けたときは補償するものとする。
3 乙は、工事期間中及び処分場の操業期間中、学童の登下校時の事故防止及び一般歩行者の安全に十分な配慮を行い、必要に応じて誘導係員をおくものとする。
(農業用水の確保等)
第12条 乙は、処分場が、生活環境保全上の問題がないことが確認され閉鎖されるまでの間、処分場からの排出水を延長放流する地点までの農地耕作者(以下「耕作者」という。)のために、灌漑用ため池及び井戸を設け、乙の責任において、営農に支障がないよう農業用水を確保しなければならない。
 処分場閉鎖後においてもなお営農に支障があると甲が認めるときは、乙は必要な措置を講じるものとする。
2 その他、乙は、処分場下流の営農に支障を来さないよう、耕作者に協力しなければならない。
(立入り・調査等)
第13条 甲は、本協定の履行状況を確認ずるため、甲の指定する職員による立入り調査を実施し、必要な報舎を求めることができることとし、乙はこれに応ずるものとする。
(転売の禁止)
第14条 乙は、他に施設、権利等一切を転売しないこと。
(施設設置の同意)
第15条 乙が以上の項目を遵守することを条件に、甲は施設の設営を認めるものとする。
(その他)
第16条 乙は、事業内容を変更しようとするときは、甲に対して変更内容の協議申請を行わなければならない。
2 本協定書に定めのない事項又は疑義については、甲、乙協議の上決定する。

 この協定を証するため本書二連を作成し、甲、乙記名押印の上、各自一通を保有する。

平成10年6月5日

甲  群馬県安中市安中1丁目23番13号
    安中市長 中島博範
乙  群馬県安中市大谷229番地1
    サイボウ環境株式会社

これは正本である。
平成21年1月28日
  前橋地方裁判所民事第1部
   裁判所書記官 米山哲雄
**********


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