■またもや群馬県内で起きた横領金着服事件。報道記事を読むと地元安中市原市に本社のある群馬県信用組合が舞台となって事件が起きました。まずは、事件の内容を報じた上毛新聞の記事を見てみましょう。
↑やろうと思えば刑事告訴はすぐにできる、安中警察署の東隣にある群馬県信用組合の本社ビル。この事件との関係かどうかは定かでないが、日曜というのに、2階には煌々と明かりが灯いていた。10月24日午後4時半頃撮影。↑
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県信用組合 支店長 2080万円着服
別件で依願退職 すでに弁済、告訴せず
群馬県信用組合(安中市原市、松井誠理事長)の支店長だった元男性職員(47)が、顧客の口座に入れるために預かるなどした現金計2080万円を着服していたことが、10月22日明らかになった。男性は着服の問題が発覚する前に別の就業規則違反で依願退職し、退職金を受け取っている。同信組は退職金相当額の返還を求める民事訴訟を近く起こすが、顧客への被害が弁済されていることから男性の刑事告訴はしない方針。
同信組によると、男性は2007年9月から今年4月まで、富岡市と下仁田町の3支店に支店長や支店長代理として勤めた間、営業で訪問した企業と個人合わせて3者から預かるなどして現金を着服した。
このうち2者からは、苦情を受けた後に「手続きを間違えた」などと説明して返還した。もう1者に対して、預金の払戻伝票の金額を書き換える手口で差額1010万円を着服しており、信組側の内部調査で発覚するまで顧客は被害に気付いていなかった。発覚後に男性や親族が弁済した。
調査に対して、男性は「パチンコなどの遊興費や消費者ローンの返済に使った」と答えている。
着服以外にも、男性は業務で知り合った企業や個人から私的な借金を繰り返しており、今年3月時点で2者から計590万円を借りていた。それまでに返済した分も合わせると、15者から計5930万円を借りた。
取引先からの融資の申し込みを放置し、期日が迫ったため自らの金を貸し付けたことも3者に対して計740万円あった。個人での借り入れと貸し付けはともに就業規則違反に当たる。
顧客からの指摘を受けて調査した結果、今年3月に就業規則違反である金の貸借が判明し、男性を本部人事部付に異動。男性が5月末に依願退職をした後、着服の問題が新たに分かった。
今年6月の1カ月分、理事長の報酬を10%、ほかの常勤理事6人を3~7%減額した。
同信組は「管理監督が不十分だった。原因をよく把握し、対策を立て、信頼される体制作りにまい進したい」と話している。
(平成22年10月23日)
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次に、東京新聞の記事を見てみましょう。
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県信用組合元職員 預金2080万円を着服 引き出し額を水増し記入
県信用組合(本店・安中市)は10月22日、元職員の男性(47)が顧客の口座から不正に預金を引き出す手口で、三人から計2080万円を着服していたと発表した。
男性は5月末で依願退職したが、組合の内部調査で着服が発覚。就業規則で禁じられている個人的な借り入れや貸し付けも行っていたことが分かった。
組合の調査によると、男性は昨年1月~今年4月、富岡市内の支店で支店長代理などを務めていた立場を利用し着服を繰り返した。現金自動預払機(ATM)を使用しない顧客が口座から現金を引き出す際、実際の引き出し額よりも多い額を手続き書類に記入する手口で不正に現金を払い戻していた。取引先から計5930万円を個人的に借り入れ、740万円の貸し付けも行っていた。
男性は動機について「パチンコなどで借金がかさみ、多重債務に陥っていた」と話しているという。同組合は「被害金は全額弁済された。男性は懲戒解雇に相当する事案を起こしており、退職金の返還などを求めている。」とした。(中根政人)
(平成22年10月23日)
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■群馬県信用組合の松井誠理事長は、知る人ぞ知る、あの安中市土地開発公社を舞台にしたタゴ51億円巨額詐欺横領事件で、平成7年5月の事件発覚当時、群馬銀行安中支店長だった御仁です。融資側の群馬銀行安中支店の総責任者として、タゴが偽造して持参した金銭消費貸借契約証書や払戻票に疑問や不審感を抱くことなく金を貸し出し、結果的に巨額の金を騙し取られ、その尻拭いを今もなお、安中市民がツケ払いさせられていることは、当然本人も承知しているはずです。
群馬銀行関係者によれば、松井誠理事長は、51億円発覚当時は、群馬銀行で冷や飯を味わされて失意の日々を送っていたようですが、理事長職を求めていた群馬県信用組合の情報をいち早く自らキャッチして、トラバーユに成功しました。
■タゴ事件では、タゴに盆暮れに高級ワインを送ったり、ゴルフ接待に余念のなかった群馬銀行安中支店でしたが、事件に関係した職員は、いずれも左遷や降格されたりして、冷遇された経緯があります。
そのような逆風のもとで、めでたく県信用組合の理事長職の座を射止めた松井元支店長は、数少ない勝ち組と言えるでしょう。もちろん、かつて群馬銀行安中支店長として築いた地元金融業界におけるコネクションが有効に活用されたことは想像に難くありません。
■タゴ事件から15年が経過し、めでたく群銀の呪縛から逃れたと思いきや、勝ち組の松井元群銀安中支店長に再び悪夢が蘇ったかのような今回の転職先での事件。自分の部下の横領に気付かないまま、タゴが安中市役所を15年前に懲戒免職になったのと同じ5月31日に、依願退職をした部下に退職金を支給してしまいました。
報道によれば、その後、合計2080万円の着服の事実が発覚したため、元部下とその親族が弁済したとされていますが、この原資に退職金の一部が充当された可能性は否定できません。だから、松井理事長は、退職金相当額の返還を元部下に対して請求する意向のようです。
■しかし、理解できないのは、「返済したから」として、刑事責任を問わない松井理事長の方針です。自らの人事管理能力不足が招いた今回の不祥事と、真相調査不足による退職金の支給により、実質的に組織に損害を与えたことになるのに、顧客に弁済がなされたということだけを強調して、刑事告訴を行わなかったことは、真相解明や、責任の所在、そして再発防止の観点から、誤った対応だと見られても仕方がありません。
おそらく、51億円事件で自らの責任を群馬銀行から結果的に追及されないまま、転職で理事長職を射止めて、勝ち組の筆頭として、安中市商工会議所の役員にまで返り咲いた松井理事長としては、自身の経験を部下に伝えきれず、結果的に、監督不行き届きが招いた今回の不祥事件の責任の所在をうやむやにするには、部下の仕出かした横領事件の刑事告訴をしないことが、ベストの方策だと判断したのでしょう。
群銀の支店長経験者として、その手腕を見込まれて群馬県信用組合の理事長に迎えられた松井理事長ですが、自らの人事管理能力不足の責任を、今年6月のわずか1カ月分の理事長報酬のわずか10%にとどめたばかりか、ほかの常勤理事6人には連帯責任として3~7%の報酬減額を求めたりするなど、はたしてどの程度自己責任を認識しているのか、はなはだ疑問です。理事長には、厳しい経営環境の中で、経営安定の手腕を発揮することが期待されているのに、群銀の事なかれ主義だけを持ち込まれては、群馬県信用組合としても本意ではないはずです。
■しかも、「管理監督が不十分だった。原因をよく把握し、対策を立て、信頼される体制作りにまい進したい」などと、ありきたりの言葉で釈明しているところをみると、タゴ事件で学んだはずの反省が、現在の松井理事長の脳裏にどのくらい残っているのか疑問です。
横領事件が起きたら、一刻も早く警察に通報して、刑事告訴をして、徹底的に真相解明を行い、責任の所在をはっきりさせて、再発防止策を確立し、その経緯を内外に公表することが、最良の対応策であることを、金融機関の経営陣には、肝に銘じてもらいたいものです。
↑平成22年10月20日発行の「社協あんなか」第21号の3ページに、平成22年8月1日~9月30日の「寄付者の紹介」として、群馬県信用組合の松井理事長の写真が掲載されている。第21号によると、群馬県信用組合は特別賛助会員として平成22年度は2口(2万円?)の会費を納入したが、この他に9月28日(火)付けの上毛新聞によれば、8月に市内のゴルフ場で実施した第1回群信協健康友の会・県信用組合支部チャリティーゴルフ大会の参加者196人から寄せられた寄付金のうち、安中市社会福祉協議会に10万円、富岡市、甘楽町、下仁田町、南牧村の社会福祉協議会に5万円ずつ、合計30万円を寄付したことが報じられている。松井理事長の表情がいまひとつ冴えないのは、この時既に着服事件処理が脳裏をよぎっていのか、それとも、群銀支店長時代のタゴ事件のことだったのか、本人しか理由は分からない。↑
【ひらく会情報部】
↑やろうと思えば刑事告訴はすぐにできる、安中警察署の東隣にある群馬県信用組合の本社ビル。この事件との関係かどうかは定かでないが、日曜というのに、2階には煌々と明かりが灯いていた。10月24日午後4時半頃撮影。↑
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県信用組合 支店長 2080万円着服
別件で依願退職 すでに弁済、告訴せず
群馬県信用組合(安中市原市、松井誠理事長)の支店長だった元男性職員(47)が、顧客の口座に入れるために預かるなどした現金計2080万円を着服していたことが、10月22日明らかになった。男性は着服の問題が発覚する前に別の就業規則違反で依願退職し、退職金を受け取っている。同信組は退職金相当額の返還を求める民事訴訟を近く起こすが、顧客への被害が弁済されていることから男性の刑事告訴はしない方針。
同信組によると、男性は2007年9月から今年4月まで、富岡市と下仁田町の3支店に支店長や支店長代理として勤めた間、営業で訪問した企業と個人合わせて3者から預かるなどして現金を着服した。
このうち2者からは、苦情を受けた後に「手続きを間違えた」などと説明して返還した。もう1者に対して、預金の払戻伝票の金額を書き換える手口で差額1010万円を着服しており、信組側の内部調査で発覚するまで顧客は被害に気付いていなかった。発覚後に男性や親族が弁済した。
調査に対して、男性は「パチンコなどの遊興費や消費者ローンの返済に使った」と答えている。
着服以外にも、男性は業務で知り合った企業や個人から私的な借金を繰り返しており、今年3月時点で2者から計590万円を借りていた。それまでに返済した分も合わせると、15者から計5930万円を借りた。
取引先からの融資の申し込みを放置し、期日が迫ったため自らの金を貸し付けたことも3者に対して計740万円あった。個人での借り入れと貸し付けはともに就業規則違反に当たる。
顧客からの指摘を受けて調査した結果、今年3月に就業規則違反である金の貸借が判明し、男性を本部人事部付に異動。男性が5月末に依願退職をした後、着服の問題が新たに分かった。
今年6月の1カ月分、理事長の報酬を10%、ほかの常勤理事6人を3~7%減額した。
同信組は「管理監督が不十分だった。原因をよく把握し、対策を立て、信頼される体制作りにまい進したい」と話している。
(平成22年10月23日)
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次に、東京新聞の記事を見てみましょう。
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県信用組合元職員 預金2080万円を着服 引き出し額を水増し記入
県信用組合(本店・安中市)は10月22日、元職員の男性(47)が顧客の口座から不正に預金を引き出す手口で、三人から計2080万円を着服していたと発表した。
男性は5月末で依願退職したが、組合の内部調査で着服が発覚。就業規則で禁じられている個人的な借り入れや貸し付けも行っていたことが分かった。
組合の調査によると、男性は昨年1月~今年4月、富岡市内の支店で支店長代理などを務めていた立場を利用し着服を繰り返した。現金自動預払機(ATM)を使用しない顧客が口座から現金を引き出す際、実際の引き出し額よりも多い額を手続き書類に記入する手口で不正に現金を払い戻していた。取引先から計5930万円を個人的に借り入れ、740万円の貸し付けも行っていた。
男性は動機について「パチンコなどで借金がかさみ、多重債務に陥っていた」と話しているという。同組合は「被害金は全額弁済された。男性は懲戒解雇に相当する事案を起こしており、退職金の返還などを求めている。」とした。(中根政人)
(平成22年10月23日)
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■群馬県信用組合の松井誠理事長は、知る人ぞ知る、あの安中市土地開発公社を舞台にしたタゴ51億円巨額詐欺横領事件で、平成7年5月の事件発覚当時、群馬銀行安中支店長だった御仁です。融資側の群馬銀行安中支店の総責任者として、タゴが偽造して持参した金銭消費貸借契約証書や払戻票に疑問や不審感を抱くことなく金を貸し出し、結果的に巨額の金を騙し取られ、その尻拭いを今もなお、安中市民がツケ払いさせられていることは、当然本人も承知しているはずです。
群馬銀行関係者によれば、松井誠理事長は、51億円発覚当時は、群馬銀行で冷や飯を味わされて失意の日々を送っていたようですが、理事長職を求めていた群馬県信用組合の情報をいち早く自らキャッチして、トラバーユに成功しました。
■タゴ事件では、タゴに盆暮れに高級ワインを送ったり、ゴルフ接待に余念のなかった群馬銀行安中支店でしたが、事件に関係した職員は、いずれも左遷や降格されたりして、冷遇された経緯があります。
そのような逆風のもとで、めでたく県信用組合の理事長職の座を射止めた松井元支店長は、数少ない勝ち組と言えるでしょう。もちろん、かつて群馬銀行安中支店長として築いた地元金融業界におけるコネクションが有効に活用されたことは想像に難くありません。
■タゴ事件から15年が経過し、めでたく群銀の呪縛から逃れたと思いきや、勝ち組の松井元群銀安中支店長に再び悪夢が蘇ったかのような今回の転職先での事件。自分の部下の横領に気付かないまま、タゴが安中市役所を15年前に懲戒免職になったのと同じ5月31日に、依願退職をした部下に退職金を支給してしまいました。
報道によれば、その後、合計2080万円の着服の事実が発覚したため、元部下とその親族が弁済したとされていますが、この原資に退職金の一部が充当された可能性は否定できません。だから、松井理事長は、退職金相当額の返還を元部下に対して請求する意向のようです。
■しかし、理解できないのは、「返済したから」として、刑事責任を問わない松井理事長の方針です。自らの人事管理能力不足が招いた今回の不祥事と、真相調査不足による退職金の支給により、実質的に組織に損害を与えたことになるのに、顧客に弁済がなされたということだけを強調して、刑事告訴を行わなかったことは、真相解明や、責任の所在、そして再発防止の観点から、誤った対応だと見られても仕方がありません。
おそらく、51億円事件で自らの責任を群馬銀行から結果的に追及されないまま、転職で理事長職を射止めて、勝ち組の筆頭として、安中市商工会議所の役員にまで返り咲いた松井理事長としては、自身の経験を部下に伝えきれず、結果的に、監督不行き届きが招いた今回の不祥事件の責任の所在をうやむやにするには、部下の仕出かした横領事件の刑事告訴をしないことが、ベストの方策だと判断したのでしょう。
群銀の支店長経験者として、その手腕を見込まれて群馬県信用組合の理事長に迎えられた松井理事長ですが、自らの人事管理能力不足の責任を、今年6月のわずか1カ月分の理事長報酬のわずか10%にとどめたばかりか、ほかの常勤理事6人には連帯責任として3~7%の報酬減額を求めたりするなど、はたしてどの程度自己責任を認識しているのか、はなはだ疑問です。理事長には、厳しい経営環境の中で、経営安定の手腕を発揮することが期待されているのに、群銀の事なかれ主義だけを持ち込まれては、群馬県信用組合としても本意ではないはずです。
■しかも、「管理監督が不十分だった。原因をよく把握し、対策を立て、信頼される体制作りにまい進したい」などと、ありきたりの言葉で釈明しているところをみると、タゴ事件で学んだはずの反省が、現在の松井理事長の脳裏にどのくらい残っているのか疑問です。
横領事件が起きたら、一刻も早く警察に通報して、刑事告訴をして、徹底的に真相解明を行い、責任の所在をはっきりさせて、再発防止策を確立し、その経緯を内外に公表することが、最良の対応策であることを、金融機関の経営陣には、肝に銘じてもらいたいものです。
↑平成22年10月20日発行の「社協あんなか」第21号の3ページに、平成22年8月1日~9月30日の「寄付者の紹介」として、群馬県信用組合の松井理事長の写真が掲載されている。第21号によると、群馬県信用組合は特別賛助会員として平成22年度は2口(2万円?)の会費を納入したが、この他に9月28日(火)付けの上毛新聞によれば、8月に市内のゴルフ場で実施した第1回群信協健康友の会・県信用組合支部チャリティーゴルフ大会の参加者196人から寄せられた寄付金のうち、安中市社会福祉協議会に10万円、富岡市、甘楽町、下仁田町、南牧村の社会福祉協議会に5万円ずつ、合計30万円を寄付したことが報じられている。松井理事長の表情がいまひとつ冴えないのは、この時既に着服事件処理が脳裏をよぎっていのか、それとも、群銀支店長時代のタゴ事件のことだったのか、本人しか理由は分からない。↑
【ひらく会情報部】
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