市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

弁護士から和解を勧められたら徹底的にその理由と背景を説明させて記録しておくべし(教訓その1)

2013-05-10 23:05:00 | 不良弁護士問題
■平成25年5月9日に群馬弁護士会から同8日の消印のある配達証明郵便が届きました。開封してみると、昨年8月に市民オンブズマン群馬の会員から相談のあった訴訟依頼人の対象弁護士の対応不具合について、オンブズマン代表でもある当会事務局長が相談者の代理として、懲戒請求をしていた件で、対象弁護士の懲戒はしない旨の決定通知が入っていました。

 懲戒請求とは、弁護士法第56条に定められた手続きで、弁護士又は弁護士法人に対する懲戒を求める請求を行うものです。この懲戒請求の制度は、自らを律するという弁護士自治の一部を担っています。

 実際の請求については、同第58条に基づき、被請求者となる対象弁護士又は弁護士法人が所属する弁護士会が受け付けることになります。なお、2005年4月、弁護士倫理に代わり弁護士の職務の行動指針または努力目標を定めたものとして弁護士職務基本規定が施行されています。

■全国各地にある単位弁護士会が懲戒請求の申立を受けて弁護士を懲戒する割合は、平均すると申立件数の2.3パーセント程度です。また、懲戒委員会そのものが申立人から提訴された例も複数あります。

 日弁連が発表した2012年懲戒請求事案集計報告によれば、2012年は3898件の請求があり、このうち戒告54件、1年未満の業務停止17件、1~2件の業務停止6件、退会命令2件、除名0件となっています。2011年度は1885件の懲戒請求でしたのが倍増していますが、これは1人で100件以上の懲戒請求をした事案が5件(合計1899件)あったためだとされています。次の資料参照。
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2012/2012kouki_choukai.pdf

■オンブズマンに相談のあった事案は、大間々町(現・みどり市)13区を巡る不正会計事件で、不正会計をして補助金等を不正に使い込んでいた前区長と現区長らが、不正会計を追及する住民らを相手取り、事実無根のチラシを配布されたことにより名誉を棄損されたので損害賠償請求を提起したものです。

 その後3年間も法廷で争われましたが、原告ら区長側が、住民の指摘通り不正会計をして住民から集めた自治会費や補助金等の公金を不正に使っていたため、これについて反論することができず、名誉棄損どころか、公金横領で逆に訴えられそうになったため、和解に持ち込もうとしたものです。

 裁判では、裁判長はできるかぎり和解で片付けようとします。判決を書く必要がなく、また双方が円満に和解したという印象を第三者にあたえるため、大岡裁きの名裁判長という評判を立てやすいからです。

■大間々町13区の事件の場合では、不正会計をやっている側が弁護士を立てて提訴してきたため、急遽、被告とされた住民側としても応訴する必要がありました。何もしないと、どんなに非が無くても敗訴にさせられてしまうためです。

 そのため、住民らはいろいろなツテや情報をもとに、高崎市内に事務所を持つ廣田繁雄弁護士に、訴訟代理人として弁護を依頼し、着手金を支払いました。

■裁判では原告区長ら側も被告住民ら側も主張の裏付けとなる証拠資料を準備しなければなりません。被告住民らは限られた入手資料から分析し、原告区長らの不正会計の実態を法廷で主張し反撃しました。原告区長らは、それを覆す証拠を出せませんでした。

 したがって、このような場合には、言われなき理由で原告区長らから訴えられた被告住民らの訴訟代理人の弁護士は、法律の知識を活かして、あらゆる手段で原告側に反撃を挑むことが求められます。この事件では、公金の不正支出により区や自治体に損害を与えたわけですから、被告住民らの訴訟代理人の廣田弁護士は、13区区長らを逆に損害賠償請求で提訴できたはずです。実際に、弁護を依頼した住民らは、必要な証拠を法廷に提出していましたから、簡単に反撃=応訴が可能だったはずです。実際に、住民らは廣田弁護士に対して応訴の検討を持ちかけたとしています。

 しかし訴訟代理人は応訴に踏み切りませんでした。和解の話の発端は、おそらく、こぶしを振り上げたものの、裁判で次から次へと不利な証拠が被告住民らから提出されるため、このまま訴訟を継続しても勝ち目はないとおもったのでしょう。あるいは、最初から不正会計をしたことを分かっていて、「攻撃は最大の防御なり」ということで、以来弁護士らのアドバイスも得て、最初から和解を前提に提訴してきたことも考えられます。

■片方から和解の話が出れば、名裁判長の評判に関心の深い裁判官としては、その話にのるのが手っとり早いわけです。 クロシロハッキリさせる判決文を考えるより、簡単な和解条項でシャンシャンと幕を引いた方がよほど楽だからです。

 本来は、和解条項は判決文と同じく関係者相互はそれを遵守しなければなりません。ところが、大間々町13区の区長らは、和解により不正会計が不正会計でなくなった、と自分の都合のよいように解釈しました。そして、区長を辞するどころか、取り巻きをつかって区の総会で自分を区長として再任させ、引き続き区長として居座ったのでした。

 しかも、「不正会計呼ばわりをしたのはけしからん」として、被告住民らを自治会活動から締めだすために、自治会費を徴収をせず、自治体の広報なども配布せず、いわゆる「村八分」としたのでした。

 このような事態を招いた要因の一つに、信頼した弁護士の言うことを信用してしまったことが挙げられます。3年もの長期間の裁判を行い、挙句の果てに和解の話を持ち出されて「区長は辞めるだろう」と確証も示されないまま、「信頼する弁護士が言うのだから間違いあるまい」と最終的に信用して和解に応じたら、結局、区長は居座り、村八分にされたのですから、一体、弁護士の役割とは何だったのだろうと、疑問を持つのは当然です。高い着手金を支払い、必要経費も支払い、さすがに和解にかかる報奨金については弁護士から請求されませんでしたが、証拠資料などの収集や分析にも費用と時間をかけたのに、結局、「民主的な自治」にほど遠い現状が継続しているのですから無理もありません。

 もう一つには、不正会計をしでかした現区長に、合併後のみどり市長が委嘱状を交付して御墨付きをあたえたことが挙げられます。こちらについても、オンブズマンとしてこれまでみどり市長に対して公開質問状で、その経緯を質しています。

■「和解」というと普通の人は、なんだか両者痛み分けということで、好ましいイメージを持ちがちです。しかし、「和解をして一番得をするのは一体誰なのか」を注意深く考えてから和解に応ずる必要があります。

 安中市土地開発公社を舞台にした巨額詐欺横領事件で、市政をひらく安中市民の会では、歴代の公社の理事監事や事務局幹部ら20数名を相手取って損害賠償請求の住民訴訟を提起しました。当初は弁護士を付けずに裁判を続けましたが、当会の事務局長が海外勤務となったため、やむなく群馬弁護士会の弁護士に訴訟代理を委任しました。

 そのため、やはり3年近く係争を続けた後、刑務所で服役中の元職員がいつの間にか被告から外され、その他1名を除く全員が「二度とあのような不祥事は起こしません」として、彼らの弁護士を通じて、和解を住民側の弁護士に持ちかけて来ました。当会の事務局長は、海外に滞在しており、これ以上留守部隊に負荷をかけてもしょうがないと考えて、弁護士からの和解応諾の相談についてOKを出してしまったのでした。

 その結果、和解条項が出ると思いきや、たった一人和解に応じなかった元公社理事・監事で当時県会議員だった現在の岡田義弘・安中市長に対して、被告側弁護士からの事前連絡も無いうちに、前橋地裁の裁判官が、住民敗訴の判決(公社は市と別法人なので、市民には損害がないから訴訟資格がない)をこっそりと出したのでした。それを知ったマスコミから留守部隊に連絡があるまで、当会の事務局長をはじめ関係者は全員、和解になるものと思っていました。

■このように和解には、裁判所、原告側弁護士、被告側弁護士の3者の思惑が優先します。もともと同じ業界で、司法試験合格者がそれぞれ判事、検事、弁護士の道を歩むだけのことであり、司法修習生として同じ釜の飯を食った間柄です。だから、裁判の過程でラウンドテーブルを囲み、3者で協議する際も、最初に、互いに自己紹介をして、誰が先輩で誰が後輩なのかを確認してから、協議を始めるのです。

 こうした慣れ合い体質の業界ですから、何も知らない一般市民は、裁判所の威光や晩越しの威厳の前に緊張を強いられ、法律の専門家の言うことに対して異議や疑義を唱えることができないわけです。

 その結果、とりわけ弁護士の中には、着手金目当てに訴訟事案を請け負っても、依頼人の気持ちに立って親身になって裁判の代理人としてやってくれない人物も現れるのです。

■今回のみどり市大間々町13区の事件でも、なぜ「和解」が反故にされたのか、本当に「和解」が唯一の選択肢だったのかを検証すべく、住民らから相談を受けた市民オンブズマン群馬では、冒頭の通り、廣田繁雄弁護士の懲戒請求に踏み切ったものです。

 懲戒請求は誰でも行うことができます。懲戒請求者は、申立て後に資料の提出や陳述、審尋等を綱紀委員会や相手方弁護士から求められます。次に、平成24年8月から先週送られてきた群馬弁護士会からの懲戒請求事案決定通知に至るまでのオンブズマンと群馬弁護士会とのやり取りを示した文書を掲げます。いかに、頼りになる弁護士を探すのが難しいか、また、依頼人の立場に立ってくれる弁護士が少ないか、そしてまた、自らの身内を律することが難しいか、などがよく分かると思います。

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【平成24年8月20日付群馬弁護士会あて懲戒請求書】
〒371-0026 前橋市大手町3-6-6
群馬弁護士会 御中
電話番号 027-233-4804 FAX番号 028-622-2050
          懲戒請求書
                    平成24年8月20日
懲戒請求人 〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
       小川 賢
        電話027-382-0468  FAX 027-381-0364
被調査人  〒370-0045群馬県高崎市東町172-16 共済会館3階 高崎合同法律事務所
       群馬弁護士会所属 廣田 繁雄
        電話027-326-3285
1 被調査人は、みどり市大間々町13区の運営を巡る文書配布で名誉を傷つけられたとして、同区のKT区長とKM前区長が平成19年(2007年)8月に、同文書配布に関わった同区民のKS、HT、MZの3人を訴えた事件(事件番号:平成19年(ワ)第113号)で、被告のKS、HT、MZの訴訟代理人として、訴訟行為に携わった。
2 本件事件は、前橋地裁桐生支部(野口忠彦裁判官)における3年近い係争を経て、平成22年(2010年)5月25日までに、和解に至った。
3 被告らが和解を決断するに至った動機として、被調査人が被告らに行った次の3点に関する説明と説得が決め手となった。
 ①区長側よりこの裁判を和解に持ち込めないかとの説明を受けた。
 ②裁判官からは、区長等は悪いことをしたことは判っているが、前向きに建設的な気持ちになりなさい、と諭された。
 ③被調査人からは、区長側は不適正会計を認めたのだから、辞任するでしょうから、との説明を受けた。
4 被告らは、被調査人から以上3点の説明と説得を受けたことから、訴訟代理人弁護士である被調査人の言葉を信じて、説得に応じて和解に踏み切った。(証拠書類①)
5 この和解については、平成22年(2010年)5月22日付の桐生タイムス夕刊に記事として報じられた。(証拠書類②)
6 ところが、原告の13区区長のKTは、その後、和解条項を無視して、「桐生タイムス裁判記事記載は間違いであって、よって被告のKSらは、13区を乱した罪として13区を出て行け」と言って区費の徴収を拒否し、被告ら及び被告らに賛同した区民らに対して、13区の役職を強制的に降ろしたり、いわれなき中傷を加えたりするなど、非情な仕打ちを与えている。
7 原告らが不適正会計をしていたことが裁判のなかで明らかになり、和解条項では、過去に13区で不適切な慣行や会計処理があったことが原告と被告との間で確認されたにもかかわらず、和解後、原告らは不適正会計について反省しようとせず、被調査人が被告人らを説得した際に述べた「原告らが辞任することで、13区の運営が適正化されるだとう」という趣旨が、ないがしろにされている。
8 そのため、被告らは、原告らが和解条項の趣旨を故意に無視して、13区区長に留まったり13区を非民主的に運営している現状を憂い、被調査人にたいして、和解条項の趣旨を原告らに遵守させるための方策として、和解の状況や経過について区民に説明するなどの協力を要請した。(証拠書類③)
9 しかし、被調査人から被告らに対して、まったく反応がなく、被調査人の説得に応じて和解に応じた原告らは、引き続き、13区のなかで村八分扱いとされ、平等な生活権を侵害されたままとなっており、結果的に、被調査人の言葉を信じて和解を決意した被告ら訴訟依頼人との信頼関係をないがしろにする形になっている。
10 被調査人は、登録番号12845で群馬弁護士会に所属し、高崎市に法律事務所を構えている。
11 弁護士法第三条は弁護士の職務として、「弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする」と定めており、同法第一条では、弁護士の使命として、第1項「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」、第2項「弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」と定めており、今回の被調査人の和解に至る行為は、弁護士法第一条に定める誠実に職務を行う義務に違反している。
12 よって、被調査人廣田繁雄を、弁護士法第56条の、懲戒処分に該当する行為であるとし、懲戒処分を請求します。
証拠書類
①平成22年5月25日付、和解調書             写し 1通
②平成22年5月25日付、桐生タイムス夕刊切抜き      写し 1通
③平成24年3月10日付、訴訟依頼人から廣田弁護士宛依頼状 写し 1通

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【平成24年9月11日付群馬弁護士会からの調査開始通知書】
                    平成24年9月11日
懲戒請求者 小 川   賢 殿
                    群馬弁護士会
                     会 長 石 原 栄 一
      調 査 開 始 通 知 書
 貴殿からの平成24年9月10日付け受理の下記の懲戒請求について,弁護士法第58条第2項の規定により,本会は群馬弁護士会綱紀委員会に事実の調書を求めましたので、通知します。
          記
1 事案の表示  群馬弁護士会 平成24年(綱)第10号
2 懲戒請求者  小 川   賢
3 対象弁護士  廣 田 繁 雄
4 調査開始目  平成24年9月11日
連絡事項
 1 提出された書類は原則として返還いたしませんので,ご了承ください。
 2 群馬弁護士会綱紀委員会において選任された弁護士3名が調査を進めます。
   なお,選任された委員において,請求者からの事情をうかがうこともありますが,その期日は通常2ケ月程度先になっております。期日が決まり次第ご連絡いたします。

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【平成24年10月12日付群馬弁護士会経由送付された対象弁護士弁明書】
                         平成24年10月12日
 懲戒請求者 小 川   賢 殿
                          群馬弁護士会事務局
 平成24年(綱)第10号事案に関し,対象弁護士から弁明書が提出されました。
別添のとおり写しをお送りします。

【廣田弁護士からの弁明書】
平成24年(綱)第10号
 懲戒請求人 小  川      賢
 対象弁護士 廣  田  繁  雄
                    平成24年10月10日
  綱 紀 委 員 会
   委員長 金 井 厚 二 殿
         高崎市東町172番地の16 高崎合同法律事務所
              対象弁護士 廣  田  繁  雄
          弁  明  書
 頭書懲戒請求中立事件に対する対象弁護士の弁明は,下記第1,第2のとおりである。
第1 本懲戒請求書記載の各項に対する答弁
1 懲戒請求書1項記載の事実を認める。
  「香■■■」は「加■■■」氏の誤りである。被告KSは,当時,旧大間々町の町会議員(合併後はみどり市市会議員)であったが,本訴訟終了後に死亡している。また,被告HT氏は,訴訟進行の中で病に倒れ,その後も病弱の身を労っていると聞いている。被告MZ氏は,後述するように本訴訟終了後の事態を憂慮しつつも,業務繁多のため,事態の静観を余儀なくされていると思われる。
2 同2項記載の事実を認める。
 本和解成立に際し,対象弁護士は,被告らに対し,本和解の趣旨に則り,みどり市13区の区政民主化のための取り組みにつき,被告らの運動を支えた人たち又は後進の若者に譲り,自らは直接活勤しないことが今後の争いを回避するうえで適切である旨を説明した。
3 同3項本文記載の事実は知らない。①~③記載の点は概ね認めるが,やや不正確である。
(1)3項①について
 本和解の成立は,直接的には担当裁判官の原・被告らに対する和解勧奨に基づくものである。区長側(原告ら)から裁判所に対し「この裁判を和解に持ち込めないか」との申し入れがあったかどうかは知らない。
 対象弁護士(被告ら代理人)は,当時,被告らと共に,担当裁判官が和解を勧奨する中で,原告らも和解に応ずる気持ちかおる旨を聞いている。
 また,原告ら代理人からも,条件次第により和解に応ずる用意があることも聞いている。
 対象弁護士の被告らに対する説明は,こうした状況の中で行われたものであって,その要点は,原告らにおいても和解する意向があることにある。
 懲戒請求人による①の主張は,ややもすると「区長側より和解の要請があった。」との印象を拭えない内容であるが,決してそのような一方的なものではなかった。
(2)3項②について
 概ねそのとおりであるが,「悪いことをしたことは判っている…」は担当裁判官が「原告らの不適正会計」を自らも認識しているとする意味である。担当裁判官は,被告らに対し,原告らの不適正会計を攻撃して係争を続けるよりは,区政の民主的な発展を実現するために,より建設的であるように説得したのである。
(3)3項③について
 対象弁護士は,担当裁判官が原告らの不適正会計を認め,原告らにおいてもこれを認めている以上(和解条項前文「当事者双方は,…第13区の過去の会計において一部適切でない慣行及び会計処理があったことを共通の前提として,…」参照),原告らもそれなりの責任をとるべきであり,そのように期待する旨を被告らに説明した。原告らの「辞任」は,その責任の取り方の一つであり,区政の出直し的改革のために必要であることを期待して述べたものであって,辞任を確定的なものとして述べた訳ではない。
4 同4項記載の主張は争う。
 被告らが和解をした動機の中には,他の要因もある。この点,後述する。
5 同5項記載の事実を認める。
6 同6項記載の事実は概ね認める。但し,その真否は判らない。
 対象弁護士は,本和解成立の後,被告らの中で唯一関係が継続した被告MZ氏より,再々にわたり所論の事実を聞かされており,事態が和解の精神に沿った形で進展していないことを同氏共々憂慮してきた。こうした事態を招致した原因は様々であり,その主張は原・被告らの間で相反している。
 この点,後述する。
7 同7項記載の事実を概ね認める。
8 圓8項記載の事実を認める。
 但し,本和解成立の経緯等につき説明を求めてきたのは,被告MZだけであって,被告KS及び同HTからの直接の要請はない。被告KSは本和解成立当時入院中であり,その後間もなく死亡している。被告HTも本和解成立当時から病弱であり,本和解成立後,対象弁護士が立て替えた実費の精算事務以外で対象弁護士と接触したことは殆どない。平成24年3月10日付け作成の第3号証は,「大間々町大間々オンブズマン会 会長HT」名義で作成されているが,同人が対象弁護士に対し,上記要請を直接行ったことはなく,この件で話したこともない。全ては,被告MZを通じての要請であった。
9 同9項記載の事実中,被調査人(対象弁護士)から被告らに対して全く反応がないとの点を否認する。その余は争う。
 被告MZ氏は,対象弁護士に対し,本件和解成立後の前記状況を伝え,その都度,遺憾な前記状況を少しでも改善する新たな運動を被告ら以外の地元活動家又は地元「被害者」(以下「活動家かも」という)によって巻き起こす必要から,和解成立にいたる経過を対象弁護士自ら直接説明してくれるよう要請した。
 上記要請に対し,対象弁護士は,①説明会の日時・場所を設定してくれれば自ら出向いて説明する,②被告ら以外の活動家からが対象弁護士の事務所に来るのであれば,そこで説明してもよい,旨を回答している。そのことは被告MZ氏もよく承知しており,その旨を地元活動家たちに自己の名で伝えている。
 しかし,上記説明を行う機会は一度も実現しなかった。何故なら,被告MZ氏から上記説明会の日時・場所を定めたうえでの招請は一度もなく,被告MZ氏又は活動家だちからの来所に関する具体的な打診も遂になかったからである。その理由は不明であるが,恐らくはこうした活動を新たに立ち上げるパワーが地元になかったためであろうと推測される。
 以上のとおり,「被調査人から被告らに対して,全く反応がなく…」は事実に反する。上記①,②の回答に対し,反応がなかったのは,被告MZ氏及びその先にいる活動家たちの方である。この点,本懲戒請求は,本件訴訟当事者とは直接関係がない立場にある者によって申し立てられたとはいえ,著しく調査不十分である。
10 同10項記載の事実を認める。
11 同11項記載の主張を争う。

第2 対象弁護士の主張
1 本和解を成立させた要因
(1)本訴訟は,被告らが旧大間々町第13区の公民館建設に端を発した建築不正疑惑及びこれと関連する会計疑惑を追及する文言を頒布したことを名誉毀損として,原告らが,被告らに対し,謝罪広告と慰謝料支払を求めるものである。第1回期日・平成19年10月10日から約2半半を経た平成22年4月23日に本和解が成立した。
 本和解は,大間々町第13区の過去の会計に一部適切でない慣行及び会計処理があったことが原・被告らの共通の前提として成立している。つまり,原告らにおいては不適切な会計慣行及び会計処理を詰め,被告らにおいては原告らに対する名誉毀損につき陳謝することにより,双方が互譲した。そして,謝罪広告も慰謝料支払いも不問とされたのである。
 なお,対象弁護士は,被告らより,本訴係属中に生じた実費立替金約27万円の返還はうけたものの,本和解成立に関する報酬金は受領していない。何故なら,被告らが本訴提起を受けることになったのは第13区民主化のための闘争に原因があり,そこに私利私欲を追及する動機は存在しなかったと評価したからである。
(2)本和解に至る以前,本訴訟における勝敗の行方は,被告らの間で,極めて相対的であり,ある被告については,率直にいってその結果が極めて憂慮される状況もあった。とはいうものの,対象弁護士は,被告ら3名の代理人であり,被告ら3名にそのことを伝えつつ,全体として良い結果は何かを常に話し合ってきた。そこでは,次のことが要点とされてきた。
 ア 大間々町第13区民主化のために闘ってきた3人の同志の間で勝敗が分かれることの是非
 イ 本訴において不当提訴を理由とした反訴提起の困難性もしくは原告らに第13区への賠償を行わせる住民訴訟類似の訴訟を提起することの困難性
 ウ 単純な請求棄却判決(被告ら勝訴)を受けることが築13区民主化ヘの力となるか。
(3)被告らが本和解を受け入れたのは,上記アの危険を避けつつ,原告の不適正会計を認めさせることこそ,今後における第13区民主化のために重要な足がかりになると判断したためである。
 本和解で,被告らが謝罪広告と慰謝料支払いを免れ,原告に不適正会計を認めさせた意義は大きい。何故なら,原告らの名誉を毀損したことの容認は不適正会計と相打ちになる性格のものである外,何より,今後の区政の在り方に一石を投ずる重要な項目となり,今後の区政を改革するうえで大きな意義を持つからである。このため,被告ら及び対象弁護士は,本和解をもって勝利的和解であると考えていた。
 なお,和解成立段階において,原告らの「辞任」は不透明であり,「辞任」への予測が希望的な観測として存在したとしても,そのこと自体が和解の成否を決定づけた重大事とは思えない。
2 本和解後の状況と対処弁護士の責任
(1)本和解後,本和解の精神である第13区の民主的運営(和解条項第2項)は実現されないまま,本和解以前と同じ対立状態が続く遺憾な状況が出来している。その状況は,当職の任務終丁後のことであるため,その関わりはなく,詳らかには承知していない。
(2)ただ,和解終了後において,原告代理人が当職に宛てた下記アのファックス文書があり,これに対する下記イの当職の回答があるので,この同文書によって示された事実関係より状況を推測し,そこから対象弁護士の本件責任関係を検討する糸口とされたい。
 ア ファックス文書の要旨
 (ア)MZ様及びHT様は,本和解成立後も和解上を独自に解釈したビラを配布している。
 (イ)同行為は,和解条項2項の精神に反する。
 イ 当職の回答要旨
 (ア)HT・MZの同氏が作成した書面は,これまで被告らを支援した人たちへの報告文書であり,そこに添付されている書面を精査していただければ,原告らの名誉を毀損したものとは思えない。
 (イ)本和解後,本訴で証言した者への反発や遺恨が本和解後の混乱の原因となっていなければ幸いである。その他
(3)対象弁護士は,原・被告らの上記行為に直接関わってはいない。そのため,その事実関係の真否はよく分からず,回答文も被告らより聞知したした限りで取り纏めたものである(この点,ファックス文書についても同様であろう)。この場合,原・被告らの上記主張の当否は,相当の論議を呼ぶものと思われる。そのいずれであるにしても,対象弁護士が任務を終了した後のことであって,その当否の如何によって,対象弁護士の新たな責任が浮上する訳ではない。
3 本申立の要点
(1)本申立は,次の点に要点があると考える。
 ア 本和解成立に当たって,和解成立後の原告らにおける責任の取り方,とりわけ辞任の方向性を述べた対象弁護士の行為,そのことを被告らに告げて本和解を成立させた対象弁護士の行為が職務の誠実執行義務(弁護士後司法第1条2項)に違反するか否か。
 イ 本和解成立後,対象弁護士が本和解に至る経過について,被告らに対して,何らの応答も行わなかったか否か。
 ウ 被告らが第13区の中で村八分扱いとされた点等について,対象弁護士に責任があるか。
(2)上記要点に関する対象弁護士の意見は,次のとおりである。
 ア 上記アについては,既に述べたとおり本和解成立の際の見通しをのべたのであって,そのことにつき格別問題はないと考える。何故なら,今後,本和解の趣旨に従って,第13区の区政が民主的に運営されるうえでは,不適切な会計を承認した原告らは当然に一定の責任を果たすのが至当であるからである。
   ところがこの状況が確立される以前,原・被告らの関係は,上記ファックス文書及び上記回答文にみられるような対立を生じてしまっている。こうした予期しない経過について,対象弁護士が責任を負う理由はない。
 イ 上記イは,対象弁護士が被告らとの関係で何らの対応をとらなかったか否かであり,単純な事実問題である。
   この点も既に述べたとおり,対象弁護士が被告MZ氏に対し,①自ら現地に出向いて説明を行う意向があること,②同被告及びその背後にいる活動家たちの来所があれば説明すること,③被告MZ氏は活動家たちにその旨を自己ので伝えていること,④被告MZ氏及び活動家たちから対象弁護士に対し説明を求める為の具体的な取組がなかったこと,については,既に述べたとおりである。
   従って,対象弁護士が何らの対応を行わなかったとする主張は事実に反する。
 ウ 上記ウについて,原告らは,本和解以前より,被告らに配布物を渡さず,区費を受領しない等の村八分的な取り扱いを行っていた。こうした事態の解消こそ,正に望まれるところであり,本和解はこの道を拓く道標ともいうべきものであった。
   対象弁護士は,被告らに対し,本和解後は区政民主化の為の取組を被告らの運動を支援した者や新進の若者らに委ね,自らは表面に出ないように指導した。そして,被告KSと被告HTは病弱のため,被告MZは多忙のため,さしたる活動はしていないと思われる。
   しかし,被告MZ氏の報告によると,現実には,被告らの活動を支援した者等に対する原告らの差別行為が拡がっているとのことである。
   この点,対象弁護士は,本和解を成立させた者として,一半の責任を感じているが,このことが懲戒事由に該当するとは思えない。まして,本和解にいたる以前の行為が職務の誠実執行義務(弁護士法第1条2項)に違反するとも思えない。
4 結 論
 以上により,本件懲戒申立は理由がない。
 なお,本件申立人は,本件訴訟には一切関わっておらず,対象弁護士とも直接の面識もない。このため,本申立は,被告らもしくはその背後にいる活動家たちの意向を反映したものと思われるが,対象弁護士としてはその実情を知りたいと願っている。
          疎  明  資  料
   追って,提出する。
                    以  上

**********
【平成24年10月30日付群馬弁護士会あて陳述書】
平成24年(綱)第10号
 懲戒請求人  小 川   賢
 対象弁護士  廣 田 繁 雄
〒371-0026 前橋市大手町3-6-6
群馬弁護士会
 綱 紀 委 員 会
  委員長 金 井 厚 二 殿
          陳  述  書
                    平成24年10月31日
            懲戒請求人 〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
                   小川 賢
                    電話027-382-0468  FAX 027-381-0364
 本事件に関する平成24年10月10日付の対象弁護士の弁明書について、懲戒請求人は、次のとおり陳述する。
第1 弁明書記載の各項について
1 指摘どおり、「香■」は変換ミスであり、「加■」が正しい。
2 対象弁護士は「本和解成立に際し,対象弁護士は,被告らに対し,本和解の趣旨に則り,みどり市13区の区政民主化のための取り組みにつき,被告らの運動を支えた人たち又は後進の若者に譲り,自らは直接活勤しないことが今後の争いを回避するうえで適切である旨を説明した」と弁明しているが、懲戒請求人が、被告・MZに事実関係を確認したところ、「廣田先生からは、そのような説明は言われていない」と述べている。
  本和解成立後の経緯について、被告・MZによれば、「みどり市13区が民主主義的な区になることを願う区民らが、KS市会議員の関係者約30名に、公民館建設をめぐる不透明な実態についての報告と、公民館建設に投じられた13区民から集めた浄財、大間々町(現・みどり市)の町民及び国家の国民らが額に汗して納税した血税を、区長らに返納してもらうことの活動をすべきだという話をした。だが、活動の責任者であったKS市議会議員もHT氏も二人とも病気療養中であったために、裁判報告と今後の事を書いた報告書を同市議の支援関係者が作成して、何とか話のできたKS市会議員に、その報告書を見せて読んであげたところ、KS市会議員がその内容に納得した。そのうえで、KS市会議員の支持者が区民らに配布したのであり、自分(被告・MZ)は、KS市会議員から『裁判はMZ様が一人で争ってきたようなものだ。裁判の途中、ガン治療中のHT君の代わりもして、ご苦労さん。もう商売の方に力を入れたらよい』と言われたので、自分(被告・MZ)は活動を中止していた。それでも、どうしてもこのままで止めないで、と大勢のみどり市市民や地元の新聞記者にも言われたが、商売第一と思って、KS市会議員の言葉に従っていたのであり、廣田先生から、活動を控えるように、と言われたことはない。」としており、対象弁護士の弁明と食い違っている。
3 対象弁護士が「同3項本文記載の事実は知らない」としている点について、被告・MZに確認したところ、「廣田先生が、今になってそのようなことをおっしゃるとは…」と驚きを隠すことができず、絶句している。
(1) 被告・MZいわく、「実際に廣田先生が発した言葉とは多少違っているところもあるかもしれないが、平成22年3月23日火曜日午後2時30分から行われた裁判で、野口忠彦裁判官が『区長らは会計に一部不適正の会計処理がある』と言われ、その後、同年4月頃だと記憶しているが、廣田先生が突然、自分(被告・MZ)が経営するMファッション工場にやってきて、『向こう(明らかに原告・区長ら、若しくは原告の訴訟代理人弁護士を指した言葉)から和解にできないか、と言われた』とおっしゃったので、自分(被告・MZ)は『未だに区長から領収書の提出はないが、金額6500万円の明細の中にある公民館建設のための補助金と、郵便簡易保険の13区民への還付金の背任横領は明白だし、裁判官も、区長が悪いことをしたことは分かっているから、と言ったでしょう?公金の補助金収支決算書の仕組みも理解できないようだったら、そんな裁判官などは、必要ありません。KS市会議員らに不利な判決が出されれば、東京高裁だってどこだって行きますよ』と言って、和解を推奨する廣田先生と激論になった。しかし、廣田先生は、『法律的な判決はどう出るかは。判断できない』とおっしゃった。何度も申し上げたいことは、廣田先生が『向こうから和解に出来ないか、と言われた』とおっしゃったことは間違いない。なぜなら、既に横領金額まで判明しているのに、被告・KS市会議員側から和解を求める必要はなかったから。」としている。従って、①について、対象弁護士の「ややもすると『区長側より和解の要請があった』との印象をぬぐえない内容であるが、決してそのような一方的なものではなかった」という主張は認められない。
(2) 対象弁護士は、「『悪いことをしたことは判っている…』は、裁判官が『原告らの不正会計』を自らも認識しているとする意味である」と主張するが、和解条項にあるとおり、原告らの不正会計が和解の前提となっており、裁判官の発した言葉は、裁判を通じて、原告らが不適正会計を行っていたことを原告ら自らが認識していることを示唆するものと解するのが妥当である。
 このことについて、被告・MZは「裁判官は、13区の将来を考量して、被告・KS市会議員らに、『前向きに、建設的に』と諭した立派な考えをもった方だと思う。だが、原告・区長らの背任横領は、見抜いていたようです。原告・区長らは、責任を認めたからこそ、裁判官から温情調書を出してもらえたのに、その裁判官さえも裏切ったことになる。」と述べている。
(3) 対象弁護士は、「原告らの『辞任』はその責任の取り方の一つであり、区政の出直し的改革のために必要であることを期待して述べたものであって、辞任を確定的なものとして述べたわけではない」と弁明しているが、本当にそのような気持ちであったなら、和解は推奨しないはずである。この点について、対象弁護士は、よほど心象が揺らいでいるらしく、第3章に後述する。
4 対象弁護士は、「同4項記載の主張は争う」と述べている。「不正が明らかになった以上、東京高裁でもどこでも行く」と強い決意を持っていた被告らに、和解を決心させたほどの説明と説得をしておきながら、「被告らが和解をした動機の中には、他の要因もある」などと、責任転嫁を図るのは断じて認められない。
6 対象弁護士は、「但し、その真否は判らない」としているが、対象弁護士も弁明している通り、被告・MZは、再三にわたり、和解後の13区における原告・区長らの和解条項に違背する様子について、報告をしてきた。弁護士であろう人物が、その真否が判らないことは有り得ない。
8 対象弁護士は、「但し、本和解成立の経緯等につき説明を求めてきたのは、被告MZだけであって、被告KS及び同HTからの直接の要請はない」と弁明するが、懲戒請求人が被告・MZに確認したところ「廣田先生に協力を要請した文書を作成した時点ではHTが会長をしており、文書の内容も把握しています。会長を離任した際の連絡も平成24年4月25日に廣田先生にしております。」と述べている。従って、被告・HTが会長として、対象弁護士に直訴した経緯は事実である。
9 対象弁護士は、「対象弁護士から被告らに対して全く反応がないとの点を否認する。その余は争う」と弁明するが、被告・MZに確認したところ「なぜ、区長に原告のKTが再任されるのか納得がいかないので、住民説明会を開いて、区長らによる不正会計の事実と和解の経過と結果に関する説明が必要だと考えて、事前に廣田先生から裁判の経緯と結果に関する説明を事前に聞くために、平成24年6月のある日の午後5時頃に、群馬弁護士会館で廣田先生にお会いした。そこで、『なぜ、(原告・KT区長は)退任しないのでしょうか?』と相談したら、廣田先生は大変驚かれた様子だった。自分(被告・MZ)が『なぜ、どうしてでしょうか?』と重ねて質問したら、廣田先生は『事務所に帰り、調べてみます』とおっしゃったので、その場で別れた。翌日、自分(被告・MZ)は、また時間の無駄だと思い、“自分で何とかしますから、一切忘れてください”と、高崎法律合同事務所にファクシミリを送った経緯がある。和解条項に関する13区住民への説明は、同士を募る為のものではなく、13区民にもみどり市民にも、区民の浄財や血税由来の公金が投入された公民館建設等で、13区に不正会計が存在していたという事実を知る権利があるからだ。本来13区住民は、区費用として金銭を徴収されるが、班長が『MZ宅からはKT区長から“集金しないように”と言われているので、領収書が発行されない』と言って、自分(被告・MZ)のところには集金にやって来ない。隣近所や、同班の人たちは皆親切なので、自分(被告・MZ)も我慢してきたが、娘夫婦が13区に移り住み、自分(被告・MZ)の孫が13区から小学校一年生に上がるので、村八分を解消して、いじめの対象にならないようにすることが、主な事情だった。廣田先生には、お世話になった方だからとこれまで我慢をしてきたが、弁明書には許せない偽りがある。廣田先生の高崎合同法律事務所には、孫が小学校一年生に上がるので、村八分を解消したいとの、私(被告・MZ)の意思を伝えた経緯がある。」と述べている。
第2 対象弁護士の主張に対する反論
1 対象弁護士は「つまり、原告らにおいては不適切な会計慣行及び会計処理を認め、被告らにおいては原告らに対する名誉毀損につき陳謝することにより、双方が互譲した。」と弁明する。だが被告らは、対象弁護士から和解を強く推奨されても、初めは和解などするつもりはなかった。なぜなら、不正経理が裁判の過程で確かめられて、原告らが勝訴できる見通しが立たなくなったことは、客観的に見て誰の目にも明らかであったからである。
 被告・MZに確認したところ、「自分たち(被告ら)は、廣田先生のほかにも、二人の弁護士に、20回以上相談してきたが、いずれも、真実であれば、名誉毀損など関係ない、と言われており、和解をする気持ちなど初めのうちは毛頭なかった」と述べている。それほどまで強い決意を持っていた被告らを、和解の気持ちに導いたのは対象弁護士の説明と説得であり、弁護士という社会的な信用度の高い地位にある職業に携わる人物の言葉であった。そうした“人格者”からの説明と説得があったからこそ、対象弁護士を訴訟代理人として依頼した被告らは、対象弁護士の言葉を信頼したのである。それが、このような弁明書を出してくるとは、和解を経て13区の民主化がこれで果たせるという期待を裏切られたショックと勝るとも劣らぬ精神的衝撃を被告らに与えたことは想像に難くない。
 なお、対象弁護士は(1)で「なお、対象弁護士は、被告らより、本訴係属中に生じた実費立替金約27万円の返還はうけたものの、本和解成立に関する報酬金は受領していない。何故なら、被告らが本訴提起を受けることになったのは第13区民主化のための闘争に原因があり、そこに私利私欲を追及する動機は存在しなかったと評価したからである」と弁明するが、被告・MZに確認したところ、「弁護士着手金として、金60万円をそれぞれ3人で分担しあって支払い、さらに裁判の過程で経費として9万円を支払い、裁判終了後、経費として更に27円を支払った。だから、廣田先生には合計で96万円を支払い済みです。」と述べている。(証拠書類⑥参照)
 日弁連によれば、完全敗訴などに終わった場合を除いて、通常、報酬金が発生するとしている。しかし、対象弁護士は、「本来報酬金の支払いをしていただくべきところ、同事件の性格に鑑み、これを免除とします。」として、自分から報酬金を辞退した。これは和解と言っても、実質的に被告らの全面敗訴という実態を感じていたからではないのか。
 対象弁護士は(2)において、「本和解に至る以前、本訴訟における勝敗の行方は、被告らの間で、極めて相対的であり、ある被告については、率直にいってその結果が極めて憂慮される状況もあった。」などと弁明し、あたかも、被告らの間でギクシャクした関係を、対象弁護士がリードして、常に良い結果が出るように努力したかのように述べている。
 しかし、前述のとおり、被告らは、他の弁護士にも相談しつつ、名誉毀損で訴えられても、真実が証明されれば、敗訴などするわけがなく、だからこそ、被告らは「東京高裁だってどこだって行って闘う」と決意していたのである。
 対象弁護士は、「被告らが本和解を受け入れたのは、13区民主化のために闘ってきた3人の同士の間で勝敗が分かれることの是非の危険を避けつつ、原告の不適正会計を認めさせることこそ、今後における第13区民主化のために必要な足がかりになると判断したためである。」と弁明する。だが、繰り返すとおり、不適正会計が事実であれば、名誉毀損は関係なくなるのである。従って、たとえ地裁で敗訴しても、上級審で闘えばよいと被告らは認識していたのである。その強い決意を諭して、和解に導いたのは、対象弁護士の社会的信頼度の高い弁護士というステータスが発した説明や説得の言葉の重みである。しかし、対象弁護士の弁明書では、そうした信頼度の高いステータスは感じられず、事実を糊塗しようとする姿勢が見え隠れしているのは極めて遺憾である。対象弁護士を信頼し、その言葉の重みを信じた被告らの無念さは想像するに余りある。
2 対象弁護士は(1)で、第13区の現状について。「本和解以前と同じ対立状態が続く遺憾な状況が出来している。その状況は、当職の任務終了後のことであるため、その関わりはなく、詳らかには承知していない」と弁明する。しかし、被告・MZを通じて、13区の実情は報告を十二分に受けて承知しているはずである。また、対象弁護士は訴訟代理人として訴訟に係わり、13区の民主化が侵害されている実態は十分に把握し認識してきたはずである。
 対象弁護士は(2)で、原告代理人の弁護士らから、被告らが和解成立後も和解条項に違反する行為をしている旨のファックスが到来したとして、それに対して、名誉毀損にあたらないので、和解条項に違反していない旨回答した、と弁明している。しかし、このファックスがいつ、どのような文章で、原告代理人のどの弁護士から発信されたのかは明らかにしていない。
 13区の不正会計が裁判の過程で明らかになったことから、名誉毀損は成立しないのであるから、本来、原告代理人がそのようなファックスを対象弁護士に送りつけること自体、首を傾げざるを得ない行為である。もし、原告らが、被告らのビラ配布行為を、和解条項の遵守不履行として、再度名誉毀損で訴えた場合は、再度、司法の場で判断すればよいことであるが、被告らがビラ配布行為をせざるをえなかったのは、むしろ、13区の不正会計を行ってきた当事者が和解条項を無視して、引き続き区長として留まっていることの理不尽な状況に原因があると言うべきである。
 対象弁護士は(3)で、「対象弁護士は、原・被告らの上記行為に直接かかわっていない。そのため、その事実関係の真否はよく分からず、回答文も被告らより聞知した限りで取りまとめたものである(この点、ファックス文書についても同様であろう)。」として、和解条項に至った裁判の後の、原告らが本来責を追うべき和解条項の履行の不作為を、原告らの訴訟代理人から送ってきたファックスとその対応を絡めて、縷々弁明する。だが、不正経理の存在が裁判の過程で確認されて和解など全く視野になかった被告らをして、和解を推奨し、その妥当性と意義を説明して、説得に努め、最終的に和解を受け入れさせたのは対象弁護士であった。当然、対象弁護士には、その後の和解条項の遵守を担保するための道義的責任が伴う。従って、対象弁護士のいう「そのいずれであるにしても、対象弁護士が任務を終了した後のことであって、その当否の如何によって、対象弁護士の新たな責任が浮上する訳ではない。」との弁明は認められない。
3 本件懲戒請求の申立の意義は、極めて重要である。今回、被告らは、13区の公民館建設に際して、もっとも基本的なこと、すなわち13区民の積立金のほか、自治体からの助成金や補助金を投入して建設した公民館の建設費用にかかる領収書の開示が行われないことに疑問をいだき、区長選出や、区の総会などで、民主的な手続が行われていない状況と併せて、閉鎖的な13区の運営を改善すべく活動を行っていたところ、突然、原告・区長らから、不適正会計に関する記事を記載したビラの内容は事実無根であり、ビラの配布により名誉を毀損されたとして、提訴されたものである。
 原告らは、訴訟代理人として、釘島伸博弁護士と宮嵜文恵弁護士を起用し、訴訟代理人らはさらに訴訟復代理人として、石渡啓介弁護士と小川晶弁護士を選任した。このように、群馬県内でも著名な弁護士ら4名も起用して、被告として急遽、応訴せざるを得ない場合に、被告らが特に信頼に足る弁護士を選択しようとしたのは当然のことである。
 一般市民が、訴訟の当事者になる場合、とりわけ被告としていわれなき事件に巻き込まれる場合、トラブルを解決してくれる相談者として、真っ先に脳裏に浮かぶのは弁護士の存在であるに違いない。弁護士は、法律の専門家として税理士や会計士の資格も持ち合わせていて、その専門知識である幅広い法律の知識を活かして、社会経済活動におけるさまざまな法的手続きやトラブルを解決する資格のあるステータスであるためだ。だから、当事者の代理人として委任契約等で報酬を得ることが許されているのである。
 従って、依頼する側の当事者と弁護士との信頼関係は、非常に重要である。依頼する側は、どのような情報も全て包み隠さず弁護士に相談しようとする。被告にされた側としては、原告からの攻撃に対して最大限の防御を弁護士に期待して依頼し、勝訴を勝ち取る為のあらゆる方策を弁護士に託すである。
 今回のように、13区の運営を改善したいとする住民らに対して、原告・区長らが不正会計の実態を覆い隠そうと、先手を打って被告らを損害賠償で提訴したこと自体、本来であれば、それを弁護する立場の訴訟代理人弁護士としては、提訴を踏みとどまらせるべきである。だが、弁護士というのは、当事者から依頼されれば、いくら理不尽な事件であっても、訴訟代理人を請負うものなのか。
 懲戒請求人は、これまでも何人もの弁護士事務所のドアを叩いたことがある。これまで弁護士に相談した事件はすべて行政訴訟がらみの事件であるが、勝ち目がないから止めたほうがいい、だの、自分は行政訴訟は専門ではないので引き受けられないだの、すんなり請け負ってくれる弁護士は極めて少なかった。
 また、やっと弁護を引き受けてくれた弁護士からも、裁判の経過について、余り詳しく説明してもらえないことが多かった。安中市土地開発公社を舞台にした巨額詐欺横領事件の損害賠償請求訴訟で、歴代の公社の理事監事や事務局長、実行犯などを相手取り、懲戒請求人が原告として提訴したことが14年前にあった。前橋地裁における3年間にわたる裁判が経過するうちに、被告らがたいそう反省していて再発防止に努めると約束しているからと言って、原告訴訟代理人の弁護士から和解を勧められたことがある。信頼する弁護士のアドバイスだからと、和解に応じたところ、実は1名だけ和解に最後まで応じない元市議(当時県議)がいて、結局、その人物が裁判所の裁判官に政治的圧力をかけ、「原告側から和解を持ち出したくらいだから、原告の主張には根拠がない」などとして、裁判所の事務官さえ知らないうちに、原告敗訴の判決がいつのまにか出されて、マスコミから「敗訴の感想は」と電話で聞かれて、初めて和解でなく、敗訴になったことを知らされたことがあった。原告の弁護士からも事前の連絡はなく、事情を聞くと原告の弁護士は「自分も前橋地裁から知らされていなかった」と弁明した。それ以降、懲戒請求人は、弁護士の言うことが信用できなくなったため、原則として本人訴訟をモットーとしている。
 今回の事件は、13区という自治会で起きた問題だが、この13区には約4500名もの住民がおり、積立金という浄財や、自治体からの助成金や補助金など、多額の資金が取り扱われ、一種の利権となっている。そのため、一部の有力者らが長年にわたりポストを独占し続けるうちに、民主的とは程遠い独裁的な運営をするようになってしまった。長年、特定の人物らが区長職を続けると、こうした独裁的な区の運営が行われ、不正会計の温床となりがちである。県内では、前橋市広瀬町三丁目の自治会でも同様な問題が起きている。
 今回は、不正会計が発覚したことから、和解条項の適用など、本来ありえないはずである。それを和解に導いたのは、何度も繰り返すが、弁護士というステータスであり、豊富な法律知識と、さまざまな訴訟代理事件を担当することによるトラブル解決のエキスパートという社会的なイメージであり、被告らは、対象弁護士の説明と説得の言葉を信じていたのであった。だから、対象弁護士の言葉が、被告らをして、訴訟継続の強い気持ちから和解の方向に気持ちを切り替えさせたのである。弁護士の言葉の重みは、一般市民にとって、極めて重大であり、それを無視したり軽視したりすることは、極めて困難だからである。
 ところが、実際には、原・被告の弁護士同士で、依頼人である当事者とは別の次元でシナリオが練られ、和解という決着が図られるのである。本来和解など予想もしていなかったのに、弁護士の言葉を信じたばかりに、原告・区長らが、依然として独裁的に振舞っている現状を目の当たりにすることになってしまった被告らにとって、弁護士へいだかざるを得なくなった不信感は、極めて深刻である。対象弁護士には、相当の処分を課さない限り、今後も同じような目に遭う依頼人が後を絶たないであろう。
第3 対象弁護士の不審な行動について
1 対象弁護士に対する被告らの信頼性をさらに損なう出来事が最近生じたので以下に報告する。
(1) 懲戒請求人が、対象弁護士から弁明書が出された旨、被告・MZに伝えた平成24年10月17日の翌日、10月18日木曜日の夜、午後7時ごろ、対象弁護士から被告・MZに電話があった。
(2) 被告・MZによれば、「廣田先生から、午後7時ごろ電話があり、『MSさんの気持ちはどうなんですか?どういうことなんですか?』と訊かれたが、『自分(被告・MZ)は別に真実を述べるだけなので、廣田先生の不利になるようなことは言いませんよ』と返事しました。そして、それから、廣田先生が『退任するとは言わなかったですよね?区長がまた悪いことをしたら、今度は、その時には退任するでしょう、と。そういうように言ったわけですよね?』とおっしゃるので、自分(被告・MZ)は『いや、廣田先生、そういうウソはつかないで下さいよ』と言いました。自分はさらに、『13区の区長はKS市会議員側との約束を果たさないので、市民オンブズマン群馬の小川会長には、自分(被告・MZ)としても、大いに協力したい』と申し伝えました。さらに、『公民館の建設の問題だって、あれだって、我々(被告ら)は納得していないんですよ』と廣田先生に申し上げて、続いて自分(被告・MZ)が『登記料の件でも…』と切り出したら、廣田先生は電話を切ってしまいました。」とのことである。
(3) さらに、被告・MZによれば「10月18日(木)夜7時ごろ、廣田先生からの電話の中で、『証明をしてくれ』とおっしゃられた。その際は、何のことなのかよく理解できなかったが、翌朝、ファックスをみたところ、2ページの文書が受信されていました」という。(証拠書類④参照)
(4) 被告・MZは、ファックスを読み、とりあえず対象弁護士の氏名の書かれた10月14日付になっているFAX送信表に記載の指示に則り、綱紀委員長あてに証明書と題して、書類を作成したが、ファックスで送られてきた案文の内容が正しくない部分が多々あるため、それらに対する認否のかたちで作成した。(証拠書類⑤参照)
(5) しかし、なぜ綱紀委員長あての証明書を、一旦、廣田弁護士あてに送るようにと、FAX送信表に指示されているのか不可思議に感じた被告・MZは、平成24年10月20日(土)午後2時から、会員として登録している市民団体で監査請求人が代表を務める市民オンブズマン群馬の事務局(前橋市下細井町)で開催された10月定例会で、本件の報告とともに、対応について相談をした。
(6) その際、10月例会に参加していた市民オンブズマン群馬のメンバーらが、FAX送信表と証明書案について、次の疑問を提起した。
ア) FAXの縁に記載のある送信元の情報として「FROM ワカマサマカワカミ 2005.6.22 4:21」とあり、送信元が不祥。仮に対象弁護士の事務所からだとしても、送信年月日が7年以上前の日付となっており、裁判資料の受領日時には特段の注意を払う法律事務所ではありえないため、全くの別人が、対象弁護士を偽って、何らかの意図を持って被告・MZに送信してきた可能性があること。
イ) 証明書の宛先が、「群弁護士会綱紀委員会」となっている。そのため、被告・MZは、そのまま宛先として書き写したが、仮に対象弁護士が作成したとしても、自ら所属する弁護士会の名称を間違うことはありえないため、全くの別人が、対象弁護士を装って、意図を持って被告・MZに、証明書を作成させてその内容をチェックしようとした可能性があること。
ウ) 証明書では「廣田」とあるのに、FAX送信表には「広田」と自称していること。
(7) そのため、懲戒請求人は、被告・MZの承諾を得て、証拠書類④⑤の提供を受けて、本陳述書で報告をするものである。
(8) このように、対象弁護士の不審な行動は、被告にとって、信頼感の喪失を一層助長しかねないものであり、この度の懲戒請求内容の審査において、勘案されるべきものと思料する。
証拠書類
④ 平成24年10月18日受信ファックス「10月14日付、送り状と証明書」 写し 1通
⑤ 平成24年10 月19日付、被告・MZから綱紀委員長あての証明書 写し 1通
⑥ 平成22年7月2日付、対象弁護士から被告らへのFAX「請求書」 写し 1通(3ページ)
**********

【市民オンブズマン群馬からの報告・この項つづく】

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1 コメント

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Unknown (村石太SEA&プラネット)
2013-05-12 16:36:36
県会議員で プログ検索中です。
裁判とか 訴訟は 難しいのかなぁ?
裁判研究会(名前検討中
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