ウズベクのむかしばなし/シェルゾッド・ザヒドフ・編訳 落合かこ ほか訳/新読書社/2000年
妻と息子の三人暮らしの薪売りの男が、市場でお金三枚を手にして かえるとちゅうのことです。
ひとりの老人が、「お金一枚をくれたら知恵のつく、いい話をしてやるよ」と言いましたので、貧乏な男は、その知恵のつく、いい話とやらを聞きたくなりました。その話にのった男がお金をあげると、「あいよ、それはな、”今日の怒りは明日までがまんせよ”だよと、老人がいったので、男はおこって老人に詰め寄りました。お金を返せと騒いでいると人々がかけよってきました。男が何かあったか訴えているうちに、老人は姿を消してしまいます。
男はせっかく苦労して稼いだお金が無駄になったと考えながら歩いていると、まったく知らない土地にやってきたことに、きがつきませんでした。その町は、空が低くて手を伸ばせばとどくほどで、どんな星でも手でとれ、ポケットにいれると、それはもう星ではなく、宝石になっていました。男はここが気に入って、故郷の土地も、妻や小さい息子も忘れてしまい、この町で暮らしだしました。
十五年すぎたころ、男は、妻や息子のことを思い出し、故郷目指して出かけました。男が帰ったのは、夜遅くでした。家のドアの隙間からのぞくと、妻が食卓に向かって、どこのだれか知らない男に夜食を食べさせているではありませんか。男がよくよく見ると、どもぎをぬかれるほど、びっくりさせられました。その男は、薪売りの男とうりふたつでした。旅をして腹をすかしていた男は、夜食を食べている男を殺そうと思いましたが、ここで知恵ものの老人の言葉を思い出しました。
”今日の怒りは明日までがまんせよ”。薪売りの男は、屋根にのぼって妻とその男の会話をききだしました。
その男は、じつは、じぶんの息子。
「話を買う」話は、日本にもありますが、格言?というのは三つ。ウズベキスタン版ではひとつといたってシンプルです。