どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

シラミの皮のスリッパ・・ロシア

2024年11月23日 | 昔話(ヨーロッパ)

    ねえねえ、きょうのおはなしは・・/大塚勇三:再話・訳/福音館書店/2024年

 

 王さまにひとりナスターシャというお姫さまがいました。ある日のこと、おつきの人がお姫さまの髪の毛をとかしていると、シラミが見つかりました。そのシラミをめヒツジのせなかにのせると、しらみはめヒツジのおおきさに、おヒツジのせなかにのせると、これはこれは、おヒツジぐらいの大きさになりました。王さまは、シラミの皮をなめさせ、その革で名スターシャのスリッパを作らせました。それからあらゆる国々につかいを出して、スリッパがなんの皮でできているか、それをあてたものに娘をよめにやろうと知らせました。

 だれもシラミの皮とこたえられませんでしたが、いいあてた者がいました。悪魔です。約束をやぶるわけにもいかないので、結婚の日取りをきめましたが、王さまは、娘をおすヤギのせなかにうまくかくして、にげさせようときめました。それから、おおきなテーブルをすえて、そのそばに、火かき棒をおくと、その棒に,花嫁のきものをかぶせておきました。

 さて、悪魔が行列をつくってやってくると、そこへヤギが1ぴきやってきました。行列の先頭が聞きました。

  ヤギどん ヤギどん
  かくれさしょって えさしょって
  ちょびひげ ゆらゆら させてるな
  ナスターシャひめさんは
  うちにいるかい?

 するとヤギが返事します。

  いるとも いるとも うちにいる
  みっつのかまどで やいて
  ハンカチ 三枚 ぬいながら
  いまか いまかと おまちかね

 行列の二台目、悪魔もおなじことをきくと、ヤギのこたえは、同じ返事でした。行列がすっかりとおりすぎると、ヤギは、いっさんに にげていきました。

 悪魔が宮殿につくと、ナスターシャはテーブルのむこうにすわっているようでしたが、なんの返事もありません。悪魔が、よこっつらをはりとばすと、ガラ ガラ ガシャーン! 火かき棒がたおれました。悪魔がわめきながら、花嫁をさがしましたが、宮殿のどこにもいません。「さては、あのヤギのせなかにかくれてたな」と、思いつきヤギを おっかけました。

 一方、お姫さまはヤギにのってにげながら聞きました。「ヤギさん ヤギさん しめった地面に、耳をつけて、聞いておくれ。悪魔がおっかけてこないかしら?」
 「きますよ、きますよ」とヤギがこたえると、お姫さまは、櫛をひとつ、うしろになげていいました。「櫛よ、通りぬけられない森になれ」。悪魔のおともたちはもっていた斧やのこぎりで道をつけ、またヤギをおいかけました。

 おいつかれそうになったお姫さまは、火うち石をうしろになげていいました。「火うち石よ、乗り越えられないような山になれ」。

 また、おいつかれそうになったお姫さまは、こんどは、火をつける道具をうしろになげていいました。「火うち道具よ、おそろしい火の燃える流れになれ、悪魔がぜったいに渡れない流れになれ!」。

 どうしても、火の流れを渡れない悪魔が、「ナスターシャ、ハンカチをこっちになげてよこして、わたしに流れをわたらしておくれ、おまえを、およめにするのはあきらめたよ」というと、ナスターシャはハンカチを向こうまで投げて、悪魔を流れの真ん中まで、ひっぱりよせると、そこで手をはなしました。すると悪魔は、流れに落っこちて死んでしまいました。

 

 いまシラミはほとんどみられませんから、子どものイメージはわかないかもしれません。シラミが大きくなるというびっくりするはじまりから、日本の「三枚のお札」風に展開します。歌も楽しそうです。


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