ウズベクのむかしばなし/シェルゾッド・ザヒドフ・編訳 落合かこ ほか訳/新読書社/2000年
おじいさんの漁師が、海に網をうちひきあげてみると、金の魚がかかっていました。領主さまへ知らせたら、ほうびをくれるかもしれないと、おじいさんはでかけました。一方、若い息子は金の魚が網にかかって苦しそうなので、かわいそうになり魚を海にそっと逃がしてやりました。
領主が兵隊をつれてやってきましたが、金の魚がいないことがわかると、おこりだし、息子の手足を縛って海に流してしまいました。哀れな父親は、息子が、目の前で波にさらわれているのをみて、いじわるな領主をうらんで、うらんで、うらみぬきました。
若い漁師をのせた小舟は、とある島にながれつきました。ほとんどどうじに、若い漁師にそっくりな若者がでてきました。まるで双子のようでした。このふたりの友だちが島を歩いていると、家畜の番をしている老人にであいました。老人は、「この島をでて、二、三日舟でいくと、ある国がある。そこの王さまの一人娘が、生まれてから一度もしゃべらない。王さまはおふれをだし、お姫さまをなおしたものには、たくさんのほうびと、よめにとらせる。だが、もしなおでなかったら、そのものの首を切る。そういうわけで、失敗した若者の首が、もうゴロゴロと、庭にころがっているしまつだ」と話しました。
ふたりは、ともかくしあわせをもとめてやってみようと、まず若者が、運試しをし、うまくいったら、褒美は、山分けにすると宮殿にでかけました。
ゆうかんな若者は、お姫さまのところへのりこむと、ふかくおじぎをして言いました。「三人の兄弟が薪をきりに森へ出かけ、一番上の兄は、木を削り、まるで生きているような きれいな鳥をつくりました。二番目の兄は、森中を駆け回って、非常に珍しい鳥の羽をあつめて、それを木ぼりの鳥にかざりつけました。末っ子はきせきの泉を見つけてきて、きれいにすんだ水にその鳥をひたしてみました。すると鳥は、ほうんとうに命をもって、ひとこえ高く叫ぶと、とんでいってしまいました。とんでいった鳥が、だれのものか喧嘩になり、おわりそうにありません。そこで、こうしてお姫さまのところへまいり、どうしたらよいかうかがいにきたのです。」
お姫さまは、ほほえみをうかべ若者を見つめましたが、指で自分の舌をさし、首を横にふり、ひとことも発しませんでした。若者は、かっときていいました。「おまえさんのために、死ぬなんて、こうなれやぶれかぶれだ。いっしょに死んでもらうぞ」。若者が剣を大上段にかぶると、びっくりしたお姫さまは、地面にころげおち、助けてと、叫ぼうとしました。すると、そのしゅんかん、しゅるしゅると、お姫さまの口から、真っ白いヘビがでてきたではありませんか。若者がすかさず、長くつのかかとでヘビの頭をふみつぶしてしまいました。お姫さまは、目に涙をうかべて、若者を見つめ、うでわをとって若者にわたし、おれいをいいました。「ありがとう、とてもうれしいわ。お城へいって、父からほうびをもらってください」
この若者は、金の魚でした。逃がしてくれたお礼に、舟が沈まないよう仲間の魚に声をかけ、自分は人間に変身したのでした。若者は、若い漁師がじぶんのかわりに褒美をもらうようはなし、自分は海へとびこんでいってしまいました。
やがて、若い漁師が領主のところへいくと、さいしょの約束とはちがって、門は閉じてなかへはいれません。それでも、お姫さものうったえで、ふたりは結婚しましたが、領主はどうやっても自分の婿がすきになれず、どうやっておむこさんをおっぱろうかと、かんがえていました。若い漁師は、自由に息もできない城をでて、ふるさとへかえりたいと、お姫さまに相談すると、お姫さまは、あっさりと、同意します。しかし海をわたる方法がみつかりません。そこで若い漁師のむすこは、海辺にいって金の魚と相談すると、金の魚は、夜にむかえをよこすから、その魚の口にはいりこんで、家にかえるよういいました。むかえの魚というのはクジラでした。クジラは口をしめて海の中へもぐり、朝になると生まれ故郷についていました。
小さな家のそばには、父の漁師がすわっており、三人はなかよく暮らすことになりました。
ウズベキスタンは人口三千万、六つの独立したトルコ系の国家のひとつ。ウズベク人(総人口の八割強)ほか、タジク人、ロシア人、カザフ人、タタール人などの少数民族から構成されているという。
主にウズベク語が話されているが、共通語としてロシア語使われている。ウズベク人の多くはイスラム教スンナ派というが、戒律などは緩いようである。