✧ならわしとひらめき
耳がもたらすものは、
幾重もの媒介を経由している。
だが愛する者の目は、
愛されし者とじかに繋がっている。
耳から得られるのは、
「至福」についての語らいである。
だが愛する者の目は、
至福それ自体を得ている。
耳から得るものは既に変質している。
だが目は、根源の変容そのものを得ている。
もしもあなたが火について
知識を得たと確信するなら、
けれど言葉によって語られた「火」がその知識の全てなら、
あなたは未だ火を知らず、
未だ料理されてもいないのだ。
火そのものに触れよ、自らを料理せよ、
他人から聞かされた知識を根拠に知ったと思うな、
疑うこともせずに、確信の裡に留まるな。
直観の確信は、実際に焼かれること無しに得られはしない。
火の裡に座せ、もしもあなたが真にこの確信を得ようというなら。
耳も鍛えれば目と同じ働きをするようになろう、
でなければ、耳は言葉を捉えられないだろう、
言葉は耳と耳の間にこぼれ落ちるだろう、
心に届くこともできないだろう。
1. 『精神的マスナヴィー』2-85