朝井リョウさんの「世界地図の下書き」を読みました。児童養護施設に入っている子供たちの物語です。主人公の大輔は、雨の日の交通事故で一瞬にして両親を失い、伯母に引き取られたものの、どうしてもなじむことができず、最初は優しかった伯父と伯母が大輔に辛くあたるようになる。特に血のつながらない伯父は、大輔に暴力をふるうようになり、大輔は児童養護施設に送られたのだった。児童養護施設では、班が構成されていて、大輔は一班に入れられた。班のメンバーは、小学3年生の大輔、同学年の淳也、淳也の妹の1年生の麻莉、小学2年生の美保子、中学3年生の佐緒里だった。佐緒里は、班の中のお姉さん的存在で、年下の麻莉、大輔、淳也、美保子をいつもそれとなくフォローし、気を配ってくれたが、実は、大輔が施設に来る4日前に入ったばかりだった。佐緒里は、両親が離婚し、この施設に入ってきた。病弱な弟は遠くの病院に入院していた。その入院費を親戚が負担してくれていた。淳也と麻莉の兄妹は、どこか遠いところから、この児童施設に入所したようだ。美保子は実母に虐待されて、暮らせなくなり、この児童施設に入ったといういきさつ。それぞれに悲しい事情を抱えていた。施設での暮らし、親や親戚との関係、学校でのいじめなどを描きながら、子供たちの3年間の成長を描いた物語でした。親から虐待されたり、育児放棄されていたりする児童は、世の中に多いのも事実。よるべない子供たちの幸せを心から願う。本作は、2013年坪田譲治文学賞を受賞。
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